【百合桜】第16話『これからも、よろしくね』(4月7日)
【島崎 桜】
二人で生きると決めた。
そう告げると、父を睨み付ける。千歳が、その姿で私の鎖を解き放ってくれたから。
もう、私は大丈夫。そう思った。
だけど、どうやって父を説き伏せようかと考えた、まさにその時、父は笑いながらこう言った。
「良い啖呵を切ったな、二人とも。ならば、これ以上俺がとやかく言う必要は有るまい」
……は?
いえ、認めてくれるなら、それに越した事は無いけれど、どういう事なのかしら?
気付けば、先程までの威圧感もなくなっていて、戸惑うのだけど。
「あの~、もしかして」
千歳が右手を軽く上げて、父に聞く。
「さっきまでの、もしかして演技でした?」
「おうよ」
「え、えぇぇぇっ!?」
「うるさいぞ、桜。今どき、娘に縁談を強いる親が許される訳がないだろうが」
「いや、あの、あれが演技?」
驚いた。
あれほどの殺気を放っていたのに、だから逃げたっていうのに、それが演技!?
「あなた、上手くいって良かったですね」
「全くだ。好き合ってるのが明白なのに、いつまでもウジウジ悩んでるし、果てには大事な大会にまで影響が出る始末。荒療治だったが、まぁこれなら問題はなかろう」
両親の会話が、頭に入ってこない。いや、理解したくないのだけど。
だけど千歳は、突っ込んだ質問をする。
「あの、その、周りから見たらバレバレだったんですか? 私たちが、お互いに片想いしてたって」
「あぁ、その通りだ。というかだな、桜川の親父さんと、時々相談してたんだ。見守るか後押しするか、荒療治するかってな」
「……あぅ」
「ちなみに、桜川の親父さんも、今回のアレコレは知ってるぞ。じゃなきゃ、流石にここまではしない。というか住所も、GPSじゃなくて親父さんから聞いたモンだ」
「……なんて事」
私たちは、お互いの親の手のひらの上だったという事ね。
……本当に、敵わないわ。
【桜川 千歳】
「もう、パパのバカ!」
そう言って電話を切る。ニヤニヤするパパの顔が浮かぶようだった。
そう、おじさん達が帰った後に電話したら、本当に協力してたのだ。悔しいやら、恥ずかしいやら。
……まぁ、正式に同棲が認められたのは、嬉しいんだけども。
「なんかもう、無茶苦茶な気がするわね」
「気がする、じゃなくて無茶苦茶だよ」
そういって、同時にため息をついた。
だけどまぁ、気を取り直して。
「これからも、よろしくね、しまちゃん」
「私こそ、よろしく、千歳」
そう言って笑いあうと、そっとキスをした。
これからの期待と希望と、決意を込めて。
【百合桜編 終わり】
短編集自体は続きます。




