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人生で一回だけ口から『ビーム砲』を撃てると、言われた女

作者: 石川 瑠佳

 ある日突然、全世界占い師協会の現会員全員が連名で、ある声明を出す。

【一年後に巨大宇宙艦隊がやって来て、地球を攻め滅ぼそうとします。そのとき一人の救世主の女性がいます。その女性は人生で一回だけビーム砲を撃つことができます。そして、絶対に当てます。今からそれに該当する女性の特徴を八十一個言います。当たった人は朝晩少なくとも一回は毎日「あ――――っ」と三十秒言う練習だけして下さい。本番は窓を開けて空に向かって、そっと口を開けば出すことができます。身体に影響もないです。】

 科学的補足をすると精神エネルギーと、一瞬の超能力で自分に普段ない状態で内部で作り出され発射するそうだ。

【プレッシャーは良くないので名前は教えません。ただ、八十一の条件が当たった人はビーム砲を来たるべく日、上手く出す練習だけしといて下さい。上手くいったあかつきには最低百万円以上が当たっている宝くじをご自宅へとお送り致します。どうぞ、お楽しみに。】


 マジか、当たった。宝くじも付いているビーム砲がが出る条件に。一生に一回だけの…。普通の生活で宝くじは当たったりとかもないのに。

 練習やるか…家族にも言った。すると、「春子、お母さんがいる周りにも、どうしたことか当たっているって言う人がもういっぱいいるんだよ。あ―――っ」

 えっ?私はちょっと不安になった。私って当たってるよね…。


『全世界占い師協会』

 何故、私が全占い師協会の声明を信じたかと言うと、これは全世界に渡ってテレビ中継がされ、各国の首脳陣もこれを肯定をしたからだ。まず、こういうとき率先して動くアメリカという国も同意していたし、他の国々も「ぜひ皆さん協力して下さい」と、言っていた。他の専門家的な先生も「最優先事項です」って言ってたし。

 周りの皆も思うところがあってもつつがなく受け止めてたし。

「仕方がないよね。助かるんだし」

「そういうことはやらないと」

「だよね」と。

 これは、一旦は信じておかないと。

 疑うことなら、後でもできるから。という訳で私は信じることにした。

 最近、毎日「あ――――っ」ってやってるのが世界中の女性でブームだ。


 二十日前、

「水本春子さん」

「あっ、はい」

 歯医者の診療で、歯の具合を確認に来ていた私は丁度テレビのニュース映像で占い師たちの話を知ったのだった。

 後で歯医者さんの所にいるとき、口からビーム砲が発射されなくて良かったと思ったがこれまで十年、二十年と生きていてそんな心配になったことなどなかったから大丈夫か…占い師の人たちも人生で一度しかって言っていたから。

 これ、怪しいと思ったら全部怪しくなるわ。考えたら切りがない。

 オッケーとしておこう。


 他の国でもおんなじように発音をしている。

 金髪の外国人の方がインタビューで「私ははずれているけど毎日やってる。もしかしたら、当たっているかもしれないでしょ」

 世の中にいる身近な周りの人も、

「ねえ、春子。私って四、五個はずれているけど気合いでどうにかなるんじゃない?」

 まあ、そういうのは確かに分かるけど。

 他の子も微妙に「なんか、当たっている気がしてきている」

 うっ、私当たっているのか?おそらく当たっているはずなんだが?


 さて、八十一の特徴は普通のことから意外だと思うものまであって、その中で特に変わっているものを一つ言うと…。

(普段は強気だが元気なときにいろいろと考えて虚しさを感じた結果軟弱である。)

「なんだ、この特徴…」

 軟弱ってかんべんしてほしいぐらい嫌。

「強気なのに考えすぎて、元気なのに軟弱」

 これ嫌だな、普通に。でも、当たっている。だけど、人に聞かれてもNoって言うだろう。嫌って思ってたりするから。

 他にも三つ程、聞かれたら「違う」って言う質問がある。


 日が近くになるにつれ私は疲れがたまってきた。

 私、水本春子は二十代なかばでフリーターだ。大学の就職活動で「何がしたいの?」と言われて悩み、結果就職とはなにか?という職業の選択でまた悩んでいる。

 動くというのは、何かしら苦労を背負いこむことなので緊急を要しないのに働くというのは『被害の的』になりやすい。それでも働くというのは苦労儲けとなるかもしれない。内容が、大事だ。お金と誇れるものが無いとするなら人間は働いてはいられない。

 という訳で私はそんなに忙しくは働いていない。ビーム砲のつもってきた心理的疲労があるのか?

 ビーム砲で地球を守ったら、私だと分かるか?

