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ドキュメント・輸血C型肝炎患者裁判記録 副題・輸血C型肝炎の真実       

作者: 小野口英男

ドキュメント・輸血C型肝炎患者裁判記録 副題・輸血C型肝炎の真実       小野口英男 

          

第一回口頭弁論 10月17日634号法廷

訴状

平成19年8月31日

東京地方裁判所 御中

原告 小野口英男

 郵便番号

 住所 神奈川県 電話番号

 原告  小野口英男

 送達場所は上記住所に同じ

 

 郵便番号

 住所 東京都 電話番号

 被告 国 法務大臣 鳩山邦夫

<市区町名番地、郵便電話番号は原告被告共プライバシー保護の為、削除>

医療補償請求事件

訴訟金額  <数字は筆者の判断により削除>

徴用印紙額 金242000円 

予納郵便切手金6400円

請求の趣旨

原告小野口英男は輸血により発病の慢性C型肝炎の補償費として<金額は筆者の判断により削除>

を被告 国 法務大臣 鳩山邦夫に請求する。

請求の原因

原告小野口英男は度重なるなる疲労感から1990年(平成2年)12月横浜市立市民病院の診察を受け、血液検査などの検査の結果、消化器内科で慢性C型肝炎と診断されました。肺結核の手術の際の輸血(1960年2月都立広尾病院弟2内科、左肺上葉摘出手術、そう輸血量2000cc)が原因と言われました(甲弟1号証)。以来今日迄慢性C型肝炎に苦しんでおります(血液検査結果表添付)。

尚インターフェロンによる治療を勧められるも高額の為に拒否しました。後に高血圧症・喘息を発病し現在治療が続いております(薬剤処方箋代用添付)。この両病共慢性C型肝炎程原因は明確ではありませんが慢性C型肝炎による身体の衰弱が原因の一つである事は明白です。

当時の輸血血液は売血によるものであり、売血者の職業は殆ど日雇い労働で住居はドヤ街かホームレスでの劣悪の生活環境でした。この様な血液を輸血した結果の慢性C型肝炎の発病はなるべくしてなったものであります。要するに当時のずさんな血液医療行政がもたらしたものに他なりません。原告は慢性C型肝炎の発病に何ら過失責任はありません。よって原告小野口英男は長い間のそして今後も続く精神的肉体的苦痛の補償として<金額は筆者の判断により削除>を被告 国 法務大臣鳩山邦夫に請求するものであります。

証拠方法

甲弟1号証慢性C型肝炎診断書(横浜市立市民病院)

添付書類

訴状

甲弟1号証                   1通

住民票診断書の住所が前住所記載の為       1通

血液検査結果表(横浜市立市民病院)       1通

薬剤処方箋代用横浜南共済病院外薬局調剤説明書  1通

平成19弟22608号(以後省略)

医療補償請求事件(以後省略)

原告 小野口英男(以後省略)

被告 国 法務大臣鳩山邦夫(以後省略)

訴状 追加

平成19年10月17日

東京地方裁判所民事弟15部は係 御中(以後省略)

原告 小野口英男

請求の趣旨

以下の文言が訴状において欠落しておりましたので追加します

  訴訟費用は被告の負担とする

  との判決並びに仮執行の宣言を求める



答弁書

平成19年10月17日

被告指定代理人23名

<プライバシー保護の為、氏名削除>

               

弟1 請求の趣旨に対する答弁

 1 原告の請求を却下する。

 2 訴訟費用は、原告の負担とする。

 3 仮執行の宣言は相当ではないが、仮に仮執行宣言を付する場合は、

(1) 担保を条件とする仮執行免脱宣言

(2) その執行開始時期を判決が被告に送達された後14日経過した時とすることを求める。

弟2 求釈明の申立て

1(1) 本件請求の法令上のむ根拠となる条項

  (2) 国家賠償法に基づく請求であるとした場合、本件請求において、いかなる者のいかなる義務違反を問題とする趣旨かをそれぞれ明らかにされたい。

 2(1) 原告がC型肝炎ウィルスに感染したと主張する時期及び経路とその根拠

  (2) 原告が受診した病院名(都立広尾病院及び横浜市立市民病院を含む)、当該各病院における原告の病名、諸検査の結果、入院・通院の別、治療期間及び治療・投薬の内容をそれぞれ明らかにされたい。

