あの時の消しゴム(4月16日)
日比谷花壇によれば、ライラック。
花言葉は『淡い恋心』です。
https://www.hibiyakadan.com/hanakotoba/m04.html
たった一度、消しゴムを拾ってもらっただけ。
それだけで好きになってしまったと言えば、嘘に聞こえるかな?
それでも、あの時確かにドキッとしたし、何度も何度も思い出す。
いつも無口で無表情な、白井くんが見せてくれた、あの時の微笑みが。
『落としたよ』の一言が、私の頬を熱くするんだ。
私、橋戸紫が白井くんと出会ったのは、今年度の初め頃だった。
高2になってクラス替えがあり、隣の席になった事で存在を知った。
もしかしたら、どこかで見た事が有ったのかも知れないけれど、特に記憶にはなくて。
自己紹介もしたけれど、特に意識するような事は無かったかな。
結構皆、名前を言って終わり、みたいなところも有ったし。
隣の席と言っても、特に話すような事は無くて。
休み時間とかは友達と話したり、じゃれあったりするばかりだった。
放課後は放課後で、直ぐに部活に行ってたしね。
だから、彼の事はよく知らなくて、しばらく経ってからも『言われてみれば、無口だし無表情だよね』という感じだったと思う。
友達に彼氏が出来たという話を聞いて、私も彼氏が欲しいと思ったりもしたけれど、白井くんの事は頭には浮かばなかった。
だけどあの日、赤点とった分の追試で、放課後に教室に残ってて。
先生もどこかに行っちゃって、室内には私と、図書室の本を読んでる白井くんだけになってた。
この英単語なんだったっけとか、ウンウンうなりながら解いていて、先生もいないし辞書見ちゃおっか、そう思った時に。
ふと手が当たって、消しゴムが床に落ちて、白井くんの方へとはねていった。
あちゃぁ、そう思った時、彼は消しゴムを拾ってくれて、こう言った。
「落としたよ」
その時の彼の微笑みが、声色が、とても優しかったものだから。
思わず胸がときめいて、頬が熱くなった。
そんな自分にも動揺して、お礼も『あ、ありがとう』と少しどもってしまって。
受け取る時に触れた指先の感触が、ますます私をドキドキさせたんだ。
……うん。
自分でも、『ちょろいなぁ、私』って思うけどさ。
あの時の消しゴムを見る度に、あの時の微笑みを、言葉を、指先の感触を、耳の熱さを思い出すから。
一週間くらい経った頃に、別の可愛い消しゴムに買い替えた。ウサギちゃんだから、ちょっと使うのが勿体ない気もするけどね。
それで、あの消しゴムは自分の部屋の引き出しに、大事にしまってる。私に取っては思い出の消しゴムだから、すり減って無くなっていくのが嫌だったから。
ねぇ、白井くん。
あの時の微笑みと一言に、一目ぼれしたと言ったら信じてくれますか?
告白したら、良いよって言ってくれますか?
貴方はいつも、感情を表に出さないし、殆ど喋らないけど。
だからこそ、あの時の貴方の反応は……『そういう事』だって、うぬぼれても良いですか?
あと少しの、勇気が出せなくて。
だからもう少しだけ、この想いは胸に秘めておこうかな。
いつか告白できた時……良いよって言ってもらえたら、良いなぁ。
Wikipediaとか見て、ふと浮かんだ話にしました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF




