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9/22

6歳-2

このメンバー全員で勉強するときは、神学や歴史、地理、法律がメイン。

語学とかはねぇ……、ガブリエラの無双がすごすぎて。

誰も一緒に勉強とかできないんだよね。


だから語学は、ガブリエラと私は別に勉強している。

私もガブリエラについていけてないんだけど、まぁ、2人だけなら先生も面倒みれなくないって感じ。

数学関係と王族特有のお勉強も、2人だけだけど。

こっちは、なんとかついていけているはず。

半歩後ろを走ってる感じはするけど、そこらへんは前世もちのチートでなんとかついていってる。


ガブリエラにはぜんぜんかなわないんだけどね。

ほんと、どうなってるんだ、この妹。

自分が前世もちだから、ガブリエラもそうじゃないかと疑ったこともあったけど、どうも違うっぽいし。


まぁ、前世でも、天才っていわれる人はいた。

そういう人たちが全員前世もちってわけはないだろうし、生まれながらに能力が違うってことなんだろうな。

最近では、めっきり対抗する気もなくしています。


単に博覧強記ってだけじゃなく、理解して、応用してってことも軽々してくるんだもん。

なんでそんなこと思いつくの、みたいなことを。


「キスパの第7代王タコニは、自国の領主の権をそぐために、領主たちは3年に1度、1年間王都で暮らすよう強制しました。キスパは大きな国でしたから、遠方の領主たちは数か月もかけて王都への旅路についたそうです。その上、一年を王都で暮らさざるを得ず。旅路で病を得るもの、盗賊に殺されるもの、王都にいるうちに自領を乗っ取られるもの、反乱がおきるもの、様々な問題が起こったそうです」


オリビア先生の歴史の授業を聞きながら、参勤交代みたいだなと思う。

歴史って不思議で、異世界なのに同じようなことが起こっていたり、同じような政策がうちだされたりしていることがわりとあるんだよね。

不思議。


「途中で暗殺される人もいそうだよな」


リチャードが黄金の目を輝かせて、物騒なことを言う。


「でも、王都と領地を行き来するなんて、ちょっと非日常で憧れます。きっとたくさんの出会いがあって、恋も生まれたはずですわ……」


クラリスは、うっとりと溜息をつく。

この二人はおしゃべりが多いけれど、歴史上のお話もまるで自分たちの知人の話のように見ているのが面白いなぁと、いつも思う。


「私がキスパの領主だったら、旅の途中で寝込んでしまいそうです」


マリィも、しみじみという。


「領主の伴侶も大変ですよね。王都の家と、領地の家、ふたつの家人をまとめなくてはいけないんだし。旅の途中のような非日常では、疲れもあってもめごとも多いでしょうし」


リアンが思案気にいうと、リチャードが笑った。


「さすが、リアン。目のつけどころが違うな」


ひやりとした。

リチャードは、のんきに笑っている。

他意はなさそう。


でも、リアンは……。

ちらりと横目でみても、顔色は変わっていない。


だから、これは周囲の顔色を読むのが習い性になっている元日本人の気にしすぎかもしれないけど。


「頭のいい人って、すごいなぁって思いますわ。いろいろな視点から物事を見られるんですもの。本当に、さすがリアンですわ」


無邪気を装って、胸の前で手を合わせて、にっこりとリアンに笑いかける。

リアンは私の視線を受けて、一瞬真顔になって、すぐに緊張がほどけたような優しい笑顔をうかべてくれた。


「ありがとうございます、アンナマリア様」


リチャードが面白くなさそうに唇をとがらせたけど、無視無視。


このメンバーの中で、リアンと、……たぶん私だけが跡取りではない。

私とガブリエラは、どちらが次期女王となるか明言はされていないけれど、おおかたの予想では、圧倒的実力をもつガブリエラが次期女王だ。

私も、それに異論はない。

ガブリエラと対抗しようなんて、とっくにあきらめたもの……。


辛いとか、悲しいとか、そういう気持ちもある。

でもお父様もお母さまも、私にも優しくて、ガブリエラと同じように愛してくださる。

城のみんなも、「出来の悪い方」な私にも優しい。

なにより、前世で弟と差別されていたのは性差という私にはなんの価値もないものだったけど、ガブリエラとは実力の差という納得のいく区別のされ方だ。

泣きたくなる気持ちを飲み込むのは、そう難しくない。


だけど、リアンは、前世の私と同じく性差による違いだけで跡取りという地位を得られない。

マリィは、クラウム家独特の血脈能力「鑑定」を受け継いでいないのだ。

けれど、本人に血脈能力が開花しなくても、その子には受け継がれる可能性はある。

だから、クラウム家の当主はマリィと内定している。

リアンとマリィ、単純に本人の能力を比べるなら、リアンのほうがずっと努力しているし、優秀なのに。


対して、リチャードの生まれたコサック家は、血脈能力をもともと受け継がない。

単純な身体能力と指揮能力で大臣を歴任するまでにのしあがってきた家だ。

独自の教育カリキュラムなんかはあるみたいだけど、異能を必要としない家なので、性別で跡取りが決まることはない。

むしろ武官だから、歴代当主のほとんどが男だ。

おそらく、リチャードも跡取りとなるだろう。


クラリスも、ひとり娘だから、よほどのないことがない限り、跡取りと確定しているし。


貴族家の「跡取り」ではなく、「跡取りの伴侶」となる可能性が高いのは、私とリアンだけ。

だからさっきのリアンの発言は、自分の立場になぞらえて出た発言かもしれない。

それでも、人にそれを指摘されるのは、辛い。

……私は、そう考えてしまうから。


フォローしたつもり。

だけど、これって余計なことだったかな?

リアンが「跡取りの伴侶」って立場に満足していたら、余計なお世話だよね?

だから一瞬、真顔だった?

その後の笑顔も、私を気遣ってくれただけ?


人の顔色を読むのは得意だけど、コミュ症だから自信はない。

ぐるぐるする気持ちをかかえて、リアンを見る。

目があうと、リアンは、またにこっと笑ってくれた。




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