弟3 請求の原因に対する認否及び被告の主張

上記求釈明に対する回答を待って、追って準備書面により明らかにする。



          

第二回口頭弁論 11月12日516号法廷

準備書面1

平成19年10月30日

原告 小野口英男

求釈明の回答

1(1)国家賠償法1条1項により国に賠償責任

  1959年前後、国が保存血液で問題の多い売血から献血への転換を全く取らなくなった事が後に大量の慢性C型肝炎患者を作り、慢性C型肝炎は肝癌へと進行しております。肝癌患者の70%が、私もその一人であります慢性C型肝炎患者からと云われております。当時の厚生大臣の献血へのそうした無策行動が沢山の肝癌患者を作ったのであります。従って原告は国家賠償法1条1項により厚生大臣に代わるべく国に賠償を請求するものであります。<この項トップと一部に訂正後の文言>

1(2)当時の厚生大臣の売血から献血への転換を取らなかった責任

イ.肺の切除は出血を伴う為、私も保存血液の輸血を行いまし

 た。その保存血液が所謂売血によるものであり、売血者は劣悪の

 環境下にあった事は訴状の通りであります。私が生まれ育ち30年間住んでおりました近くに、有名なK(作者の判断で実名を伏せます)研究所がありました。自宅から5分ほどの広い敷地の一角にK研究所が経営する血液銀行がありました。売血者は繰り返し売血しており、明らかにアル中と思われる人や視線の定まらない人等、道路に集団でいられると側を通るのが怖い程でした。この血液銀行が例外と言う訳ではありません、殆どの血液銀行が同じ様な状況にありました。

ロ.慢性C型肝炎は平成年月横浜市立市民病院で担当医より、

 C型肝炎は新しい病気(正確には2年前の1988年抗体発見)で未だ治療薬もない、と言われました。しかし以前にC型肝炎と言う病気は存在しなくても、肝炎(黄疸)と言う病気は存在しており輸血に依る場合は血清肝炎または輸血後肝炎と呼ばれていました。私が結核で入院した昭和30年代前半は肺切除後、少なくとも3人に1人は血清肝炎になっておりました。吐き気と怠さに襲われます。私の場合も肺切除後1ヶ月くらいで黄疸になりました。数日吐き気が続き、担当医に「黄疸になりました」と言いました。この事(患者が勝手に病名を言う)が担当医の逆鱗に触れてしまい、この後1週間位放っておかれてしまいました。この一週間が私にとって非常に厳しいものになりました。吐き気と特に怠さの方は日を追う事に強くなり最後の1週間目には寝ていても体のやり場に困る程の怠さなのです。白目、尿とも真っ黄色で、月に1度血沈検査をしますが血沈を取った後看護婦が飛んできて「あなたは黄疸です」と言われ、それから2~3週間黄疸の治療が行われました。この様に肺切除後短期間ではあっても激しい苦痛を伴う血清肝炎を昭和30年代前半には肺切除後少なくとも3人に1人、33%以上の患者が掛かっていたのであります。当時の病院入院期間は普通4ヶ月であります。それ以上だと療養所に回され(それ程肺結核患者が多かったと言うことです)、私も4ヶ月で退院しました。僅か4ヶ月と言う短い期間に33%以上もの大量の患者が血清肝炎になった事になります。この事を真摯に受け止めれば如何に大変な事が起こっているか分かった筈であります。

 「結論」昭和30年代始めから大量の患者が血清肝炎に掛かったわけであり、私もその一人であります。僅か4ヶ月と言う短い期間に33%以上もの大量の患者が血清肝炎になった事(50%という説もある・甲2号証)を真摯に且つ厳粛に受け止めれば、この異常事態の原因が全て売血に依るものである事は分かった筈であります。そして取るべき道は一つ、原因である売血に変わる方法、献血でありそれも緊急を要した訳であります。いかなる困難があろうと売血から献血への転換を劇的なまでに迅速に行うべき状況であったにも関わらず、それをしなかった当時(1958.11~1960.2)の監督官庁である厚生省のトップである厚生大臣こそが沢山の肝癌の予備軍とも言える。私もその一人である慢性C型肝炎患者を作ったのであります。

