3-62 星を落とそう!(地球帰還大作戦⑪)
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」
王子たちのサポートと叫び声に後押しされながら。
「いくわよーーーーーーーーーーー!」
あたしは数多の攻撃によってぼろぼろになった月の裏側の地面。
そのすり鉢状にめくり上がった大地に向かって跳び込んでいった。
「いっけえええええ、カグヤーーーーーーーー!」
空中で思い切りメモリー君を振りかぶる。その動作はありえないくらいスムーズにいく。
それはあたしたちが〝残念王子ーズ〟を叩き慣れてるということもあるけれど……。
どうやら背後の王子たちが魔法やらなにやらであたしの力を強化してくれているらしいのだ。
身体が軽い。巨大なハンマーだけじゃなくって自分の身体の重さも感じない。力が漲ってくるのを感じる。
だけどあたしにとっては、そういう身体的な強化だけじゃなくて。
――背中に頼れる王子様たちがついてくれている。
そんなぬくもりを感じられるだけで、とても心強かった。
「色々あったけど……ありがとう、月!」
宙に舞ったあたしは、そんなことを言って。
「また……地球で逢いましょーーーーーーーーーーー!」
思いっきり振りかぶったメモリー君を。
思いきっり振り絞った力で。
思いっきり振り抜く勢いで。
月の裏側に向かって叩きつけた。
「――≪ 月に愛された姫の一撃 ≫!!!!!」
それはもう。
思いっきりの物理攻撃だった。
「「――ッ!」」
そんなどこまでもお姫様らしい一撃は。
「「うわああああああっ!」」
ずどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん、と。
最後のとどめのように、月を突き動かして。
がごん。がごん。がごん。
まるで巨大な地層が段階的に滑り落ちていくかのように。
「「う、動き始めたぞっ!」」
最初はゆっくりと。やがて劇的に。
星が宇宙に向かって滑り落ち始めた。
「ついにやったぞ、カグヤ!」
「軌道をずらすことができたんだ!」
「ここまで来たら〝落とす〟まであと一歩だべ~!」「お前ら、ラストスパートだ!」
「「おうっ!!」」
そうして7人の王子と7匹(?)の使い魔たちは、残った力をすべて出し切るようにして〝最後の攻撃〟を開始した。
「「うおりゃあああああああああ!!」」
『『――――――ッ!!!!!』』
巨大化したシショー(大熊)とニャンチャ(白虎)、そしてイノシシ(非常食)は3人で協力するように激烈たる打撃を月の裏側に喰らわせている。
イカと一体化したクラノスは、さらなる強大な水魔法を放っている。
ミカルドは全体の指揮を取りつつも、隻眼のドラゴンによる灼熱の吐息――≪偉大なる龍の火息吹き≫を大地に向かって飛ばしている。
そして巨大な【火炎蜥蜴】も≪偉大なる龍の火息吹き≫を大地に向かって吐いている。
そしてそして自身の中の〝邪龍〟の力が目覚め、まさしく巨大な漆黒の龍と化したオルトモルトも≪偉大なる龍の火息吹き≫を大地に向かって吐いている。
その絵面はまるでコピー&ペーストしたかのように同じだったけど……とにかく攻撃は続いていく。
マロンはさっきので力を使い果たしたのだろうか、今度はささやかな数の(それでも充分凶悪なものだったか)異界生物を召喚して攻撃に参加している。
彼らの隣でイズリーは『きっとあと少しだッ』『筋肉を信じてッ』『絶対にでっかくなってやるッ』と激しい筋トレを続けている。
そして〝勇者の剣〟に選ばれ無事に【勇者】という、村おこしにはおつりが来るであろうとんでもなさすぎる称号を手にしたイズリーが、『だべだべだべえ!』『んだんだんだあっ!』とツボすぎる訛った掛け声と彫の深い顔で勇者の剣を振り回し、超威力の斬撃を飛ばしている。
そんなみんなのことを、ふりふりのメイドさん姿の可愛らしい、女の子にしか見えない男の娘が『ふれー、ふれー』とぽんぽんを遠慮がちに振り回しながら応援している。大きな声を出すのは苦手だと以前に言っていたのに。『がんばれー……! がんばれー……!』と精一杯声を振り絞りながら、みんなのことを励ましている。〝月を落として地球に帰ろう〟と心の底から疑うことなく信じ奮闘するみんなのことを鼓舞している。
「一体、なんなのよ、この光景は……!」
あたしはごくりと喉を鳴らして独り言ちる。
どの部分を切り取ってもまったく非現実味のないおとぎ話――にも無いような、最早神話的な光景だった。
「あはは……信じられないわ」
そして実際に。
月は地球に向かって落ちかけている。
否。
「「うおりゃああああああああああああああああああ!」」
王子たちの最後の連撃によって。
がこおおおおおん。
ギリギリのところで耐えていた命綱が切れてしまったかのように。
裏側から無数に与えられた衝撃によって。
この星――〝月〟は明確に、地球に向かって動き出した。
「おい、見ろ!」
こうして7人の王子と使い魔、そして1人のお姫様によって。
「月が落ちるぞーーーーーーーーッ!!」
ゆっくりと地球に向かって――月は落ちていった。
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