2ー2 辞めます(一応、作成途中でもお知らせします)
「あ、いや……」
まさか声をかけられるなんて思っていなかった僕はうまく答えられない。
「えっと、じゃあね」
何も答えない僕に落胆したのか、それだけ言って教室に入ろうとする。
「あ、坂宮さん」
慌てて呼び止めた。背は向けたままだったけれど立ち止まってくれた。
「あの時のごめんは、本当は勝手に避けようとしてのごめんで……なんていうかもう関わらないとかって意味じゃなくて」
坂宮さんがこちらを向いた。
「そうなの?」
目を見開いてぱちくりさせる。そして、近づいてくると僕の前に立った。
「てっきり、もう関わりたくないのほうかと」
なーんだ、と相好を崩した。
思いの外あっけらかんとした態度に今度は僕が目をぱちくりさせた。
「怒ってないの?」
「なんで怒るの? 悲しかったけど。あ、でもウインナーのことは怒ってるよ」
坂宮さんはにやりと笑った。僕は苦笑を返しながらホッとしていた。
「じゃあ早速明日、桐野くんのウインナーもらうから」
「えっあれ僕のせいなの?」
「うん」
もちろんと大きく頷いた。
「だってウインナーに罪はないもん」
「いや僕にもなくない?」
「それとこれとは別だよ」
一緒じゃない? と思ったけど口にはしない。坂宮さんが言ったら、そういうことなのだ。
ウインナーぐらいいいさ。くれてやる。
「で、なんでさっき笑ってたの?」
話しかけるきっかけだけじゃなくて本当に気にしてくれてたんだ。
なんとなく嬉しい。
「あー松島と話しててちょっと油断してたなって」
正直に答えた。だいぶ端折りすぎた。
坂宮さんは今にもはい? って言いそうな顔をした。
「はい?」
というか言った。
「あの、遠田さんにね」
今度はそれだけでなんとなく察してくれたらしい。大きく頷いている。
「優花里ちゃんね〜。ズバッとしてるよね」
なんとなくわかる。松島の怯えは別種のものだろうけど。
「まあ桐野くんが落ち込まなくていいよ。これから仲良くなればさ」
果たしてそんな簡単にいくかな。確かに遠田さんはあんまり話したことないしって言ってたけど、松島の手前って可能性もあるし。
「あっそうだ。桐野くん今から帰る? 一緒に行こ」
「ああ」
「決まりね!」
「え?」
考え事に集中していてちゃんと聞いてなかった。
「一緒に、帰る」
わざわざ自分を指差してから僕を指差してきた。
「まじ?」
「まじ。人の話はしっかり聞こうね」
まあいいか。どうせ他に帰る人もいないし。
「わかったよ」
「仲直りの一環だと思ってさ」
そういうことにしとこう。坂宮さんと一緒に教室に入ると、中はがらんとしていた。話している間にクラスメイトたちは帰ったらしい。
松島と遠田さんもいない。どこか別の場所で勉強しているのかもしれない。
リュックを背負うと同じくカバンを持った坂宮さんと教室を出る。
打ち切ります。本当にごめんなさい。
いつかを夢みて