第1話 全ての始まり
突然だが天使とはどのような存在なのだろう。
神に仕え、神と人間とを仲介し、人間の守護にあたることもある霊的存在?崇めるべき対象?
そんなことをほざく奴がいたらぶん殴ってやるから俺の前に来い。そして俺と交代しろ。
なぜかって?俺は今、天使に襲われているからだよぉぉぉぉぉぉ。
「天使」ヤツらは急に現れた。
人間を狩り、都市を破壊していく。
なぜそのようなことをするのか、知る者はいない。 いや、そもそもヤツらが天使なのかすら分からない。
対話が成立しないためだ。
白旗をあげても、頭を下げても、こちらがどんなに殊勝な態度で臨んでも関係ない。
ただ無慈悲に人の命を奪っていく。
当然軍隊が出動した。全力で戦った。
負けた。そりゃあもう惨敗した。
銃弾当てても、砲弾当てても、ミサイル当てても、挙げ句の果てには核爆弾で辺り一帯吹き飛ばしても天使には効かなかった。
更に悪い事に向かうの攻撃、飛ばしてくる羽はこっちの防弾チョッキ、セメントの壁、鉄の壁御構い無しに貫通してきやがる。
もうふざけんなと叫びたくなる。
逃げた。イヤ、攻撃が効かない、防御も出来ないような相手をどうしろと?逃げるしかないっしょ、コレ。
だけど向こうは外見だけでも天使。
翼がある。
つまり空を飛ぶ。
空飛ぶ相手に対して逃げ場は少ない。
故に、空からの目が届かない場所、地下に人間は住みついた。
そして今もまだ生活してくる。
人類は考えた。
今のままで良いのか?答えは簡単に出る。
断じて否だ。
逃げ隠れるだけでは、いつかは駆逐される。対抗手段が必要だ。
だがどうする。
核爆弾が効かないとなると今ある兵器では効果が無い。
新しい武器が必要だ。
しかし、誰も既存の兵器よりも高い攻撃力を叩き出せる物を知らない。
いや、あった。一つだけ。可能性があるものが。
天使の羽だ。それは鉄の壁もあっさり貫通するような代物。鋭さは充分だろう。
それを打ち出す。これで天使に通じるかもしれない武器が完成だ。随分と簡単だが。
成功した。「えっ、マジかっ」ってレベルで成功した。
天使の羽は天使に通じる。
やはり「目には目を歯には歯を」だな。
それが公表された時の人々の歓声がやばかった。
どれくらいヤバかったかって言うと地下の街、地下都市の位置が天使らにバレそうになったくらい。
天使の羽の弾は"天弾"、それを打ち出す銃は"天銃"と名付けられて全地下都市市民が申請すれば貰えるようになった。
ただし、天弾は有料だが。(天使の材料を使っているので取るのが難しく、希少であるため)
こうして天使への対抗手段が出来た。
今では"天弾"の素材である天使の羽、もっと言えば翼が欲しいって言う依頼があちこちに貼り出されている。
それは最も危険だがそこそこ良い報酬の仕事として認知されている。
だが人間っていうのは悠長なもので対抗出来るとなると途端に頑張る意欲が無くなるらしい。
だが問題は俺ら、親が死んで身寄りのない子供たちはどうやって生きていくかだ。
今は何処の家でも生活はカツカツであるため、他人の世話など到底無理だ。
故に子供たちは自分達の力だけで生きていく必要がある。
普段は貧民街に住んでいて(それ以外で寝泊りすると金がかかるため)、食費は地上に出て地下にはあまりない植物などを採取するなどして日々をしのいでいる。
だが俺は思った。どうせ地上に出るなら天使狩りの方が良いんじゃないか、と。
こちらを殺すつもりのものに手を出すのだから当然危険度は高くなるだろう。
が、地上は天使が飛び交っているヤツらの領域だ。 結局危険度があまり変わらないならハイリターンの方を狙うべきだろう。そう思い、俺は人を集め天使狩りに乗り出した。
俺立案の天使狩りの参加者は15人。もちろん一枚岩ではない。
大柄で強そうな奴とその取り巻きが7人。
貧民街でよく見かける小悪党っぽい奴らが3人。