2(1) C型肝炎ウィルス感染の時期、経路、その根拠

 1960年2月都立広尾病院弟2内科の肺切除術後に行った4回の血沈検査(毎月1回)で採取した血液の1本でも冷凍保存しておけば、100%C型肝炎ウィルスの経路は分かった筈ですが、冷凍保存している訳もなく今となっては不可能な話であります。

 しかし幾つかの事実を並べる事により、限りなく100%に近づく事は可能であります。

  ➀ C型肝炎が血液によってウィルス感染し、又当時の輸血による感染が大多数を占める事は医者で無くても良く知られている事であります。広尾病院の肺切除術の再の総輸血量2000CCの内訳は、手術の際は1200CCで残りが800CCです。残りと言うのは、縫い合わせの出来ない細い血管(毛細血管)の多い肺は、手術後も日間位出血を続けます(肺から直接パイプで外部に出す)。血液を補充する為、保存血液800CCを輸血した訳です。総輸血量2000CCは当時の肺手術としては、特に多い量ではありませんが一般の外科手術と比較すれば、大量の輸血と言う事になります。しかし問題の多い売血を2000CCの大量輸血を行った訳であります。売血の輸血による感染が大多数を占めるC型肝炎、その発生源はまず肺切除術の際の輸血と考えられる訳であります。

➁ 肺切除後1ヶ月少し経過した頃黄疸(血清肝炎)になりました。数日吐き気と怠さが続き、吐き気の方はもっと厳しいのを経験ありますが怠さの方は以前以後を問わず経験した事の無いものでした。偶然血沈検査の結果、血沈を取った後通常は試験管内の血液上部が白っぽくなりますが、この時は真黄色で黄疸とわかり、それから2~3週間位黄疸の散りようが行われ、治ったとおもっていました。(しかし30年後になって治ったのではない事が分かるのですが)いずれにしろ血清肝炎にかかったのは間違い有りません。それも何型かはともかく輸血直後でありウィルス性である事も間違いの無い事実であります。

➂ 1990年(平成2年)12月横浜市立市民病院消化器内科

 で検査の結果慢性C型肝炎と診断されました。

「結論」まずC型肝炎ウィルスは一旦キャリアになると、自然消滅する事はありません。次にC型肝炎ウィルスの治療薬(ウィルスを死滅させる可能性のある)はインターフェロンしかなく、治療薬としては未だ12、3年しか経っておりません。➁➂の事から、1990年(平成2年)12月横浜市立市民病院消化器内科で検査の結果慢性C型肝炎と診断されたと言う事は、翻って➁の血清肝炎はC型肝炎ウィルスであったと言う事になります。要約すると広尾病院の肺切除術の際、大量の輸血(売血)を行った結果、1ヶ月後に急性C型肝炎を発症し、それから2~3週間後に急性から慢性に移行し慢性C型肝炎となり、1990年横浜市立市民病院で慢性C型肝炎が見つかったのであります。

2(2)病院歴<不必要との筆者の判断により省略>

証拠方法

 甲弟2号証信州大学医学部内内科清澤研道教授の話「講談社刊大安心健康の医学大事典二訂版498P赤傍線線部分

 甲弟3号証広尾病院の手紙、依頼状、

 甲弟4号証市民病院の手書きメモ(領収書付)。説明書

 甲弟5号証甲弟6号証(作者の判断により省略)

添付書類

 準備書面1副本                    1通

 甲弟2号証~甲6弟号証の写し            各1通



          

第三回口頭弁論 平成20年1月23日634号法廷 

第1準備書面

     平成20年1月23日

被告指定代理人23名

<プライバシー保護の為、氏名削除>

 被告は、本準備書面において、原告の訴状及び平成19年10月30日付け原告準備書面1(以下「原告準備書面1」という)について、必要な範囲で認否し、原告の主張に対し反論する。

