決断の時。
マンションでのヒッキ-生活も2か月近くなった。
俺達二人は協力して上階の探索も行い、生活に必要な物資を何とか確保してきた。
だけどさ。もうこれ以上食料を確保する事が難しいんだ。
一番の問題はガスボンベ。もう残り僅かしかないなんだよ。
単身者用のマンションだから、カセットコンロ使う人が少なかったんだよなぁ。
使えなくなるとさ。お米も食べれないし、他の火を入れたい食料も消費出来ない。
それと一番大切な水も残り少ない。実はトイレも流せないんだよ。
だから家のトイレは使用せず、他の部屋で済ましてる。
じゃないと匂いがね。あはは。
これまでが上手く行きすぎたんだよ。
食料を確保出来たことも奇跡的だし。
成人した男2名が長期間、2か月近く生きられたんだぜ?
まぁここ数日は、日に1食しか食べれて無いけども。
「稲垣。もういい加減、覚悟するべきだな」
「ああ。ここまで何とか過ごせたが、もう流石に限界だ」
俺と稲垣は何度も同じような会話をして来た。
ただ手元に食料が残っていたので、まだ先の話をしているつもりだったんだ。
でも日々チェックしていたSMSやネット記事で、生存者全体の環境が悪化している事は知っていた。
なのに何時まで現実逃避してんだよって話だ。
世間がどんな状態かというと、基地を除く大きな避難所では、既に食料不足に陥っている。
それなりに物資はあったはずだが、無事な避難所にはどんどん人が増えて行くんだ。
これは気軽に情報が書き込めるSNS等の弊害だと思う。だって私は無事ですって書き込むんだもん。
ご丁寧に自分のいる場所まで晒して。それを見た近くの人はどう思う?
そりゃあ安全な場所があるなら行きたくなるでしょ。
俺だってこんな性格じゃなきゃ、向かってたかもしれないよ。
だからあっという間にキャパオーバー。賄える物資も足りなくなって当然?
違うよな?
普通なら何人で何日過ごせるか計算するだろう。
それでも受け入れたんなら、慈愛の精神がある人の集まりだと思うわ。
全く賛同できない考え方だけどね。
基地なら自衛隊隊員が抑止力になる。
そう言う人が居なかったんだろうかね?
例えば警官とか。普通は地区会長とかなのかな? 分からん。
まぁそんな状態になっちゃうと起きるのが、避難民同士の諍いとか物資の奪い合い。
それを押さえる抑止力が無かったんだろうね。
悲鳴に近い書き込みも沢山読んだよ。
そうならない為にどうするか?
避難所毎に警官が数人必要かも知れないよな。
反発は起こるだろうけど、拳銃持ってたら抑止力あるだろ。
独裁者みたいな警官だったら最悪だけどもさ。 (ドラマでありがち)
ただ外国と違って、すぐ撃ったりはしないはず......たぶん。
殺気立つ大勢の人間が襲ってきたりしたら分からないけどな。
兎に角さ。情報を踏まえた上で、正解を選択をしなきゃいけないんだ俺達。
躊躇している余裕は無いし。
「という事で稲垣君。何かプランあります?」
「......何がと言う事か全くわからんが、此処から脱出するって話だよな?」
「うん。次の拠点を探すのか? 或いは此処から物資の調達に行くか? とか色々です」
「うーん。俺は馬鹿だけどさ。一旦出ちまうと戻るの難しくね? それ以前に裏手のゾンビをどうするかが大問題だろう」
「ああうん。あのずっと見つめて来るお隣さん達ね。確かにどうにか逃げたとしても、追ってきそうだしねぇ。スト-カ-コワイ」
「確かに怖いけどな。この周囲の地図見ながら考えるしか無いと思うぜ」
◇◇◇
そんな訳で先ずは地図アプリで周辺を検索。
2人で手分けして紙に書き写すしながら、拠点になりそうな場所にはマークを入れておく。
2時間ほどかけて何とかそれなりの地図を描き終え、ここから二人で意見を交わしていく。
「つ、疲れた。地図って描くの難しいな」
「とうまは几帳面だしな。わかりゃ良いんだよ。こうちょいちょいってさ。それで候補は何処だ?」
「選びあぐねてる。出来れば駅方面は避けたいし。ゾンビも多そうだろ?」
「確かに人が集まるなら駅前か。大群に囲まれたら終わりだしな。じゃあこっちの大型量販店に向かうか?」
「いやそこは行かない方が良いだろ。ゾンビ物で一番襲撃される場所だし。俺みたいなZ好きが、確保してそうな予感がするんだ」
「......とうまの知識偏ってねぇか? なら食料を何処で探すつもりなんだ?」
「それは稲垣が此処まで来た方法を選ぼうと思う。根拠は俺の考えを聞いてくれ」
俺はそう言い、稲垣に対して説明する。
マンションの周辺は、戸建て住宅が多い。この街も元々ニュ-タウンだしな。
結構密集しているから、移動が比較的容易だろう。
実際に稲垣は、空き家を転々と移動してきたわけだし。
大声出して走って来た時は、大迷惑だったけどもな。
ネックになるのは、マンションに比べて防犯的な部分が弱い事。
敵になるのがゾンビだけとは思えないしな。
だから注意は必要なんだ。
利点としては、空き家が多いと考えられる事。
これはここの地域性に関係する。
稲垣の住んでいた隣町もそうだけど、この町も古くからの住人が多い。
ご近所付き合いも大変だと聞いた事があるんだよ。
だから皆一緒に避難しているはずなんだ。団体行動乙。
で移動の際に、1人が持っていける物資は限られているだろ?
なら家に色々と残っている可能性がかなり高い。
だから量販店、ス-パ-、コンビニよりも確実性があると思う。
まだ今の段階ではまる
店の在庫が無くなったら、探しに来るかも知れないが。
勿論、俺の考えが全て正しいとは思って無いけど。
ついでの理由として、戸建て住宅なら武器になりそうな物もあるんじゃね?
バールとか! 稲垣の家には合ったらしいしな。
「とこんな風に考えてるんだが、稲垣はどう思う? 無謀? おかしい?」
「いや。確かにそうかも知れない。俺の住んでいた地区も、町内会で一緒に避難所行ったし。考え方には概ね賛同する。ただ問題は移動なんだよなぁ。どう囲まれない様にするか」
「分かった。なら此処から出る時の対処を含めどうするか? 作戦を考えようか」
「だな。2人で考えれば良い案でるでしょ」
それから納得いくまで話合い、脱出作戦は考えました。
持って行く物もあれもこれもと迷ったけど、何とか体制は整ったよ。
メチャクチャ怖いけど、いよいよ明日、俺達は危険な外へ出るんだ―――
第1章はここまでです。
次話から
第2章:サバイバル生活編開始します。