最後に俺ともともとつるんでいた奴らギン、カイト、レイア、リナ、そして俺、ジン。この3グループに分けることができる。それぞれをガキ大将グループ、小悪党グループと呼ぼう。
まあ、それぞれのグループがそれぞれの主張がある。
その辺の兼合いもあってグループリーダーを決めて話し合う事になった。
それはいい。それはいいんだが、何故俺がグループリーダーになってんだ?こういうのは目立ちたがり屋のギンで良いと思うんだがな。
俺以外の4人が揃って推薦してきやがった。解せぬ。
そんでもって色々と段取りが決まっていく。それぞれに役割があるんだが、俺が1番多い。「言い出したのはお前だから1番働け」だと。
流石は小悪党、せこい。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
だとしても、だ。これは酷いと思うんだけどなぁぁぁ。
子供が天使と真正面からぶつかって勝てるわけがない。だから作戦を考えた。出来上がったそれを作戦と呼んで良いかは甚だ疑問だが。
作戦内容はこうだ。
俺が囮になって天使を誘い出す。そこを一斉射撃。終了。
一見問題ないように見える。細部を詰めていれば。
だけどこれ、俺に天使と鬼ごっこしろって言っているのと同じだぜ?しかも命懸けで。
さらに一斉射撃で仕留める保証なし。…これを作戦と呼んで良いのだろうか。だいたい内容が10秒以内で説明できる作戦は大方失敗すると俺は個人的に思うんだがなぁぁぁ。
ではなぜ、俺は今、命懸け鬼ごっこをやっているのかというと・・・・集団圧力に負けちまったんだよこんちくしょう。
あいつら俺がどんだけ理屈づめしても「大丈夫だって。」とか「取り敢えずやってみようぜ。」とかしか出てこないんだぜ?
命の危険があることを「取り敢えず」で「やってみ」れるわけないだろ!
それに流されちまう俺も俺だがよぉぉぉぉ。
愚痴りながら俺は近くの廃墟に飛び込んだ。
前述の通り地上は廃墟と化しているため、隠れる場所には事欠かない。
天使が俺を探しに降下してきた。その瞬間、10数人が一斉に姿を現した。もちろん手には天銃を持っている。
「撃てぇぇぇぇぇ。」
合図と同時に全員が引鉄を引いた。放たれた10数発の天弾は5、6発しか当たらなかった。だがビギナーズラックとも言うべきか、その内1発が天使の翼を撃ち抜いた。
天使が落下していく。この状況に混乱しているのか、悲鳴のような声をあげている。
ほれ見ろ。やっぱり仕留めきれなかったじゃないか。
「次の弾!」
俺のその言葉にフリーズしていた奴らが動き出す。
まだ天使はもがいている。
俺は確実に留めをさすため、全員を近くに集めた。そして銃口を向けさせ、そして言う。
「殺れ。」
その言葉にみんながはっとする。どうやらようやく命のやり取りをしていることを自覚したらしい。
誰も言葉を発さない。辺りには天使の悲鳴だけが響きわたる。
「ひ、ひぁぁぁぁぁ!」
小悪党の1人が逃げ出した。命の重さに耐えられなくなったらしい。
それを見た他の奴らは目を見開き、動揺している。俺はため息をついた。
「貸せ。」
俺は近くにいたガキ大将の取り巻きから天銃を奪った。そして銃を構える。
みなが息をのんで見守る中、俺は引鉄を引いた。天使は沈黙した。
天使の翼は工房に、体は研究室にそれぞれ高く売れた。それを見て重かった空気も通常運転になった。喉元過ぎれば熱さを忘れるとはこの事だな。俺はこれから起こるだろうことを想像して思わず毒を吐いてしまうほど憂鬱だってのに。気楽で良いねぇ。
俺が憂慮しているのは今回の儲けが200000フォン(この地下都市のお金の単位)で15では割り切れない数だ。必ず分け前の多い人と少ない人ができてしまう。
小悪党の1人が言った。
「つーかさー、分け方どうする?」
ほら、始まった。お前は逃げ出しただろうが。