 なんか、よく分からん超能力とはいえ、それなりに褒められるってことか。それに、当たりの宝くじ…。

 足下がふらつく。

 丁度立っていた場所の、家の中の段差があるコンクリート。場合によっちゃ、打ち所悪けりゃ死んじゃうんじゃねーの。死の恐怖でドキドキドキ。状態を保ち直す。踏みとどまりセーフ。あああ――っ。

 クソ―ッ、ふざけんな。こんな、死に方あるか。絶対、化けて出るぞ。こんな死に方。口からビ―ムってなに。出る前に死んだら一生に一回、ゼロ回で終わりかっ。めっちゃ、気になるわ。クソッ。ヒドっすぎである。

 ある意味、悪霊になってしまう。死んだら後腐れないから、やっぱり連名した全世界の占い師に一人二分ずつくらい枕元に立ってキレるだろうな。後腐れないから。一ヶ月くらい。

 後は家族のために使おう。宝くじももらえないんだから。

 で、四十九日で天国に。ビーム砲、他に撃てる人いたんかな?私が死んだら他の人に付与されるとか。だとしたら、そんな情報知りたいわ。全部、内密になってるし。じゃあ、死ぬ訳にはいかんということでしょ。


 ビーム砲を撃つ日程や、時刻は十日前に『全世界占い師協会』が発表をしたのだった。


 大きい宇宙戦艦が一機、来る。

 一機と、思ったが…。皆、驚いたはずだ。

 めちゃくちゃ大きい。地球と同じぐらいある。

 黄緑色をして、南の方の国の果物か、野菜のような形をしている。

 果物みたいな物のヘタの部分は大きな木の地面にとび出た根っこのように堅そうだ。質感は分からないが、宇宙を旅するくらいだから、丈夫だろう……。

 実は長っ細く、花の蕾にも形の部分では似ている。


 宇宙戦艦の中から割とたくさんの数のなんとなく小回りがきく宇宙戦艦が出てきた。少し薄い紺色だ。地球と同じ大きさの宇宙戦艦が。何千人も住めそうな、島の大きさの戦艦を五千程、出したのだった。

 U・F・O…。なんとなく、四角いチーズが伸びた風にも見えてくる。その他にもするどく指を差している手にも見えなくもない。

 私の目は自動で連写をするカメラのようになっていた。目が開いたり閉じたりしていた。口はあんぐりと開く。汗は、鍋が煮立ったように流れている。

 近くにいた親も、同じような反応をしていたので、私はまた衝撃を受けた。テレビに映った人たちは仕事なのでゼンマイのネジの具合が、切れかけた人形のようになって動いていた。

「こんな、ピンチは見たことがない」番組のコメンテーターは言った。

「グオニュン、ゴオニョン」他のテレビに映った人は言葉が出ない…。

 ネットには訳の分からない文字の並びがところどころに出ていた。身体は動くけど脳みそが働いてくれないってことだろうか…。

 何千人の島から数十人乗れそうな、宇宙船が中から出て来た。

 島のより、こっちの宇宙船が小型だからか高さが低い山の形にも見える。けれど、少し下の方が出っ張っているので四角っぽい。そして、より、細かく指を差している手にも見える

 大きさは、一軒家を二つ合わせたようだ。母艦の方がやや濃いが、この宇宙船も同じく黄緑色だった。それが、一つの戦艦から、何十機体。

 宇宙船は好き勝手に飛び回った。飛行機にぶつかりそうになっていたモノもあった。


 窓は遠景超作動ズーム(多分、造語だ)で拡大をして数百キロ先でもテレビ映像のように、細かく映して見ることができ、宇宙戦艦や宇宙船はレーダーとセンサーが九種類、少なくとも装着をしてあると、番組に出ていた専門家は、言っていた。

 窓は黒くて三角で二番目の大きさの宇宙戦艦も、一番小型の宇宙船も、上に一つ、左右に二ずつ、下に二つ付いていた。テレビ映像で、下からだと仮面ごしの人の目にも見えなくもない。


 では、母艦はもしかして無防備かとも、思えるがそうでもない。ヘタは横に三段、お餅を重ねるような感じになって一番下は六つ、二番目は四つ、三番目は二つ、一番上には先っちょが九つある。これらは、攻撃、偵察にも、使うことが可能だと、専門家は話していた。


 少しすると、たくさんの宇宙船は、レーザービームを出すようになった。

 ビームを撃たれた場所は直径二百メートルぐらいの丸いコゲ跡になった。人がいないような場所に向けられていたが、周りの人間は危険を感じただろう。

 することがなくて、紙の上に鉛筆で黒い丸を描くように地球に黒く丸いコゲ跡が数千ぐらいできた。

 注意を拡声器で伝えようとしたが宇宙船は止めなかった。

 宇宙船は移動のとき、三角(おそらくは円錐形)を後ろ側から出して、スピードを上げていた。

 飛行機雲のようなものかもしれなかった。

 テレビでは時速二~三百キロのとき、六個で、時速七百キロのときは十五個もあったのだった(形が崩れるまでの数)。

 窓から見ていたのだが、三角は一瞬の間にまるで身体の力を抜いたようにゆるっとした形になって、もうしばらくすると、壁の絵が回転するかのように消えてしまったのであった。場合によってはのどかな風景も今は緊張感で唾を飲みこむしかなかった。