弟1 原告の主張に対する認否

 1 訴状「請求の原因」について不知ないし争う

 2 原告準備書面1について

 (1)1(1)について争う。

(2)1(2)について不知ないし争う

(3)2(1)及び(2)について不知

弟2 被告の主張

 1 原告が昭和35年2月に輸血によりC型肝炎ウィルスに感染した事実が認められないこと

  本件事案は、昭和35年2月に輸血によってC型肝炎ウィルスに感染したと主張する原告が、当該輸血にかんする昭和34年前後の厚生大臣(当時。以下同じ。)の権限不行使の違法を主張して、国家賠償法1条1項に基づき、C型肝炎ウィルスに感染したことによる損害の倍しようを求める事案である。

   しかしながら、そもそも、原告がC型肝炎ウィルスに感染したと主張する時期及び感染経路については、これを裏付ける知りようが全く提出されておらず、原告が昭和35年(1960年)2月に輸血によってC型肝炎ウィルスに感染した事実の立証は全くされていない。したがって、その余の点について検討するまでもなく、原告の請求に理由がないことは明らかである。

 2 原告が受けたと主張する「輸血」にかんする厚生大臣の法令上の権限が不明であること 

   原告は、「1959年前後、国が保存血液で問題の多い売欠から献血への転換を全く取らなかった事が後に大量の慢性C型肝炎患者を作り、慢性C型肝炎は肝癌へと進行しております。」

  (原告準備書面1の1(1)・1ページ)と主張し、さらに、「取るべき道は一つ、原因である売血に変わる方法、献血でありそれも緊急を要した訳であります。如何なる困難が有ろうと売血から献血への転換を劇的なまでに迅速に行うべき状況で有ったにも関わらず、それをしなかった当時(1958.11~1960.2)の監督官庁である厚生省のトップである厚生大 臣こそが沢山の肝癌の予備軍とも言える、私もその一人である慢性C型肝炎患者を作ったのであります。」と主張している(同1(2)・2ページ)。したがって、原告は、厚生大臣が売血から献血への転換をとらなかったという不作為に、原告が受けた「輸血」に関する権限不行使の違法があると主張する様である。

   しかし、仮に、原告が昭和35年2月に「輸血」を受けた事実があるとしても、その「輸血」の内容は全く不明であって、その「輸血」が、血液製剤によるものであるのか、枕元輸血ないし生血輸血(乙1号証47ページ)や、医療機関における自家用保存血液(同号証52ページ)によるものであるのか等は不明である。

  これでは、当該「輸血」につき、厚生大臣の、当時の如何なる法令上の、如何なる権限の不行使を問題にすればよいかが不明であって、その権限自体を特定することができないから、原告の請求は、その主張自体において失当なものといわざるを得ない。

 3 厚生大臣の不作為に係わる職務上の法的義務の内容及び発生根拠が不明であること

   さらに、国家賠償法1条1項にいう「違法」とは、公務員が個別の国民に対して負う職務上の法的義務違背をいうのであるから(最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087ページ)、原告主張の厚生大臣の不作為が国家賠償法上違法と評価されるためには、その前提として、厚生大臣に、職務上の法的義務としての一定の具体的な作為義務が存在する必要がある。

   しかしながら、原告の主張によっては、厚生大臣が売血から献血へ転換するために、具体的にいかなる作為をなすべき義務を負っているのか、その内容が特定されていないばかりでなく、その様な作為義務が発生する法的根拠も全く不明であるから、  原告の主張は、この点においても主張自体失当なものというほかない。

4 厚生大臣の措置について違法と評価される事情がないこと

   以上のとおり、原告の請求は、厚生大臣の権限不行使の適否を検討するまでもなく失当であり、却下を免れないものであるが、原告が主張する「当時の国の献血へのそうした無策行動」(原告準備書面1の1(1)・1ページ)といった事情も、全く存在していない。

