【百合桜】第11話『離さないから』(4月7日)
【桜川 千歳】
衝動のままに告白して、抱きしめた後に。嫌われたかもって怖くなった。
だって、逃げてきたしまちゃんに、襲いかけるみたいな事をしちゃったから……。
だけど抱きしめ返してくれて、押し倒されて。初めてなのに激しいキスまでされた後に、告白された。
嬉しくて、ちょっと恥ずかしいような照れるような。想いが通じるって幸せだと思った。
「じゃ、じゃあ、付き合うって事で良いんだよね?」
「そ、そうね。でも、カミングアウトするかは別だけどね。まだ偏見が無い訳じゃないから」
今の時代でも、LGBTに偏見を持つ人はいる。
多分、しまちゃんのお父さんも、そうなんじゃないかと思う。
縁談を強いようとしたから、しまちゃんは逃げないといけなくなった訳だし。
まだ直視しづらいけど、大事なことだから、ちゃんと向き合って話す。
しまちゃんも、こっちを見て続けた。
「それでこれからなんだけど、しばらくここに居ても良いかしら?」
「もちろん! 一人暮らしだから大丈夫!」
「それじゃ……ふつつかものですが、よろしくお願いします」
「わ、私こそ、ふつつかものですが、よろしくお願いします」
そういって、お辞儀をしあう私たち。
『それ』を意識して言ってくれた事が嬉しくて、私も言えた事も嬉しくて。
私の頭の中はピンク色だったし、多分しまちゃんもそうだったと思う。
「とりあえず、夜は何食べる?」
「今晩は何でも良いわ。今あるもので大丈夫」
「分かった。今度一緒に買い物行こうね」
「えぇ、楽しみにしてるわ」
食べ終わってお風呂とか済ませると、1つのベッドで眠る。
お客さん用の布団なんて無かったし、まぁ、その、そういう雰囲気にもなってたし。
自分でも急展開だとは思うけど、お互いに『欲しい』って気持ちを抑えられなくて、もう抑えるつもりもあまり無くて。
今までの分を爆発させるような、今の不安を塗りつぶすような、そういう夜だった。
終わって、汗とか拭いた後に、手を繋いで眠る。
「絶対、離さないから。誰にもしまちゃんは渡さない」
「私も、千歳を逃がさないわ。貴女以外に、許す事もない。……ありがとう、千歳」
「私こそ。ありがとう、しまちゃん」
おやすみ、と言って目を閉じると、心地良い疲労感が夢の世界へと連れていってくれたのだった。




