【百合桜】第03話『偶然の再会』(4月7日)
【桜川 千歳】
それは偶然という名の必然だったのだと思う。
私としまちゃんが出会った事も、今日、再会した事も。
運命だなんて、ロマンチックな事は言わない。
ただ、会うべくして会った、それだけ。
「久しぶり……だね」
「そうね……千歳」
それっきり、お互いに黙り込んでしまう。
だけど、とりあえず。
「外、出よっか」
「えぇ」
そして私たちは、本屋から外に出た。
「最近、どう?」
「あまり変わらないわ。毎日毎日、部活や勉強で忙しくて。入学祝のスマホも、電話するくらいしか使えてないわ」
「そっか」
「千歳の方はどう?」
「普通……かな。しまちゃんが鍛えてくれてたから、授業には何とか付いていけてる。暗記系はやっぱり苦手だけどね」
あぁ、こんな会話をするのも、何日ぶりだろう。
前は、休みの日も電話したりしていたのに。
メールアドレスを交換してるのに、ろくにメールも出来てない。
そんな日々が嫌だった。
「あのさ、やっぱメールも難しいの?」
「まだ入力に慣れてないし……千歳とメールや電話してると、いつまでも話しちゃいそうだから」
「そんなの、時間決めてすれば良いじゃん! 私はさ、話したかったし、会いたかった! 最近のしまちゃんの事だって知りたかったし、私の事だって……。ごめん、しまちゃんが悪い訳じゃないのに」
「私だって、千歳と会いたかったわよ。だけど、部長になった以上は、部を優先しないといけないから……」
「だよ、ね」
どちらかが悪い訳じゃない。なのに、どうしてこうなっちゃうんだろう。
親友であり家族でもある、そんな彼女と絡みたいというのは、当然の欲求の筈なのに。
「ねぇ、千歳。提案が有るのだけど」
「何? 提案って」
「SNSとか言うの、やってみない?」
私は一瞬、彼女が言っている意味を理解できなかった。