   すなわち、日々発生する多くの重症患者に投与するための大量の輸血用血液を全て献血血液に切り替えるというようなことは、もともと厚生大臣の一権限の行使によって一朝一夕に実現できるようなものではない。我が国の献血制度等の歴史及び、これまで献血推進のため厚生大臣が採ってきた対策などの概要は、乙弟1号証「血液事業のあゆみ」(抜粋)記載のとおりである。これによれば、我が国では、日本赤十字社(以下「日赤」という。)が、昭和27年に、直轄の東京血液銀行(日赤中央血液センターの前身)を開設し、血液提供者に対して輸血が必要なときの血液還元を保証する預血・返血に献血を加味した血液事業を始めた。しかし地縁血縁の有無を問わず不特定者のために自らの血液を提供する「ボランティア精神」という献血制度の趣旨はほとんどの国民に理解されず、また、国民生活の貧困、粗悪な栄養状態などの社会的背景もあって、日赤の努力にもかかわらず、献血者数及び献血量は微々たるものに止まった。これに対し、民間血液銀行は、血液を提供することによって現金を入手することを目的とした失業者などを集めることができたため、その血液確保量が短期間に増加した。こうした状況を受けて、国、地方公共団体及び日赤の三者が、そのときどきの状況を踏まえ、一体となって献血の推進に努めた結果、献血血液の割合が次第に高められていき、昭和49年(1974年)になって、一応輸血用血液がボランティアによる献血によって賄われるに至ったのである。

   原告が主張する昭和34年前後について見ると、昭和31年に、血液の利用の適正を期するとともに、血液製剤の製造等に伴う採血によって生じる保険衛生上の危害を防止し、被採血者の健康保護を図ることを目的とした採血及び供血あっせん業取締法(昭和31年法律弟160号)が施行され、採血業者に対し、被採血者の健康診断を義務付けるとともに採血が健康上有害であるとされる者からの採血が禁止された(同法13条2項)。そして、血液銀行・血液製剤の知識の周知普及をはかるための諸活動や赤十字愛の献血運動など、上記三者による、様様な分野での、様様な推進努力が繰り広げられていた。しかし、このような法規制や厚生省の指導等にもかかわらず、固定化した売血者からの採血基準を無視した過度の採血が行われがちとなるという状況にあったのである。(乙弟1号証54ないし57ページ)

このような状況の下で、昭和34年前後に、原告が主張するように輸血用血液を献血血液によって確保することを「劇的なまでに迅速に行う」こと(原告準備書面1の1(2)・2ページ)はとうてい不可能であったというほかない。また、原告のいう「当時の国の献血へのそうした無策行動」(原告準備書面1の1(1)・1ページ)という事実はなく、「当時の厚生大臣の売血から献血への転換を取らなかった責任」(同1(2)・1ページ)を認めるべき事情はない。

弟3 結論

   以上のとおり、原告の主張は理由がないことが明らかでアルから、速やかに弁論を集結の上、原告の請求を棄却していただきたい。

証拠説明書

  平成20年1月23日

被告指定代理人23名<プライバシー保護の為、氏名削除>

乙弟1号証 血液事業のあゆみ日本赤十字社H3.8.31作成

      我が国の献血制度などの歴史及び献血推進のための等



準備書面2

平成20年1月23日

原告 小野口英男

被告第1準備書面への回答(回答は順不動、全て「」内)

1.やるべき事をやらなかった事実、売血の結果大量の輸血後肝炎患者の発生(2・2への回答、失笑もの、入院当時無いものだらけ・枕元輸血は当時の前・血液製剤は後・医療機関における自家用保存血液は意味不明)

 「被告は2・2において次の様に主張している。“しかし、仮に、原告が昭和35年2月輸血を受けた事実があるとしても、その輸血の内容は待って九不明であって、その輸血が血液製剤によるものであるか、枕元輸血ないし生血輸血(乙弟1号証47ページ参照)や、医療機関における自家用保存血液(同号証52ページ参照)によるものであるのかなどは不明である。

 これでは、当然輸血につき、厚生大臣の、当時のいかなる法令上、如何なる権限の不行使を問題にすればよいか不明であって、その権限自体を特定することができないから、原告の請求は、その主張自体において失当なものといわざるを得ない。“と云うものであります。被告の云う医療機関における自家用保存血液は意味がよく分かりません。何故奈良保存血液の製造は医療機関の民間・公立、大・小に関係なく、血液銀行の認可を受けた処だけが許され出来るからです。その殆どに末尾に血液銀行の文字があります。

