第117話 コアルームなどの整備
俺の推測に関してセナも一応理解をしてくれたわけだが、打てる手は打っておいた方が良いということで情報部が働くための部屋の作成とセナが人形を造ってみて言語はどうなるかの検証をすることになった。
情報部の規模についてのイメージが俺には全くわからなかったのでセナに聞いてみたのだが、とりあえず現状は50名程度が入れることを目途に造れば良いらしい。
ダンジョン内の様子を自由にそして相手に気付かれることなく見聞きすることが出来るという現状では、情報収集をするための人数は多ければ多い方が良いらしいが、その聞いた情報をしっかりとした情報として理解できるようにする教育が必要なのだそうだ。
いまいち、その情報を情報として理解と言う部分がわからずに俺が首をひねっていると、セナは小さく笑いながらこう言った。
「ただ聞くだけならレコーダーでもタブレットの前に置いておけば事足りるだろう」
「なるほどな」
確かにレコーダーでも会話を拾って情報収集するって目的は果たせるからな。聞くのに時間がかかりすぎて現実的ではないけど。しかしそう考えると別の疑問も浮かんでくるな。
「俺はそんな教育とか受けてねえけど良かったのか?」
「情報収集で重要なのは、現状の認識、対象の絞り込み、そして情報の取捨だ。ずっとこのダンジョンを見てきた透なら今どんな状態で、どんな情報が必要になり、それが得られるであろう対象は誰なのか自然と理解できるはずだからな。特に困ったようなこともなかっただろ」
「まあ当事者だしな」
そう考えると俺とセナ以上に情報収集に適任な奴はいないってことだな。このダンジョンに関する知識も入ってくる奴らについてもわかっているし。
「それを出来るようにする教育が必要なのだ。だからしばらくは私がつきっきりで指導することになるだろう。それを考えても当初の人数はそこまで増やすことは出来ない。まあ一度ある程度の者たちに教育をしてしまえばその者たちを中心に後から入った者を指導すれば良いから苦労するのは最初だけだな」
「よろしくお願いします」
「うむ、ビシビシ鍛えてやろう」
「その言い方はちょっと不安になるな。あんま無茶はすんなよ」
一応釘を刺しておいたが、セナはニヤリと笑うだけだった。まあセナが俺とせんべい丸以外に無茶を言っているところを見たことはないからたぶん問題はないはずだ。
ダンジョンに関する知識でいえば俺とセナは同じようなものだが指導となると別物だからな。セナは結構教え上手だし、フォローや気配りも出来る。そういった教官役に向いているだろう。
で、人数も決まったことだし情報部の本拠地となる部屋の作成だ。緊急の場合も考えてなるべくコアルームに近い場所に部屋を造る必要があるのだが、最初のころ無計画に部屋を増やしていたこともあってちょっと扉が多すぎるのでついでに整理をすることにした。
その結果コアルームにある扉は5つにまで減った。
まず1つが1階の階段奥の隠し扉へと繋がっている通路へと続く扉だ。コアルームとダンジョンが接続されている必要があるという制限上、この通路は絶対になくすことが出来ない。一応1階の隠し扉もグレードを上げたし、今のところ気づかれたような様子はないので大丈夫なはずだ。
もっとも気づかれたところでまだまだ細工はしてあるから問題はねえんだけどな。コアルームの手前には人形たちの待機部屋もあるし。
2つめが俺の生活のための小部屋類に繋がる通路だ。トイレだったり風呂だったり、個人の物置兼人形作成用の部屋なんかもある。まあ今は人形造りは基本的にコアルームでしているからあんま使わねえんだけどな。
もしかしたら今回の情報部が動き始めてダンジョンを監視する必要が減ったら使う機会が増えるかも知れねえな。でも現状で特に困ったようなこともないし、今と同じように特殊な工程なんかの時以外は使わないかもしれねえな。
3つめはセナの私室に繋がる通路だ。まあ、ここに関しては完全なプライベートスペースなので俺は一切ノータッチだ。
たまにせんべいを持って通路に入っていく姿を見るので、勝手にせんべいにあふれた部屋になっているんだろうなと思っている。
4つ目はファムやスミスの部屋がある通路だ。戦いじゃなくて内向きの仕事をする人形たちの部屋だな。現状では2人の部屋があるだけなんだがこれからのダンジョン運営を考えればそのうち部屋は増えていくだろう。そろそろ料理人型機械人形を増やそうと思っていたんだが、ちょっとDPの使用量が増えそうなのでしばらくは保留だ。
一応ファムたちが造ったものを保管しておく場所もその部屋の中に用意してある。管理はあいつらに任せているから全貌は把握してねえけど。
5つめが今回の情報部などの部屋へと繋がる通路だ。基本的にここはダンジョンで敵と戦うことに関連する部屋を集結させる予定の通路だ。
情報部の部屋を造って以降もなんだかんだ言いながら部屋が増えていくような気配がしたのでここもそのうち増えるだろ。
で、件の情報部の部屋なんだが最低限1人につき1台のパソコン大のタブレットがあれば良いということでデザインにこだわりは無いようだったので俺の好きにさせてもらった。
イメージしたのはNASAとかJAXAとかの、ロケットの発射する時の映像でよく見る管制センターだ。
正面の壁面には巨大な画面がいくつかあってダンジョン内の様子を映している。そしてその中心から半円を描くようにして机が配置され、そこに椅子やタブレットを置いて大まかな形は完成だ。無駄な装飾とかは一切なくして実務性を第一優先したって感じの見た目にしてみた。その方がそれっぽいしな。
劇場のように進むに従って若干の下り坂になっているため入り口から全貌が見えるようになっているんだが、この場所で人形たちが働く姿を見ているだけでも楽しいだろうことはうけあいだ。
気分は司令って感じか? いや、ダンジョンマスターなんだから同じようなもんだけど。セナも文句はなさそうだったしとりあえずこっちは問題なしだ。
ただ順調だったのはここまでだった。セナによる〈人形創造〉で俺たちは思わぬ問題に直面したからだ。
お読みいただきありがとうございます。
地道にコツコツ更新していきますのでお付き合い下さい。
ブクマ、評価、感想などしていただけるとやる気アップしますのでお気軽にお願いいたします。
既にしていただいた方、ありがとうございます。励みになっています。




