【百合桜】第13話『VS剣鬼』(4月7日)
【桜川 千歳】
突然だけど、表札は出す人と出さない人、どちらが多いのかなって思う。
私は出す方で、ポストにも名字を書いたシールを貼っていた。
ありふれた名字では無いけれど、珍名字という程でもない。
しまちゃんの親には伝えてないので(実家は別)、まさかいきなり来られるとは思っていなかった。
その日は休日という事も有り、家で仲良く過ごしていた。
買い物も金曜日の夕方に行ってたし、宿題も午前中に済ませていた。
昼食も終わり、日曜日はどうしようか、そんな事を話していた時だった。
~~♪
しまちゃんのスマホが鳴ったかと思うと、直ぐに切れる。そして、家のインターホンが鳴った。
嫌な予感がしつつドアの覗き穴から外を見てみると――。
「――ッ?!」
そこには、しまちゃんの両親の姿が有った。
【島崎 桜】
「どうして、ここが分かったの」
「そのスマホの契約者は俺だぞ? 当然GPS情報くらい分かるさ。アパートが分かれば、後は表札を見れば部屋も分かるし、スマホ鳴らして切れば間違いもない。まぁ……数日間、夜にここから動いてなかったから、念のためだがな」
「……あの書き置きも罠だったって訳ね」
「俺は、ちゃんと『敵』だと書いておいたぞ。油断したな、桜」
玄関まで来られている以上、家に入れない訳にもいかなかった。
だから家に上げた訳だけど、まさか、そんなやり方をしてくるとは思わなかった。
確かに、『待ち伏せ』はしていない……嘘はついていない。
だけど。
「GPSを使うなんて、卑怯じゃないかしら?」
「親が、家出した娘を探すのは、当然だろう? そんな甘えた考えじゃ、守れるものも守れない。自分自身さえな。だから、井内の所に嫁げと言ったんだ」
目の前にいる父は、その後に瞳を細めて言った。
「力を持ち、正しく使え。いつも言っている事だ。大事な大会で、勝てる筈の相手に負けたお前が、心が弱いお前が『誰かを守れる』とでも思っているのか?」
その言葉は、私の心に深く突き刺さる。
――お前は、『守る側』じゃなくて『守られる側』だ――。
家を出た日に掛けられた言葉が、脳裏をよぎった。
難産でした。




