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攻略できない初心者ダンジョン  作者: ジルコ
第一章 ダンジョンの誕生
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第23話 2階層始めました?

 2階層を造って、さあ新しいチュートリアルが始まるぞと意気込んで迎えた翌日の朝、俺たちは思わぬ事態に見舞われていた。別に悪いことじゃねえ、悪いことじゃねえんだけどな。


「気づかれてねぇし!」

「これはさすがに予想外だな」


 寝そべりながらぱりぱりと瓦せんべいをかじっているセナは完全にやる気を失っている。まああれだけ紆余曲折ありながらワイワイ造った2階層が気づかれもしなければやる気も失うわな。

 てっきり何か変化がないか朝イチでダンジョン全体を確認に回るんじゃねえかと思っていたので特に案内表示とかもつけなかったんだがそれが裏目に出た形だ。


「あー、しくったな。せっかく徹夜して造ったのに」

「まあ良いではないか。こっちでマラソンでも見るか?」

「マラソンねぇ」


 寝そべるセナの目の前のタブレットにもちろん普通のマラソンが映っているはずがない。セナがマラソンと呼んでいるのは今朝から始まったものすごいスピードで1階層のチュートリアルを繰り返している警官たちの謎の行動だ。

 昨日は検証なんかをいろいろしていたせいもあったのだろうが大体15分くらいかけて1階層のチュートリアルは行われていた。しかし今はたったの5分しかかかっていない。


 6人組で周囲を警戒しつつ駆け足で入ってきたかと思うと1部屋目を完全に無視して進み、2部屋目のパペットを転ばせて集団で踏みつけて即座に倒す。そして3部屋目でフェイクコアを抜き取って暗くなったあとに宝箱から木の棒2本を取ると再び駆け足で去っていくのだ。そしてすぐに別の奴らが入れ替わりで入ってくる。

 リアルでタイムアタックしてるんじゃねえかなと思うほどの速さだ。そのせいで現状のパペットだけでは数が足らなくなり補充のパペットを10体召喚することになっちまった。まあ元は取れているから問題はねえんだが。しかしこの急ぎようを考えるともしかして……


「他のダンジョンでも見つかったのかもな?」

「確かにな。それなら軍人がやってきたのもうなずける話だ」

「軍人?」


 思わず首をかしげる。もちろん日本にいるのは自衛官で軍人はいないってことじゃない。今日、これまで入ってきた奴は全て警官で自衛官らしき奴はいなかった。全員制服を着ていたから別の服装の奴がいれば気づいたはずだしな。

 そんなことを考えていると視線を感じてその方向へ顔を向ける。するとセナが寝転がったまま呆れた顔で俺を見ていた。


「まさか気づいていなかったのか?」

「いや、だって警官ばっかだったぞ」

「お前の目は節穴か? 周囲を警戒する視線、お互いをカバーし合う動き、その行動全てが昨日までの奴らとは違うだろう? 集団でこういうことに対応することを普段から訓練していなければ出来ない動きだぞ。奴らは軍人もしくはそれに類する者たちだ」


 一切の迷いもなく断言されたので俺も今ダンジョンに入っている奴の様子をじっくりと観察してみる。そう言われてみると確かに昨日までとは違うような気もしないでもないがセナが言うほどはっきりとわかるかと言えばそうじゃない。

 ずーっと走りっぱなし、動きっぱなしなのに息も上がってねえのはすげえなと思うがその程度だ。


「わからん。どうやら俺はそっち方面には詳しくなかったみたいだな」

「ふむ、まあ透の目が存在意義さえ疑うくらい役立たずでも私が気づけば良いことだしな。気にするな」

「お前はもうちょっと俺に対する言い方に気をつけろよ」

「何のことだ?」

「無自覚かよ!」


 ふふっと笑いながらタブレットへと視線を戻し、再び瓦せんべいをばりばりと食べ始めたところを見ると確信犯ではあるんだが、それは良いことなんだか悪いことなんだか……どっちだろうな。まあセナらしいから別にいいかとすぐにそんな考えを放棄する。


 しかしセナの言葉が本当なら国として本格的にダンジョン対策に乗り出したってことだろう。じゃなきゃあ自衛隊なんて動かせないだろうしな。わざわざ警官の制服を着せてカモフラージュしているってことは秘密裏に動いているんだろうな。

 まあダンジョンなんてもんがいきなり出来て、その中には未知のモンスターがいてそいつらは人を襲う、なんて一般人に知られた日にはどれだけ混乱するかわかったもんじゃねえだろうし。

 レベルアップしたり魔法が使えるようになったりすると知られれば一部は狂喜乱舞するかもしれんが、どっちにしろ大騒ぎになって困ったことになるという意味では同じだしな。


 せっかく徹夜で作った2階層が無視される状況に思うところがない訳じゃあないが、命に関わるようなもんでもねえからな。決して色々試行錯誤して作ったのに無視しやがってこんちくしょうめ! とかは思ってねえ。思ってねえったら思ってねえ。


「セナ、あと任せていいか?」

「いいぞ」

「じゃあ俺は寝るわ。もし2階層の存在に気づいた奴が出たら起こしてくれ」

「了解した」


 セナに任せてごろりと床に転がる。これは決してふて寝じゃねえからな。

お読みいただきありがとうございます。

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昔に書いた異世界現地主人公ものを見直して投稿したものです。最強になるかもしれませんが、それっぽくない主人公の物語になる予定です。

「レベルダウンの罠から始まるアラサー男の万能生活」
https://ncode.syosetu.com/n8797gv/

別のダンマスのお話です。こちらの主人公は豆腐。

「やわらかダンジョン始めました 〜豆腐メンタルは魔法の言葉〜」
https://ncode.syosetu.com/n7314fa/

少しでも気になった方は読んでみてください。

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