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3-52 作戦を開始しよう!(地球帰還大作戦①)


 場所はいよいよ月の裏側。

 皇帝嫡子であるミカルドを中心に、王子たちが声を荒げている。

 

「貴様ら! 準備はいいな!?」


「「おう!」」


「一度始まれば後戻りはできぬぞ!」


「「おう!!」」


「我らがプリンセスのために――死をも(いと)わず全力を尽くす覚悟はあるか!?」


「「おーーーう!!!」」


 まさしくこれから戦場へと向かう兵士たちのように彼らの士気は高まっている。

 その様子を見ながら、あたしの心臓は呼応し大きく脈打っていた。

 

 ――カグヤにあらためて確認だ。地球に帰りたいか?


 その質問に対してあたしは感情を揺らしながらも迷わず〝帰りたい〟と言った。


 ――〝みんなと一緒に帰りたい〟と。

 

「「うおおおおおおおおお!」」


 夜の空の果てまで届くように。

 身体の中で暴れ狂うパワーを見せつけるように王子たちは叫んでいる。

 

 一体これからどんなことが始まるのだろう。

 高揚感からか、あたしの唇がきゅっと結ばれた。目の奥に自然と力が入る。


姫様(カグヤ)の意志は固まった!」


 ミカルドが叫んだ。


「なればやることはひとつ――遥か彼方の空に浮かぶ、あの碧い星に――()()()()で帰還する!」

 

「「当然だ!!」」

 

「まずは挨拶代わりの一撃だ――思う存分、喰らわせてやれ!」

 

「「おっしゃあああああああ!!!!」」

 

 そして彼らは勇ましい叫び声とともに。

 天高くそびえ立つまさに〝塔〟のように掲げていた各々の拳を。


 そのまま地面に――()()()()()

 

「やっぱり方法物理(それ)しかないのねーーーー!?」

 

 

 ――裏側から大地に衝撃を加えて、月を地球に落とす。

 

 

 そんな前代未聞で歴史上最もエキセントリックな【地球帰還作戦】が今、幕が開けた。


 

      ☆ ☆ ☆



「「うおおおおおおおおおおおおおお!」」


 まさしく空に浮かぶ星に届くような雄叫びとともに。

 王子たちがいっせいに拳を地面に叩きつけた。


 叩きつけた場所は〝月の裏側〟だ。


 彼らは言う。

 月の裏側に衝撃を加えて、そのまま遥か先の空に浮かぶ〝地球〟目掛けて〝月〟を落とすという。


 白昼夢じゃない。真夏の夢どころではない。


 完全完璧に前代未聞な〝地球帰還作戦〟の火蓋が今、〝ホンモノ王子たち〟の手によって切られたのだった。


 どおおおおん! 重低音が鳴った。

 さすがは異世界で貴族青年として鍛えられてきただけはある。

 確かに彼らの拳で地面に()()は入った。

(特にアーキスなんて、まさしく小さめのクレーターのように大地を凹ませていた。おそるべき筋肉ね……)


 しかし。

 それでも〝星〟にとっては些末(さまつ)なことだ。

 

 これくらいの攻撃で、月を落とすほど動かすには程遠い。


「やっぱり、こんくらいの攻撃じゃびくともしねえべ……」

「ククク……この程度は挨拶代わりだ……!」

「これからおれたちの本気、見せちゃうもんね~!」


 そこで王子たちはあたしの方を振り向いて、

 

「「カグヤ!」」


「へっ!?」


「「一緒に――帰ろうね!」」


 爽やかな笑顔で。

 王子様らしい態度で。

 頼り甲斐のある言葉をくれたから。


 あたしは――


「……うんっ!」


 これまでの()()とか()()とかそういうの全部。

 いったん全部この空の彼方に吹き飛ばして。


 目の前の〝ホンモノ〟の王子様たちに、あたしの運命を任せることにした。


「あたしには()()()()()とか、裏側から()()()()()()とか――そういうの、やっぱりよく分かんないし! 未だに信じられずにいるけど、でも! でも――あたし〝あんたたち〟のことは信じてるから!」


 あたしは胸の前に不安の象徴のように置いていた手を。

 天に向かって思いっきり突き付けて叫んだ。


 

「あたしをっ、地球(あそこ)に連れてってーーーーーーーーーーっ!」


 

 王子たちは満足そうに頷きあって、

 

「遂に()()()()()が下ったな」「他ならねえ」「姫様からのお願いだべ!」


 ふたたび、月への全力攻撃を開始したのだった。

 

「「かしこまったーーーーー!」」



      ☆ ☆ ☆


 