 枕元輸血は売血時代の前に行われていた輸血であります。血液製剤は保存血液を含めた血液医薬品の総称の場合と、血友病など特定のものに使用するものの場合と有りますが、後者の場合は原告が入院当時は未だ一般には殆ど行われていないものであります。通常手術の際の輸血は、出血で不足した血液を保存血液の血液で補うものですが、当時保存血液はその98%弱が売血で、原告も当然繰り返し主張している様に輸血した血液は売血の保存血液でした。原告は繰り返し、輸血したのは保存血液、あるいは売血と主張しているにも関わらず、売血時代に無い様な枕元輸血や、後者の場合未だ殆ど行われていない血液製剤、また意味不明なものを持って来て、“その輸血の内容は全く不明であって“とはね開いた口が塞がらないとは正にこの事であります。意図的に原告を貶めそうとするものであります。被告の主張に5文字変えたものをそっくりお返しします。被告の主張は、その主張自体において

 失笑なものといわざるを得ない。これが弟2・2全体に対する原告の回答であります。」

 扱うものが人間の血液という本来商売の道具にすべきものではないものであり、当然企業倫理が存在しとてしかるべきものであります。民間の企業である以上或程度利益を優先するのは当然としても、民間の血液銀行は利益を優先する余り形振り構わず採血する様になり、無軌道な商売の道具として、血液が売買されて行くようになったのであります。

 劣悪な環境下で生まれた売血は、当然劣悪な輸血血液用として患者に提供され、提供された患者は黄疸の輸血後肝炎にさせられた訳であります。輸血血液量が急増する昭和30年代に入ると、売結者の急増に歩調を合わせる様に輸血後肝炎患者は増大するので有ります。病気を治す目的で手術した患者は輸血後1ヶ月程で又別の病気になる。其れも大量の病人であります。

 尤も売血制度と云うのは、国の方針に基づいて行われた事であります。国の方針に基づいて行われた以上、患者に提供された血液が安全かどうか当然把握する義務があったはずであります。然るに病院では輸血後肝炎患者が大量に発生するという異常事態が延々と続いたのであります。

 原告が入院中の1959年(昭和34年)当時、売血が同様の状況にあり、その為売血制度もスタートから10年、大量の輸血後肝炎患者が発生した昭和30年代も5年目の節目を考えれば、1959年当時は時間的最後の機会であったにも関わらずに、厚生大臣は売血から献血への転換措置を執らなかったのであります。この様な厚生大臣の権限不行使は国家賠償法1条1項に云う“違法“に当たるものであります。

2.やるべき事をやれた事実、(2・3への回答、厚生大臣の最大の権限の行使である閣議決定への発議と提案)

  1964年(昭和39年)3月、本人が日本生まれの日本育ち、しかも夫人が日本人と云う弟の親日家で学者のライシャワー米国駐日大使が大使館前で精神病患者に右大腿部を切られるという、事件がおこりました。幸い命は取り止めますが、その際の輸血が原因で血清肝炎になり、輸血血液用の常習売血者から採取された血液は過度な売血の為、赤血球が少なく血液比重が不足していた為、血漿の黄色い部分が特に目立ち黄色く見えた事と黄疸の血が黄色い事から“黄色い血“という言葉で、過度の採血から貧血に

 陥り死亡していく売血者と、その血液による輸血で血清肝炎にかかる実体が、国内外を問わず世界的に報道される結果となったのであります。

 「この事件がきっかけとなって、提供者のモラルが期待出来る献血制度へと血液行政は大きく舵を切る事になりました。ライシャワー事件から5ヶ月後に政府は血液事業正常化の為、閣議である重要な決定を行います。この政府決定により急速に売血から献血への転換が行われますが、その時の厚生大臣の行動から厚生大臣の権限を読み取る事が出来ます。1964年8月21日政府は血液事業正常化の為、次の様な閣議決定を行いました。

