3-61 覚悟を決めよう!(地球帰還大作戦⑩)
大神体であらせられる【大桃様】の攻撃によって。
空気が。大地が。――星が揺らいでいた。
(星を割るなら今度こそチャンスじゃない!?)
と筋肉王子・アーキスを振り返るが、彼は変わらず『最後まで諦めねえッ』『筋肉を信じてッ』『でっかくなってやるんだッ!』と腹筋負荷運動を続けていたので声を掛けるのは諦めた。
そこで。
「きゃああああっ!」
どどどどどどどど。
轟音と共に、大地が震動を始めた。もはや地震などという規模ではない。
まるで手にした板をばたばたと振るような激しい揺れ動きだった。
あたしたちは王子たちに支えられて、どうにかその場に食らいつく。
「カグヤ! ――あと一歩だ!」
「あと、一歩……?」
「「ああ」」
王子たちは頷いて。
その中のひとり――ミカルドが。
対王子用撲殺鈍器である【メモリー君】をあたしに手渡してきた。
「……これ」
「最後はカグヤの手で決めてくれ。この星のお姫様なんだろう?」
「みんな……!」
王子たちは澄んだ対の瞳であたしのことを見つめてくる。
どこか誇らしげで、優しい――まさに王子様らしい表情で、あたしのことを見守ってくれている。
「……わかった。ここまできたんだもの。やってやろうじゃない!」
あたしは手にしたメモリー君の柄をぎゅっと握りしめた。
「カグヤのことは全力でサポートする! 安心して突っ込め!」
いつか。
この塔から脱出しようとした時のように(そういえばあの時はまだ3人だったわね)。
あたしを中心に据え置いて、そしてまわりを7人の王子様たちが固めてくれた。
彼らはあたしの背中に各々の手を置いてくれている。
その掌のぬくもりが衣服越しにも伝わってくる。力が伝わってくる。
応援の気持ちが伝わってくる。それはあたしの勇気へと変わる。
「それじゃ、いくわよ――」
地面は変わらず轟々と揺れている。
空気は張り裂けてしまいそうで。
星はがくがくと震えている。あと一歩だ。
――月を地球めがけて落とす。
そんなあり得ない、誰も考えつかなかった地球への帰還作戦は。
こうして〝ホンモノ〟たちの〝ホンモノ〟の力によって。
――真実になるかもしれない。
かも。半々。五分五分。
この期に及んでも、あたしは完全には信じ切れずにいる。
だって、やっぱりどう考えたって星を裏側から叩いて落とすなんてありえないことだから。
世界中のだれもやったことがない、前例の存在しないおとぎ話だから。
だからこそ。
「ここまでやったんだもの――あたしは最後まで、あんたたちのことを信じるわっ!」
「「おおっ!」」
おとぎ話じゃない、現実の世界では結果がすべてかもしれないけど。
それでもその過程で。
あたしという〝たったひとり〟を救うために。
悲しませないために。
寂しく思わせないために。
お姫様のために。
王子様たちが知恵を絞って一生懸命考えてくれた作戦だもの。
これで星が落ちても落ちなくても。
その過程は。
あたしにとってすごく価値のあるもので。
その過程で。
あたしはみんなのことがもっと〝すき〟になったのだ。
「〝あいしてる〟には、やっぱり届かないけどねっ」
呟いた声は星が震えて立てる轟音にどうしようもなく紛れてしまう。
「「え?」」
聞き返してきた王子たちに視線を向けて、あたしは今できるめいっぱいの笑顔を。
〝だいすき〟って笑顔を、浮かべてあげた。
「なんでもないわ! それじゃ、いくわよ――!」
「「おおおおおーーーー!!」」
もう一度メモリー君の柄を握りしめて。
震える大地を蹴り出して。
様々な岩塊が飛び交い、砂埃が混じりあう空気を振り払って。
あたしは7人の頼れるホンモノの王子様たちに背中を押されながら。
――巨大なクレーターの中へと、勢いよく飛び込んでいった。




