第103話 機械人形の名づけ
すみません。投稿し忘れていました。
あぁ、今日は予約投稿になっちゃったなとか思っていた約11時間前の自分、アホ過ぎやろ。
最終的にはやはり武器職人型を兄に、調薬士型を妹にすることで落ち着いた。とは言っても結局は俺の中の勝手なイメージなんだけどな。とは言えこのイメージがしっかりとしていないと気持ちが入らねえし、そうすると中途半端な出来になっちまうんだよな。
「よし、終わりだ。動きづらいとかねえか?」
「いえ、ありません」
細かい修正を終え、一度立ってもらってから一周ぐるりと回ってみたが気になる点はないな。動きに支障もないようだしこれで良いだろう。
イメージさえ明確に出来れば後はそれに沿うように愛情を注ぎながら<人形改造>していくだけだった。人形師のレベルが上がったおかげか、それとも今までの<人形改造>の経験のおかげかわかんねえけど、今回に関してはかなりのスピードでイメージ通りに作り上げることが出来た。かかったのは2体でたった半日だ。
いや、やっぱ<人形改造>ってすげえよな。金属のボディが本当に粘土みたいに扱えるってのはかなり助かる。さすがにここまで金属の造形をするなんて普通なら無理だしな。とは言えすべてが粘土みたいになっちまうのをもったいないと思う気持ちがないわけじゃあねえんだけどな。
調薬士型機械人形がセナのそばで俺の作業を見ていた武器職人型機械人形の隣へ歩いていき、そして横に並ぶ。少し吊り上がり気味の目に不敵な笑みを浮かべる口をした兄とたれ目をちょっと困ったように細める妹。よし、良い感じだな。
「じゃあ武器職人型機械人形はスミス、調薬士型機械人形はファムってこれから呼ぶな。セナもそれで良いか?」
「んっ、名前に関しては透に任せる。しかし直球な名前だな」
「仕方ねえだろ。やっぱ名は体を現すって言うし、覚えやすいだろ」
セナとやり取りしている間、スミスとファムは自分たちの名前を刻みつけるように小さな声で繰り返していた。そんな姿を見ていると自然と笑みが浮かんじまうな。
「スミス、ファム。俺の思いだけでお前たちを勝手に改造しちまって悪かったな。一応俺の中のイメージに従って姿を変えてもらったが、お前たちにどんな風に話せとか性格を変えろとか言うつもりはない。まあ仕事はきっちりとしてもらうけどな」
「「はい」」
「とりあえず大まかなこれからの仕事については透が<人形改造>している間に説明しておいたぞ」
「おっ、悪いな。まっ、セナから聞いているならわかるだろうがお前たちを呼んだのはフィールド階層の有効利用のためだ。具体的に言うなら人形造りの素材になりそうなものの発見だな」
「「はい?」」
スミスとファムが少し首をかしげながら疑問の声を上げる。おっ、結構表情が動くんだな。特に外見以外はいじってねえから元々の仕様か。さすが50万DPするだけあるな。
しかしなんで2人とも意味がわからないってリアクションなんだ? セナが説明したんだからわかってるはずだよな。確認のために視線をセナへと向けるとやれやれといったしぐさでセナが肩をすくめていた。
「人形の素材を集める前にフィールド階層の素材を加工した武器の検証が先だろうが。透は本当に人形造りのことになると周りが見えなくなるな」
「あー、そういえばそうだったな。緊急性が高いのはそっちだもんな。悪いな、2人とも。とりあえずフィールド階層にある素材で武器の作成と既存の武器をダンジョン素材でコーティングするとどうなるかの検証を頼む。人手や素材が必要なら言ってくれれば良いから」
完全に頭が人形造りに行っちまってたな。まあ直前まで<人形改造>していたせいもあるんだろうけど、まずはダンジョンの安全を第一に考えねえと。人形造りもダンジョンの戦力を増やす一助になると言えばそうなんだが、それは最悪DPで召喚すれば代用可能だし。
2人がわかったと返事をしたのでさっそく検証に入るのかと思っていたんだが、なぜかファムがピンと右手を挙げてこちらを見てきた。
「ファム、どうぞ」
「武器加工が第一なのはわかりましたが、その後はどちらを優先すべきでしょうか?」
「どちらって、1つは人形の素材集めだよな。もう1つは何なんだ?」
「せんべいと言う食べ物の素材を集めるようにと言わ……」
「あっ、バカ!」
「ほほう、どういうことかな。セナさんや」
じろりとした目でファムの口を押さえたセナを見つめる。さっき人形の素材のことを言った俺のことを馬鹿にしてくれやがったにもかかわらず、ちゃっかりと自分は自分の要望を叶えようとしていたわけか。
じーっと見続けていると、セナはファムの口から手を放してそっぽを向いた。しらばっくれる気だろうがそうはいかねえからな。
「返事がないってことは、せんべいの素材は後回しで良いってこと……」
「なっ、それは卑怯だぞ。先に頼んだのは私だ」
「人形造りはダンジョンのためになるけど、せんべい造りは特に関係ないし優先されるべきは人形の素材じゃねえか?」
あくまでセナは優先権を主張してくるが、今回ばっかりは俺の方が正しいだろ。別にダンジョン素材のせんべいを作らなくったって問題があるわけじゃねえしな。
しかしそんな俺の考えに反してセナはふっ、と息を吐くとわかってないな、とばかりに頭を横に振った。
「甘いな。新たなせんべいとの出会いが私を強くするのだ」
「いや、それはねえだろ。っていうかそもそも素材があってもせんべいなんて誰が作れるんだよ。道具だってねえし」
「それは……そうだ。スミス。お前ならせんべいを作る機械を作れるだろ」
「すみませんが料理を作る道具は専門外です」
「くっ!」
本当に悔しそうに顔を歪める様を見ると、セナがダンジョン産の素材で作ったせんべいを楽しみにしていたんだろうことがわかる。まあわかったところで俺にもセナにも作れねえんだけどな。
このままフォローしなくてもセナならすぐに立ち直りそうなものだが、万が一モチベーションが下がったままになっちまったら厄介だ。一応励ましと言うかフォローしておくか。
「まっ、どっちにせよしばらくは検証だ。ある程度の検証が終わった時にDPに余裕があれば料理人型機械人形がいたし、そいつを召喚して作ってもらえば良いだろ」
「本当だな。二言はないな!」
「お、おう」
一気にテンションが高くなったセナに少し引きつつもしっかりと肯定しておく。
DPで出てくる料理もうまいっちゃあうまいんだが、人形が手作りした料理なんて俺も食べてみてえしな。あっ、そう考えるとスミスやファムが作る武器や薬なんかも人形手作りの物になるのか。そう考えると胸アツだな。
「よし、じゃあ始めようぜ」
「おう」「「はい」」
皆の返事を聞きながら、ふと部屋の片隅のせんべい丸が視線に入って来た。こころなしかブルブルと震えているような気もするが、お前の強さならきっと大丈夫だ。そういう思いを込めて親指を立てて、グッドラックとしてやったらせんべい丸は俺と手を上下逆さまにして返事をしてきやがった。なんでだろうな?
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