       献血の推進について

 政府は、血液事業の現状にかんがみ、可及的速やかに保存血液を献血により確保する体制を確立ため、➀国及び地方公共団体による献血思想の普及と➁献血の組織化を図るとともに、➂日本赤十字社または地方公共団体による献血受け入れ体制の整備を推進するものとする(数字は便宜上つけたもの)➀➁➂の全てにおいて国の中核となったのは、血液事業の監督官庁である厚生省であります。

 そして厚生大臣として尤も重要な権限の行使は、閣議決定への発議提案であります。厚生省トップとして唯一閣議に出席する事が出来、(お膳立ては部下がやるにしても)発議提案する事こそ厚生大臣の最大の権限の行使であります。何故ならばこの閣議決定により、政府が国を挙げて献血体制を確立すると言う強い決意の国民に対する表明となると同時に、国、地方公共団体及び日本赤十字社の三者が一体となって血液事業を進める事が出来るからであります。事実閣議決定以後、献血は急速且つ確実に推進され、献血による血液確保体制が確立される事となります。閣議決定から2年半後に売血から献血に移行し、5年後の1969年には芸血は終息しています。」<一部に訂正後の文言>

3.大量の輸血後肝炎患者じつはウィルス性、(弟2・4への回答、厚生大臣一権限行使で一朝一夕に実現不可とは、笑止千万、国の血液行政をつかさどる厚生省)<一部に訂正後の文言>

 「被告は弟2・4において次の様に主張しています。“すなわち、日々発生する多くの重症患者に投与するための大量の輸血用血液を全て献血血液に切り替えるというようなことは、もともと厚生大臣の一権限の行使によって一朝一夕に実現出来るようなものではない。“というものであります。しかしながらライシャワー事件後僅か5ヶ月後には閣議決定に持ち込んでおります。また厚生労働省が作成した、の日本における輸血後肝炎発症率の推移(甲弟7号証)、をみると売血から献血への移行期間は日赤が公表している5年より遙かに短く、2年半位になっているのであります。

 腰の重い鈍重厚生大臣がライシャワー事件後僅か5ヶ月後に、閣議決定に持ち込んでいるのも驚きなら、その後2年半位で売血から献血へ移行いるのは更なる驚きであります。この事は“国の(売血から)献血への無策行動“を大転換し“如何なる困難が有ろうと売血から献血への転換を劇的なまでに迅速に行った“事の証であります。如何に厚生大臣がおおきな権限を持ちながら、長期間それを行使して来なかったかの証でもあります。更に驚く事に献血移行期間後の輸血後肝炎の発症率(甲弟7号証)は売血時代の50%から16%に激減しているのであります。

 故人には大変申し訳ありませんがあえて言わせて貰えれば、ライシャワー事件がせめて5~6年早く起きていたらと言う思いはあます。そうすれば員に沢山の輸血後肝炎患者(原告も含め)が発生しなくて済んだか、の思いであります。厚生大臣はやるべき事をやれたのに、やらなかった事が重大な結果(悲劇)を招いたのであります。大量の輸血後肝炎患者、実は大部分C型ウィルス肝炎患者を作り、後に慢性化したC型肝炎は肝癌へと進行し、肝癌患者の70%が私もその一人であります慢性C型肝炎患者からと言われております。」

(弟2・1への回答)

「準備書面1 2(1)でも主張しました様に、C型肝炎と言う病気はウィルスの抗体が20年前にアメリカで発見された未だ新しい病気です。しかし原告が肺切除をし、輸血を行ったのは47年前であります。カルテは勿論、血液感染の為100%解明可能な手術直後の血液など残っている筈はないのです。しかし100%ではないものの高い確率で証明する事は可能です。

 まず消化器の専門医に準備書面1 2(2)病院歴を見せれば非常に高い確率で慢性C型肝炎の発症原因が肺切除の際の輸血にあると指摘すると思います。原告肺切除の際の大量輸血、続く1ヶ月後の輸血後肝炎、輸血後肝炎はその後殆どがウィルス性である事が分かっております。ウィルスにはA、B、C、D、E、G型とありますがその75%を占める難物のC型肝炎ウィルスだけは一旦キャリア(感染者)になると絶対に自然消滅する事は有りません。原告が輸血後肝炎から30年後に(慢性)C型肝炎がみつかったと言う事は輸血後肝のウィルスはC型であったと言う事になります。要するに1960年の肺切除の際の大量輸血により1ヶ月後に急性C型肝炎を発症した後、慢性化し30年後に慢性C型肝炎が見つかったと言う事であります。