「俺らが翼を撃ち抜いたから1番多く取り分をもらうな。」
「いや、ちょっと待て。あれは俺が撃った弾だ。それに1番多く人手を出しているから俺らが1番多くもらう。」
「それはズルいだろ。」
「なんだと?」
・・・・また、人数比が違うことも問題を更に難しくしているようだ。
だが1番の問題は双方が欲を持ち過ぎていることだ。欲を持つのは良い。どんな人でも必ず持っていて、必要な物だからだ。
しかし、欲が強過ぎるのは良くない。今のように。
いつまで経っても終わりそうにないので俺は仕方なく声をかけることにした。
「なあ、ちょっといいか?」
「・・・・何だよ?」
あまり歓迎されてないようだ。(当たり前)
気が重くなるのを無視して話しかける。
「俺らは5人で65000フォンでいい。後はお前らで決めてくれ。」
報酬は200000だ。俺らは3分の1の人数がいるため、3分の1以下を要求すればすぐに通るだろうと思っていた。そう、思っていたのだ。
「は?お前らは俺らの余りだよ。俺らが取り終わるまで待っとけ。」
「そうそう。俺らはお前がどうしてもって言うから付き合ってやったんだ。感謝してそこで待ってろ。」
・・・俺を排除するときだけ息ピッタリなのやめてもらえません?さっきまでいがみ合っていた両グループの矛先がこちらを向く。
ますます気が重くなるか彼らは絶対に見過ごせない言葉を発した。
「俺に付き合ってやった?感謝しろ?・・・そう言ったか?」
欲はここまで人をダメにするのか。
「は?そう言っているだろ‼︎」
俺の仲間の誰かが
「あーあ、切れちゃった。」
とか言っていた気もするが、そんなの関係ない。自己中野郎には思い知らせてやらないと。
「天使を殺すときに逃げたのは誰だっけ?」
「あ、それは・・・。」
小悪党が黙り込む。
「他の奴らも動かなかったよな?命の重さを知って。そして俺にだけその責任を押し付けた。自分達はやりたくないから。それなのに俺らには報酬をわたさない?どんだけわがままなんだ。」
「・・・・」
全員が黙り込む。
お、意外に理解が早いな。なんでだろ?
「じゃあ俺らも"少しは"働いたから、報酬の3分の1くらい貰ってもいいよな?」
"少しは"の部分に盛大に皮肉を込めた。さっきの言葉の後だからどれだけ鈍い人でも気がつくだろう。
「うっ。でも・・・」
「でもじゃない。それともあれか?お前らは俺より働いたとでも?」
「いや、そう言うわけじゃ・・・」
「ならお前らは、自分たちよりたくさん働いている人よりもお金を貰わないと気が済まない給料泥棒か?」
反論される前に一気に畳み掛ける。
「おー、そーかそーか。お前らさ人間としての良識すら知らない恥知らず野郎共ってことか?」
ここで反応したら恥知らず野郎であると決定するため、小悪党とガキ大将は案の定黙りこくってしまった。
「お、もう反論無しか。最後に良識を思い出してくれたようで何より。じゃあ俺らの報酬は持っていくからあとはそっちでゆっくり決めてねー。」
最後にこう言い残しておれは帰路についた。
仲間たちもついてくる。
申し訳なさそうな顔とか、気まずそうな顔を浮かべながらだったが。何かあったのか?
「ちょっと言い過ぎじゃなかったか?」
帰り道、カイトがそんなことを言い出した。
「言い過ぎって何が?」
俺は聞き返した。ボケているのではなく、本当にわからなかったのである。
「いや、さっきのことだろ。」
ギンが言う。レイアとリナも頷いている。どうやら俺以外には通じているらしい。
それにしてもさっきのことか。・・・自己中野郎共に対してだったらやり過ぎとは思わないんだが・・・。故に
「そうか?」
と返しておく。
それを見て皆一斉にため息をつく。
俺だけ仲間はずれみたいだからやめてもらいたいんだが。
「もういいわ。何を言っても無駄でしょうしね。」
レイアが諦めたようにそう言った。心外だ。