表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第1章:ヒッキ-で生き残る編
2/151

ヒッキ-は気付く

 あの日から既に1週間。

 あれだけ騒がしかった外も、今は静かになった。

 この間、俺は自宅マンションから一度も出ていない。

 会社への連絡は結局出来ていないんだけども。


 と言うのも当日に電気、ガス、水道等のライフラインが止まったのだ。

 多分火災の影響だと思うけど。

 ネット回線だけは何とか繋がっているが、通常通りとは言い難い状況で兎に角重い。

 現代人はネットが無いと生きられないんだよな。


 あの当日は休むつもりでいたから、会社に連絡が繋がらない事に安堵もした。

 自慢じゃ無いけど俺はヘタレだからな。

 安全な場所から動く事の方が怖かったんだ。


 だから突然電気が止まった時は、思わず叫んでしまったよ。

 だって外はまだ騒がしいままなのに、夜にいきなりだからさ。

 10分程震えた後、冷静になって常備品を漁ったんだ。


 ソーラー充電式のランプもしっかり買ってあったわ。

 昔と違ってLEDだから充分明るい。


 取り合えず水は、2リットルのボトル6本入りのケースで10個。

 乾パン、乾物、インスタントラーメン、缶詰、米、カセットコンロ、ボンベもある。

 野菜の代わりにサプリメント。


 節約すればひと月は耐えれるはず。

 だから引き籠ってるんだけど、6年勤めた会社は首かも知れない。

 結構苦労して入社したんだけどなぁなんて思う。


 順風満帆とは言わないが、普通に進学して新卒採用して貰えた。

 高給では無かったけど、仕事は苦痛に感じなかったんだ。

 うちの会社は妻帯者に優しく、独身に厳しい会社。


 まぁ特に早く帰る予定も無いから、残業は自ら進んで請け負った。

 休みの日は趣味で近所に山登り&お1人様キャンプ。カッコ良く言うとソロキャンプだっけ?

 一人用テントも寝袋も愛用なんだぞ。ちょっと目から汗が出て来たけども。

 都会の喧騒を忘れて、自分だけの時間を楽しんでるって言いたい。

 あ、それに普通免許は持ってるし。

 自家用車は維持費大変だから無理だけど、便利なレンタカーも使いようでしょ。

 

 ほらレンタカーって色々な車種に乗れるからさ。あはは。

 意味なくワゴン車借りた事もあった......あぁ俺って家族居ないんでね。

 元々母子家庭だったんだけど、就職1年目の年に病気で亡くなったんだ。


 俺の為に一生懸命働いてくれたけど、卒業が決まった年に体調を崩してそのまま。

 父親は知らない。物心つく頃に居ない事に慣れてたし、母親が触れないから話題にしなかったんだ。


 女手一つ俺を大学まで行かせてくれた母親に、親孝行も出来なかった事が今でもショックだよ。

 山登りも母親が好きだったんだよ。よく小さい頃に連れて行って貰ったっけな。

 だから一緒に行く事を目標にして、大学時代に必死にバイトして免許取った。


 病院にお見舞いに行った時に『楽しみにしてる』って笑顔で言ってたなぁ。

 そんな大切な母親が亡くなってから、俺の楽しい目標は消えた。

 今の俺の姿を見たら怒られるかも知れない。


「ああそうか。生きる目標が無いのか俺」


 駄目だ駄目だ。こんなんじゃ母親に顔向け出来ない。

 取り合えずこのマンションの周辺だけでも確認しよう!

 動け俺。どうせこのままじゃ食料も尽きる。




 そして重い重い腰を上げ、俺は1週間ぶりに外に出る事を決心した。







◇◇◇





 

 動きやすい服装に足元はスニーカー。

 あのネットの情報を鵜呑みにする訳では無いが、両腕に薄い雑誌を入れ長袖厚手の服を着る。

 もう夏なのでハッキリ言って暑いが我慢だ。


 キャップを深々被りマスク。耳は髪で隠れてる。流石に耳当ては持っていない。

 ちょっと変質者かも知れないけど、()()()()()する危険よりはマシだろう。

 出来るだけ音を立てない様に玄関ドアを開け、頭だけ出して廊下を確認する。


 うん。物音がしないし人の気配もない。

 昼間は休日以外居ないけど、平日の昼間はこんなにも静かなのだろうか?

 そんな事を思いながら鍵を閉めて階段へ向かう。


 俺の部屋は7階建てのマンションの2階なんだ。

 少し古いマンションだから、エレべーターは止まらない。

 だから少しだけ家賃もお得。

 まぁ電気が止まってるから使えないけど。


 ソロリソロリと階段を降りる。大丈夫。上からも降りてくる様子は無い。

 下りた1階のエントランスにも人影はないようだ。


「ほっ。この場合オートロックも使えないよな」


 案の定、手動で鍵を開けて外に出る。

 因みに玄関ドアの鍵と共通で使えるんだ。だからマンション入り口もロック出来る。

 今は怖いから開けたままにするけど!

 

 空はどんよりとした曇り空。

 もう梅雨は終わったはずなんだけどなぁ。

 しかし何だろうこの匂い。


 焦げ臭い匂いだけじゃなく、不快になる異臭を感じる。

 下水管でも破裂したんだろうか? マスクしていても感じる匂いは不快極まりない。

 そんな事を考えながら観察。

 住んでいるマンションは、大通りから少し入った場所。

 だからマンション前は狭い道路なんだが、普段と違い駐車された車がチラホラ見える。

 それも普通じゃない。道の真ん中に置き去りじゃないか。


 何か嫌な感じだ。

 不意にそう思ったんだけど、今の所危険が迫っている訳では無い。


ガタッ!


 ⁉ 駐車された車の近くでそんな音がしただけで、身体に震えが走った。


「フギャー」

「何だよ猫か。脅かさないでくれよ」


 ちょっと自分が恥ずかしくなった。

 はぁ。安堵するが、この時俺の目は何かの影をとらえる。

 ん? あれは人なのか?


 5メートル程向こうにある電柱の辺り。

 フラフラ横に揺れている様に見える。

 どうする? 近づいて確認するか?

 いやいや駄目でしょ。


 こう言う場面が一番危ないんだよ。ドラマでよくあるやつじゃん!

 脳内で突っ込みをいれつつ、ヘタレは考える。

 危険があるなら近づくな。でも気になると言うジレンマ。


 ん? あの位置ならワンチャン、マンションの廊下から見えるんじゃね?

 うん。その方が安心安全。今の俺冴えてるかも知れない。


 そうと決まれば即撤退。

 スタコラサッサとマンションへ戻る俺。

 ここまで家を出て10分しか経って居ない。


 さて戻って来ました2階の廊下。

 うんうん。右よし左よし。

 ゆっくり音を立てない様に廊下を進む。

 ちゃんと後方確認もします。


 うちのマンション階段1つしかないからさ。

 因みに俺は角部屋。向かう方向は逆方向。

 つまり後ろから来たら詰みます。怖い。


 恐る恐る進みもう突き当りじゃん!

 でもギリギリ見える位置にソレが居た。


「うわぁ。あれってお隣さん......」


 俺が見たのは、あの日声を掛けてくれた女性だった―――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