【百合桜】第01話『桜川 千歳』(4月7日)
日比谷花壇によれば、サクラ。
花言葉は『高潔』です。
https://www.hibiyakadan.com/hanakotoba/m04.html
今回は、全16話+後日談1話です。
【桜川 千歳】
思えば、しまちゃん――島崎 桜には、いつも守られてきたような気がする。
母は私を産んだ時に亡くなっていたからか、私に取ってしまちゃんは、姉のような母のような、特別な存在だった。
父子家庭である事でいじめられた時には、私の前に立って男子たちからかばってくれた。中学の先輩がしつこく言い寄ってきた時には、剣道の有段者としての立場を使って守ってくれた。高校受験の時も、自分も大変なのに『復習になるから』と教えてくれた。
結局、しまちゃんと同じ高校には行けなかったけど……。今までの事を感謝しているし、最高の親友を得たと思ってる。
「しまちゃん、今頃何してるかなぁ」
ふと、窓の外を眺めると、大きな桜の樹が目に入る。
樹齢は分からないけれど、多分100年以上前から有るんじゃないかな。
そんな素敵な桜の存在も、しまちゃんがいない寂しさを紛らわす事なんてできなかった。
「しまちゃんに会いたい。寂しいよ……」
剣道の道場主の娘であるしまちゃんは、一つ上のランクの高校に進学して、一年生なのに部長を任されていると聞いた。
だから、忙しくて私と中々会えなくなるけど、ごめんね。そう言われた時の、寂しそうな彼女の顔が思い浮かぶ。
会いたい、会いたい、『いつも』みたいに抱きしめたりじゃれあったりしたい。
少し前まで当たり前だったのに、進学先が違うだけでなくなってしまった、日常。
……分かってる。誰も悪くなんてないって事は。
しまちゃんに学校のランクを下げさせるなんて嫌だし、おじさん達だって認めない。
精一杯頑張ったけど、才能の差には勝てなくて。補欠合格は、私のところまでは合格を届けてくれなかった。
だから、これは仕方ないこと、なんだけど。
「むしろ、これで良かったと思うべきなのかもね」
私は、しまちゃんの事が好き。親友として、家族として、恋愛対象として――。
この離別は、この想いで彼女を傷つけない為に、必要な事だったのかも知れない。
そう思ってもみるけれど、やっぱり強がりにさえならなくて。
「彼氏とか出来てたら、嫌だなぁ」
考えたくない事ばかり浮かんでしまって、憂鬱になるのだった。
Wikipediaとか見て、ふと浮かんだ話にしました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%83%A9