【百合桜】第10話『二人の気持ち』(4月7日)
【島崎 桜】
少しの間、沈黙が続いていた。理解が追い付かなかった。
まさか、『そういう好き』だと言ってもらえるなんて、思っていなかったから。
痛い位に抱きしめてくる千歳の頬は赤く染まっていて、私の顔まで熱くなってくる。
全身から伝わってくる体温に、胸の鼓動が高まっていくのが分かった。
だけど、受かれるのはまだ早いわね。
状況は何も解決していないし……想いの強さとか方向性とか、そういうのも有ると思うから。
「『そういう好き』って……例えばキスしたいとか、その、もっと凄い事もしたいって事なのよね?」
期待も有って、こんな聞き方をしてしまう。
想いの形が違ってたらとか、考えていたというのに。
千歳の顔も見れなくて、つい、私からも抱きしめ返す。
温かくて優しくて……ずっと、このままでいたかった。
ちょっと苦しい位の彼女の抱きしめも、嬉しくて仕方がなかった。
「……うん」
少し経って彼女がそう言った時、私は思わず、というか自制出来ずに、押し倒してしまう。
「し、しまちゃ――んんっ!」
我慢出来ずに、唇を奪う。口づけを交わし、そして、舌も。
がっつくようなキスをしてから、言うべき事を言ってなかった事に気付いて。
「私も好きよ。 千歳以外なんて、絶対あり得ないわ。私がこういう事をしたいのは、して欲しいのは貴女だけよ!」
そして、私たちの関係は、大きく変わる事になった。
親友から、恋人へと。