「まずは手始めに……いっけええええ! シショーーーーーーー!」


「うわーーーー! 初手で最大級の攻撃加えようとしてるーーーーー!」


(はじめっから超巨大熊(シショー)頼っちゃって大丈夫!? これでだめだったらあとから失速しない!?)というあたしの心配は完全に無視されて。

 

 月の裏側への全力攻撃――その初陣を飾ったのは、アーキスが乗ってきた熊・シショーだった。

 紳士的な所作はどこへやら、今や空にも届かんほどの大きさになって唸り声とともに〝覇気〟を高めている。


(まるで地球を滅ぼす悪の大王みたいね……)


 そう思わせるまでの激烈な圧気(オーラ)がシショーの内に溜め込まれていくのが分かる。

 そして遂に、集中させた覇気の量が頂点に達した瞬間に。


『『 がうがうがあああああああああああ!!!! 』』


 とてつもない咆哮とともに、シショーは凄まじいオーラの込められた巨大な拳を大地に叩きつけた。


「きゃああああああっ!?」


 刹那。

 まさしく星が砕けるほどの轟音と衝撃が周囲に走り、濁流とも見間違うほどの岩の欠片が竜巻のように舞い上がった。


「カグヤッ!」

 

 あたしは衝撃に備え反射的に両腕を頭に被せた。

 他の王子たちに守られながらも薄目を開いて戦況を見守る。


 途轍もない拳撃は一発では終わらない。

 シショーは二撃、三撃と――まさしく小隕石ほどもある拳を大地に向けて叩きつけていく。


『『があああう! がうがあああああう!!』』

 

 そんなシショーの攻撃に奮い立たせられるようにして。


『『に゛ゃううううううん!』』『『ブヒイイイイイイイ!』』


「ニャンチャ! イノシシ!」


 他のふたりの巨大生物も、立ち上がった。

 マロンが乗ってきた(非常食用に捕まえてきた)巨大イノシシは、まさしく猪突猛進のごとく大地に向けて超絶規模の()()()()をし。

 イズリーが乗ってきた白虎は、世界をも切り取ってしまいそうな鋭い爪を出して、大地を縦横無尽に()()()()()()()

 

『『に゛ゃうに゛ゃうに゛ゃうに゛ゃうに゛ゃう!!!!』』

『『ブヒブヒブヒブヒブヒイイイイ!!!!』』

 

 世界を破壊する鳴動と轟音はさらに(はげ)しさを増した。

 大地が破壊され、()()()()()()()()()

 

「……す、すごい……! これなら、もしかしたら本当に突きを動かせるかも……!?」


 攻撃の規模は最早異次元だった。

 3体の〝超巨大怪獣〟によって、大地を抹消しうるレベルの攻撃が月の裏側の地に向けて加えられていった。

 そしてやがて、全身が(くら)むような衝撃がついに()んだ。


 立ち込めていた濃霧のような土埃が止んだ先では――


「……っ!」

 

 壮絶な光景が広がっていた。

 隕石が衝突したかのような巨大なクレーターがすり鉢状に生じている。未だに地響きが残って身体の芯を震わせてくる。

 大地はまさしく(えぐ)り取られたが……しかし。


 ただ()()()()()()()


 いったん攻撃がおさまり轟音と震動が止めば、なにもなかったかのように()()()()()()()()()

 空を見上げてもひとつの異常も見られない。まったくもって上に広がる宇宙(そら)に近付いた気がしない。

 

「このレベルの衝撃でも、だめなの……?」


 大地は(えぐ)れめくり上がり、空気は震え嵐のように風と(つぶて)が宙に舞い上がったが……()()()()()()()()()()()

 

「……ちっ! やっぱ星は強いぜ」


 星は強い、などというなんか頭が悪そうな言葉が聞こえてきた。

 しかし王子たちはその言葉に真剣に苦悩し悔しそうにしている。()()()()


「そんなの当たり前じゃない! 最初から分かってたことでしょう!?」


 しかし。

 その当たり前を――〝ホンモノ〟たちは諦めない。


「よっしゃ、次の衝撃を加えるぜ!」


「「おうよっ!」」


 超巨大怪獣連中による超破壊攻撃でもびくともしなかったのに……それ以上の威力の〝衝撃〟なんてあるのかしら、とあたしは首を捻った。

 そんな不安な表情を浮かべるあたしの前に歩み出てきたのは――


 

「いよいよボクの出番だね」


 

 水上王国の第三王子にして、〝世界最高の魔法使い〟――クラノスだった。



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