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攻略できない初心者ダンジョン  作者: ジルコ
第三章 探索者たち
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第101話 フィールド階層の利用問題

 フィールド階層の新たな可能性に胸躍らせていたわけだが、黙々と武器を作るセナを眺めているとだんだんと落ち着いて冷静になってくる。そしてそれに従って一筋縄ではいかないことにはっきりと気づいた。その問題は単純にして明快。

 俺自身がフィールド階層にあるものが何か判断がつかねえってことだ。


 DPで購入したものなら買うときに説明文とかもあるから大まかな概要はわかるし、アスナとかに買ってきてもらう地上のものならある程度の知識があるので理解はできる。でもフィールド階層に生えている木、草、粘土、その他もろもろの物の中でどれが俺が求めているものなのか全くわかんねえんだよな。

 フィールド階層の中には廃坑や鉱山なんて物もあったし、おそらく金属系の物も得ることが出来るはずだ。でもそもそも何が含まれているかなんて俺にわかるはずがねえし、どうやってそこから金属を抽出していくのかなんてわかるはずもねえ。


 出来るとすれば手当たり次第に実験を繰り返して、その結果を収集して選別していくって感じになるんだろうが、明らかに俺1人では無理だ。そんなことをしていては人形造りも出来なくなっちまうしな。

 単純作業ならパペットたちに任せても良いんだがあいつらはちゃんと指示してやらねえとダメだし、複雑な作業は出来ねえからな。まあそれもパペットの個性なんだから別に良いんだけどよ。10DPなのにあんなに働いてくれるんだからむしろありがたい存在だしな。


「いつまで寝ているつもりだ?」

「いや、ちょっと冷静になって考えるといろいろとままならねえなと思ってな」


 殴られた痛みも引いてきたので「よっ」と声を出しながら起き上がる。さすがにセナに任せっぱなしってのはまずいしな。人形用の武器を作ると思えば、気合も入るし。とは言えこの作業も人手があった方がはるかに効率は良いんだよな。


「なあセナ。人手が足りないと思わねえか?」

「短期的に見れば不必要、長期的に見れば必要だろうな」

「んっ、逆じゃねえのか?」


 俺の疑問にセナが呆れたような目をしながらため息を吐いた。そして手に持っていた削りかけの木を置きこちらへと向き直る。あっ、これはまずいやつだな。とりあえず反省の意を表するためにも正座しとこう。

 考えてから発言しろとセナには常々言われてるんだが思っていることがぽろっと出ちまうんだよな。気を付けてはいるんだが。まあ文句は言いつつもセナがちゃんと説明してくれるからってのも俺が思わず言っちまう一因かもしれねえが。


「現状すぐに確認しなければいけないことはフィールド階層の木や植物がどの程度モンスターに対して有効かを確かめることだ。逆に言えばある程度の検証をすれば事足りる。後は侵入してくる奴がどんな武器を用意してくるかによって対応は変わるからな。だから今はそこまで人手は必要じゃない」

「じゃあ長期的だと必要ってのはその対処に人手が必要になるってことか?」

「それもあるが、先ほど透が言っていたようにフィールド階層の資源を自分たちが有効活用しようと思えばそれなりの設備、人員が必要だ。将来的に使える駒を増やしておくためにも研究はすべきだろうからな」

「つまり緊急性はないが将来を見越して人手を増やしておいた方が良いってことだな」

「端的に言えばそうだな」


 セナの同意の言葉を聞きながら顎に手をやり考えをまとめる。

 どちらにせよ人手を増やすのであればなるべく早く増やしておいた方が効率も上がるだろう。でも問題はその人手をどうするかってことだ。

 サンや先輩、ナルとかの例外を除けば、ある程度の自律した思考を持つラインはおおよそ把握できている。10万DPだ。それ以上になればほぼ確実に人形に本当の意味で魂が宿っていた。俺の命令にただ従うだけじゃなくてある程度自分で判断をしたり出来ているし、なにより性格が全く違うからな。


 せんべい丸、ユウ、アリス、その他にも何体か10万DPを超える人形はいるんだがそれぞれ個性がある。それは喜ばしいことではあるんだが、逆に言えば人手を増やそうとして造った人形の性格が研究に向いているとは限らねえんだよな。

 ユウは物静かだが実はかわいい物好きという原作の性格そのままだし、アリスは無邪気だ。せんべい丸はいまいちわからんが、その他の奴の傾向も見るとその容姿通りの性格をしているように思える。つまり研究者の人形を作って10万DP以上をつぎ込めば研究に向いた人形が出来上がるはず、ということになる。ただあまりに数が少なすぎて確実とは言いきれねえんだよな。


「今回は大人しくDPで召喚するか。今の検証だって早いうちが良いだろうし」

「まあそれが無難だろうな」


 2人していったん作業をやめ、いつもの体勢でタブレットを操作しながらこれは、という人形を探していく。


「研究に向いた人形と武器を作れる人形となると、この辺りか?」

「ふむ、かもしれんな」


 一応セナにも確認はとったが、特に異論はないようだな。モンスターについては特に説明とかもないし、ダンジョンと違って購入する前にある程度の容貌を見ることも出来ねえから不安は消えねえんだけどな。

 俺が決めた人形は50万DPする。というかシリーズもので、そのシリーズは一律50万DPするんだけどな。ちょっと揃えてみたい衝動に駆られるがそんな余裕はないから我慢するしかねえんだよな。いや、でももう1体くらいなんとか……


「透、何をしている。召喚するのではないのか?」

「お、おう」


 セナがくるりと顔の向きを変え、俺を見上げてくる。その眼には明らかに疑いの色が含まれていた。


「お前、まさか全部揃えたいとか思っていないだろうな?」

「そんなこと、か、考えてねえって」

「はぁー、本当に透はわかりやすいな。言っておくが揃えるとしたら5千万DP必要だからな」


 セナの言葉に少しだけ肩を落とす。改めて言われるとまさしく無謀だな。いや、将来的に考えればいつかは可能になるのかもしれんが、少なくとも今の俺たちにとってはまさに桁が違う。倍にしたら誰が買うんだよとか思ってたフェニックスが召喚出来ちまうDPだしな。

 まあダンジョンにとって有用だろうラインナップだからDPに余裕ができたら徐々に増やしていけるはずだ。希望は捨てねえぞ。

 とは言え現状で必要なのはこの2体だ。じゃあいつもの奴いくか


「サモン、調薬士型機械人形×1、そしてサモン、武器職人型機械人形×1」


 俺とセナの目の前にいつもの光の柱が2つ立ち昇り、そしてそれが徐々に落ち着くと、その場には2体の人形が顔を伏せ、片膝をついた状態で現れたのだった。

お読みいただきありがとうございます。

地道にコツコツ更新していきますのでお付き合い下さい。

また、100話達成のお礼としてこの章終了時にちょっとしたおまけを用意中です。もうしばらくお待ち下さい。


ブクマ、評価、感想などしていただけるとやる気アップしますのでお気軽にお願いいたします。

既にしていただいた方、ありがとうございます。励みになっています。

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昔に書いた異世界現地主人公ものを見直して投稿したものです。最強になるかもしれませんが、それっぽくない主人公の物語になる予定です。

「レベルダウンの罠から始まるアラサー男の万能生活」
https://ncode.syosetu.com/n8797gv/

別のダンマスのお話です。こちらの主人公は豆腐。

「やわらかダンジョン始めました 〜豆腐メンタルは魔法の言葉〜」
https://ncode.syosetu.com/n7314fa/

少しでも気になった方は読んでみてください。

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