【百合桜】第08話『突然の再会』(4月7日)
【桜川 千歳】
何が起きているのか、私には分からなかったけど。
しまちゃんが私に、助けを求めている事だけは確かで。
だから私は、慌ててドアを開けて、彼女を迎え入れた。
むわっとする彼女の匂いに一瞬ドキッとするけど、今はそんな場合じゃないと意識しないように気を付ける。
「……ねぇ、何があったの?」
「……こうなった以上、千歳にはちゃんと言うわ。だけどその前に、シャワーと着替え、貸してもらえない?」
「分かった。身体冷えるといけないもんね。じゃあ、話はその後で」
それから少しして、風呂場から聞こえるシャワーの音。
普段ならドキドキしちゃうところだけど、今はそんな気持ちは起こらなかった。
なんで、ここ数週間、連絡が取れなかったのだとか。
どうして、走って逃げて来たみたいな様子なのかだとか。
聞きたい事は、色々あった。分からない事だらけだった。
ただ一つ分かるのは、その話を聞く為には、覚悟が必要だという事。
それでも、私に出来る事が有るのなら。
しまちゃんを守りたかったし、力になりたかった。
中学の時に彼女が、しつこい先輩から私を守ってくれたみたいに。
今度は私の番だから。そう呟いて、私は覚悟を決めた。