結び

 被告は早期の弁論終結と判決を望んでいる様ですが、原告もその事に異論は降りません。2度とこの様な事を起こさせない為に、裁判長の厳正なる判決をお願い致します。

添付書類

 準備書面2副本                    1通

 証拠証明書                      1通

 甲弟7号証(写し)                  1通

証拠証明書

平成20年1月23日

原告小野口英男

甲弟7号証 輸血後肝炎発症率2008.1.16 厚生省作成

売血時代1960年を真ん中に前後10年近く発症率50%で原告の主張の正しさを裏付ける事実であり、甲弟2号証をデーターとして補完し、献血の移行期間を表す事実です。


          

第四回口頭弁論 平成20年3月24日516号法廷 

<第四回口頭弁論は原告が平成20年1月27日と平成20年1月29日に提出の準備書面2の修正ですが既に修正後の文言を記載済みの為、筆者の判断により省略。>

裁判長の発言「口頭弁論は本日終了し、平成20年5月28日判決を言い渡します」



弟 223612 号

訴訟代理権消滅通知書

上記の者の下記事件についての訴訟代理権が消滅したことを通知する

平成20年4月1日

法務大臣 鳩山邦夫

9名<プライバシー保護の為、氏名削除>



平成20年5月28日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

平成19弟22608号医療補償請求事件

平成20年3月24日口頭弁論終結

判決

<判決文は原告被告双方の書面と重複する部分が多い為、「主文」と「事実及び理由」の内「弟3 当裁判所の判断」を記載し、他は筆者の判断により省略します。>

主文

 1 原告の主張を棄却する

 2 訴訟費用は原告の負担とする

事実及び理由

弟3 当裁判所の判断

 1 まず、証拠(甲1,4)によると、原告が平成2年12月に横浜市立市民病院において慢性C型肝炎と診断された事が認められる。

 2 そして、一般に、C型肝炎は血液がおもな感染経路とされているところ、原告は、昭和35年2月に都立広尾病院において左肺上葉摘出手術を受けた際に輸血を受け、その1か月後に血清肝炎を疾患したことから、その輸血用血液が原告のC型肝炎の感染経路であることは明らかである旨主張するが、そもそも、原告が昭和35年2月に上記の手術を受けたこと、その際に輸血を受けたことその手術の、その約1か月後に血清肝炎を疾患したことの各事実について、これを認めるに足りる的確な証拠は見当たらない。さらに、原告は、上記の輸血用血液が売血血液であった旨主張するが、この点を認めるに足りる的確な証拠もない。

さらに、証拠(甲2、乙1)によれば、上記当時は、注射器も現在のように使い捨てではなく、医療器具の消毒も不十分であって、それらの事情もC型肝炎ウィルス感染の流行の原因となったことが指摘されていること、また、上記当時、輸血用血液の大半は売血血液であったものの、預血や献血など、それ以外の輸血用血液が絶無であったわけではないことなどの事情も認められるのであって、これを総合すれば、原告が感染したC型肝炎については、証拠上、その感染経路を特定することができなしいといわざるを得ず、ひいては、原告が感染したC型肝炎について、どのような方策を採ればその感染を防ぐことができたのか、さらには、その方策が採られなかったことについて、上記当時の厚生大臣においていかなる法的義務の懈怠があったのかを法的に検討することもできないというほかない。3521(21CCC315)

 3 以上のとおりであるから、その余の点を判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がないので、これを棄却する。

   よって、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事弟15部

裁判官<プライバシー保護の為、氏名削除>

これは正本<以下筆者の判断により省略>

                     <了>


    <控訴費用の負担と体力の負担から原告は控訴断念し判決は確定しました(筆者)>


    

 


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