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【百合桜】第14話『守りたいのに』(4月7日)

桜川(さくらがわ) 千歳(ちとせ)

 なんで、ここが分かったのか、だとか。

 なんで、一度大会で負けただけで、『嫁げ』という話になるのかだとか。

 島崎のおじさんの話についていけなかったけど。

 それでも、一つだけ分かる事が有った。


 しまちゃんの心は、おじさんに縛られてる。

 家にいたままでも、『嫌だ』と言い続ければ、今の時代、結婚を強要なんて出来ないし。

 身の危険を感じて逃げてきたとしても、もっと強い姿勢で臨んでも大丈夫なのに。

 それでも、強く出れない。心を縛られているから。


 今だってそうだ。

 おじさんは、しまちゃんの心を折るような言い回しをしている。

 厳つい顔も大きな身体も、放つ気配だって恐ろしい。


 だけど。

 だけど、それでも、黙っている事なんて出来なかった。


「いい加減にしてください!!」


 しまちゃんがビクッと震えたのを見て、私は反射的に叫んでいた。




「そもそも、おじさんが悪いんじゃないですか! 今の時代に結婚を強要だなんて、許されるとでも思ってるんですか!? そんなの人権侵害だし、性差別ですよ。何が『力を正しく使え』ですか、おじさんこそ使い方を間違ってるじゃないですか!!」


 一気に言いきると、おじさんを睨み付ける。

 しまちゃんは私だけのものだし、私はしまちゃんだけのもの。そう思うし、それは確かめあったこと。

 他の誰にも渡すつもりはなかった。


「それは『守られる側』の論理だよ。日本は世界有数の治安が良い国だが、どれだけの凶悪犯罪が起きていると思う。どれだけの悪党がいると思う。自分の身を、家族の身を、大切な人を守る為には、力が必要だ。騙されない知恵が、奪われない為の知識が、守る為の技がな」

「しまちゃんはまだ高校生ですよ。これからいくらでも――」

「現実には『これから』が無い事が多い。大事な局面で全力を出せず、俺に対しても『抵抗』ではなく『逃走』しか出来なかった。表面を取り繕って、計画的に行動する事も出来なかった。家を出た時、教科書も着替えも、スマホすら置いていったんだぞ。それでは、俺との交渉さえ出来ない」

「そ、それは……」

「『守る側』になれないなら、『守られる側』になるしかない。井内は俺の一番弟子だし、師範代でもある。あいつ程の人間はなかなかいないし、桜の事も可愛がってくれてるからな。だから、あいつなら安心だ」

「本人の意思を無視して、何が『安心』ですか! それにしまちゃんは私の――」


 『恋人だ』、と続けようとした時、おじさんの気配が膨れ上がった。

 それはまるで、猛獣か何かを目の前にしたみたいで。

 ――殺される。

 理由(ワケ)もなく、そんな事を一瞬思った。そんな事はあり得ないのに。


「お前の、なんだ? 桜川千歳。お前が桜を守るとでも言うのか? 守れるとでも思うのか? この俺に、そう誓えるのか?」




 ……守りたいのに。

 しまちゃんを、絶対に渡したくないのに、その重圧で動けなくなった。

 動けば、殺される。あり得ない未来予想が私を縛り付ける。殺気に支配されてしまう。


 島崎厳蔵(げんぞう)。『剣鬼』と呼ばれる人の『本気』が、そこには有った。

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