 ちなみに、母艦は最初やって来るときにカメラで撮られたものを見ると、円錐が二つ重なったような少しゆるっとしたひし形をヘタの下の辺りから出していたのであった。


 日本以外の別の国がミサイルでまず、致命的なダメ―ジではない攻撃をしたが高性能バリアで全く、攻撃が当たらなかった。


 宇宙船がコゲ跡を作ってから、少し混乱があったが、政府は『外出の禁止』の指示を出した。もし、外出をしている人がいたら保護措置をとると言った。政府の発表によると、一時的に政府が確保をした建物に保護されるらしい。

 物資は配ると発表されたのだった。警察と、物資配達のトラックぐらいしか、ほぼ通らなくなった。

 ビーム砲が出るとされる半日前のことだった。

 世の中は、占いがあんなに的中続きでなかったら、パニックになってしまっていたかもしれなかったが、なんとか持ち堪えていた。

 放牧をして行方が分からなくなっていた牛が五、六頭が巻きこまれ焼け死んでいた。牛も食肉になるはずとは言え、こんな死に方は不服だったはずである。


 一日半、宇宙船は酷い行いをした。


 そして、宇宙戦艦の最もでかい母艦の中に、艦隊は全て戻って行った。

 そのとき、驚きの事態が起こってしまったのであった。

 膨張…と言うのだろうか?

 最もでかい宇宙戦艦はサイズが大きくなっているようだった。

 もしかしたら、丸いコゲ跡は私たち地球の人間が分からないレベルで何かしらを採取する作業であったのかもしれない。なにせ、どこから来たのかも分からない宇宙の謎な果てから来た宇宙(人?)たちだ…。

 そして、宇宙戦艦の口が縦にバカッと開いてきた。まさか…。食べられる?

 地球人皆が、不安になったと思う。いや、人間だけではない…。他の生き物だって不安を感じたかもしれない。

 直径二百メートルを丸コゲへと変えたぐらいだ。ろくな想像にはなっていかないのだ。生きるということすら、絶望的。

 私は自然な雰囲気で口をただ開いた。

 口から透明なモノがニュルッと出てきた。

 丁度、料理のあんかけが両手からはみ出るくらい。えっ、なにこれとドキッとして、一瞬魂かと思ったぐらい。それが天へと、上がっていった。


 夜の時間帯である。ものすごい空が見えないくらいの雲みたいな宇宙船の、母艦の口のような中には少しだけ光があった。天高くで星のよう。私は集中していてそれどころではなかったけど。それが、爆発したときは「人類誕生」って感じだったね。火山の大噴火。こっちが、天井。

 本当は物悲しいけど、仕方がなかった。ちっとも平和っぽくなかったから。

 なんにしたって、ほっといていたら人類滅亡だったよ。

 私も人間だから。耐えられなかった。

 透明も大分上まで行くと、限りない程の大きさへ変化をして、黄色くなってビーム砲だった。想像も入っているが黄色い器に、盛りつけたみたいになって、母艦はドンドン小さい感じになって焦げて消えてなくなったのだ。

 私は一人窓から手を合わせた。こうなった以上意味なんてないけど、そう、しておきたかった。

 肉の臭いがした気がした。

 完全な姿は見ていないから気持ちは晴れない。まあ、それでも何か分かる時が来る。という訳で宝くじのお金を貰って前向きに生きよう。


 一応、毎日「あ――――っ」ってやってたし。宝くじは政府からの名で郵送されて届いた。

 家族は「えーっ…」と、うさんくさそうに見て認めなかった。

 両親は私に関して冷静に物を見ないといけないから、かえって信じられないようだ。変な冗談だと思うのだろう。


 政府は分かっていないことをほじくられたくないのか活躍した人のことをプライバシーの保護という点で公表をしなかった。しかし、これは私も『ビーム砲』で公表されても、いいことなさそうだからそれはいい。だが、もっと情報をきちんと公開できれば私の名前を出しても私の存在はフレンドリーな意味合で助けたので問題はない。

 後、これは別として、お金は貰えなくてもやったかもしれないけど、ある方がこの場合は普通に良かった。


 ビーム砲は透明で私が撃ったと世の中も気付かない。宝くじは五百万円、当たっているモノであった。

 私は嬉しくて片手を握りしめ、やや肩下に掲げ感情表現をした。


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