エピローグ 〝あいしてる〟の彼方
それは近くて遠い未来の話。
森の奥深くにある塔の前の広場で。
ふたりの子どもたちが遊んでいるのをあたしは見つめていた。
「そろそろご飯にしましょうか」
そんな一言に、ふたりは嬉しそうに笑顔を浮かべて。
あたしのもとに小さな歩幅で駆け寄ってくる。
『あたし、おかあさんのごはん、すきー』
『ぼくのほうがすきだしっ!』
そんなことを言い合うふたりのことを、あたしはきゅうと抱きしめる。
男の子はあたしと同じ黒髪で、女の子の方は銀色の髪の毛だけど――光の当たり加減によっては他の色にも見える。
『ねえねえ』
『おとうさんはー?』
ふたりが指を咥えてそんなことを聞いてきた。
「そうね、そろそろ帰ってくる頃――あ、噂をすれば、ほら」
その人はやってきた。
あたしたちがいるこの場所に。
白馬とは程遠い生き物に乗って。
『――、――――、――』
彼は小さくなにかをあたしたちに向けて言った。
その姿は太陽を背にして逆光になっている。
表情は見えないけれど――その顔は、どんな時でも王子様みたいに整っているのだ。
『おとうさーん!』
『おかえりー!』
子どもたちがその人に向かって駆けて行った。
彼はふたりをあたしがしたみたいに抱きしめ、それぞれで色違いの頭を撫でた。
『――――、――、――』
そのあとは視線をあたしに向けて。
未だ初々しく、エデンの実のように頬を真っ赤に染めて。
下草を踏みしめながらゆっくりと歩いてくると。
あたしのことを両腕でしっかり抱き留めてくれるのだった。
あたしはそのぬくもりを。
ニセモノなんかじゃない〝ホンモノ〟のぬくもりを――心から感じて。
いつもの言葉を、伝える。
「――おかえりなさい、あなたっ」
こうして森の奥深くの塔での生活は。
そこで紡がれる、お姫様と王子様のおとぎ話は。
末永く幸せに、続いていった――
≪了≫
これにて完結です……!
ここまでお読みいただいて本当に本当にありがとうございました!
カグヤたちの未来が永遠に幸せであらんことを作者としても祈り続けています。
よろしければページ下部↓より、ブックマークや★評価などもぜひ。
(今後の執筆の励みにさせていただきます――)




