表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/5

3.チート、なおクソゲー仕様

ネトゲってあんまりやらないのでステータスとかアイテムに作者は馴染みがあまりなかったり

 マイルームで悶々と考えを巡らせていると、ポン、と電子音が鳴った。


 目の前に半透明の青い画面が現れる。見ると、初期のステータス設定画面だった。

 本当に《ファーヴニル・オンライン》と同じなんだな、と感嘆する。《ファーヴニル・オンライン》の初期アバターの能力は皆同じではない。

 最初に決められた範囲内でポイントを割り振ってアバターのステータスを決めるのだ。確か、100ポイントだったかな。

 

ステータスと言っても色々ある。主に体力に腕力、魔法、素早さといった力がステータスとして組み込まれているのだ。

 うーん、と首を捻る。こういう初期設定は久々で懐かしいなぁ。

 まぁ、この段階が初心者の落とし穴でもあるんだけども。


 《ファーヴニル・オンライン》ではそのガバガバ難易度とスキルも相まって、ここでテキトーに割り振ると後で詰む。

 だが、こんなところでミスをする俺ではない。

 まずスピードを上げる。半分の50ポイントを【AGI】につぎ込む。残りの50ポイントは【MP】と【STR】にそれぞれ半分ずつ振った。


 これで重視される素早さと魔法を連発できるだけMPと一定の腕力は得られた。

 続いてスキルポイントの割り振りだ。


 ポイントを振ってスキルを取得するというものである。ここでは必須スキルを2、3個手に入れるのが定石だ。

 割り振れるポイントは300。100ポイントでレベル1のスキル1個が手に入ったはずだ。

 とりあえず、《スキャン》を選択する。次に《魔力探知》。この二つはゲームでも皆が付ける、所謂いわゆる、必須スキルとよく呼ばれている。


 あと一つはどうしようか。

 取得可能スキル一覧を見ていく。


あー《魅力》スキルか。


説明文には、魅力が上がると書かれている。確かゲームじゃ好感度を持つNPCに好かれやすくなるとかだったよな。


 好感度を持つNPCとは、NPCの中でもプレイヤーに対して個別に好感度システムを持つ者のことだ。

 《ファーヴニル・オンライン》ではNPCと結婚できるシステムがある。ギャルゲーのようにイベントを発生させ、会話中に現れる選択肢をこなしていけば好感度が上がり、付き合うところまで行ければ相手のNPCを自由に着せ替えさせるなどカスタマイズも可能となるのだ。


 結局、《魅力》スキルを取得してしまったが……これ意味あるのか?

 後悔しそうな気もするがまぁ悪いスキルではないだろう。

 ちなみに技スキルとかもあるがこれは経験値で解放されていくので今は取得できない。


 セッティングを終え、画面を閉じようとすると新しいポップアップが視界に表示される。

 

 「新しいスキルを獲得?」


 それをタップすると、詳細が表示された。



 エクストラスキル《不死化》

 30秒間、自プレイヤーに《ダメージ無効》と《身体強化》を付与する。



 な、なんだこれ!?

 見たこともないスキルだ。少なくともゲームにはなかったはず。

 レベルが存在しない固有能力であるエクストラスキル自体はあったが……


 しかし、これはチートスキルだよな。

 一定のダメージを無効するものは知っているが、完全に無効化と身体強化まで備えている。時間制限はあるが、魔力が尽きなければ連続使用も出来るはず。

 もしかすると神様って奴からの贈り物かもしれない。

 これは生死に関わる重要な能力になりそうだ。

 よし、一回ステータスを確認してみるか。


 コマンドがないのでタップ操作では開きそうにないな。ここはテンプレっぽく……


「ステータス・オープン」


 で、でた~異世界ものでありがちな魔法の言葉!

 ……って本当に開いたし!?


 

 名前 シャル


 レベル1

 性別 女

 職業 剣士


HP 100


MP 125


STR 125


VIT 100


DEX 100


AGI 150


INT 200



スキル

《スキャンLv1》

《魔力探知Lv1》

《魅力Lv1》


エクストラスキル

《不死化》



 やっぱり性別は女として認証されるのか……

 にしてもINT、知力がやけに高いな。ゲームの知識とかが影響しているのだろうか。

 だとすると、俺が格闘家だったらSTR(筋力)が300ぐらい最初からあるとかもあり得るのか。


 ステータスはまぁこんなものだろう。

 問題はこの世界だよなぁ。完全にゲームと一緒でもないのだろうし、そもそもちゃんと生きていけるのか。

 とりあえず街に行きたいけど、周りは密林。


 もしかして俺、詰んでる?


 一番の問題は食糧だ。

 尿意や喉の渇きは感じないが、腹は減ってきている。おそらくだが、水は摂らなくてもいいが食べなければ死んでしまうのだろう。

性欲は……ないような、あるような……枯れてはいないが旺盛でもないという感じだ。

 流石に自分の胸で欲情することはないし……ま、まぁ無問題ということでいい。



 食糧か。何かないかと思って俺はマイルームの中を探す。

 すると、色々見つかった。


 まずは食糧だ。包みに入っているブロック状のクッキーみたいなものだった。

 俺は《スキャン》を発動させる。

 頭の中に『スキャンモード起動』というノイズ混じりの機械音声が響き、視界にポインターのようなものが現れた。

 視線を動かして対象物にポインターカーソルを合わせるだけで、文字列が表示されるではないか。



 携帯食糧

 人工的に作られた栄養価の高い食品。

手軽にエネルギーを摂取できる。



ああ、つまりカロリー○イトってわけか。見つかった携帯食糧は3個。廃ゲーマーの俺からすれば3日間は余裕で持ちこたえられる量だ。


他には鉄の剣や、いっぱい入るアイテムポーチや本が見つかった。

特に本は分厚い辞書みたいなのが2冊。この世界に関する知識が載っているらしい。


俺は携帯食糧をバリバリと食いながら本を読むことにした。



そんなことを1日中やっているうちにだんだんとわかってきた。


この世界は基本的には《ファーヴニル・オンライン》と同じだ。全ての人やモンスターにステータスが存在すること。剣と魔法のファンタジー世界であること、多くの冒険者がいることなど。設定はゲームと酷似している。


 貴族が多くいたり、ダンジョンがあるあたりは違うようだ。

 それと、この世界における武器はゲームと違い、レベルがないのである。

 その代わり、武器は強さによってランク分けされているようだ。


 下級、中級、上級、伝説級に区別されており、下級は安価な粗品。中級は一般的で最も多い武器らしい。上級は一部の実力者や貴族が売買している強力な武器であり、扱える者も限られる。伝説級は英雄が振るったとされる言い伝えのある武器。その性能は強力無比で、一薙ぎで100人の兵を一掃するなど超常の力を宿していると書かれている。


 ――が、これは現在ほとんど発見されていないらしい。


 他に絶望級という括りもあるようだが、これについては記述が特にないのでわからなかった。


 見つかった剣は下級に分類されていた。

鉱石系の武器は不遇というゲームバランスもこの世界は受け継いでいるのだろうか。それでも普通に狩りをするには充分らしいが。

 

武器の見定めは重要そうだな。なんせ元がクソゲーの世界なので出回っている武器のほとんどが産廃性能ということもあり得る。

いや冷静に考えればあり得ないんだけれど。


はぁー、一応、知識もついたしそろそろ冒険したほうがいいよな。

食糧の問題もある。どう生きるにせよ人が生活している場所まで行かねば。


神様からのメッセージには、レベル100になれば帰れるって書いてあった……

それが本当なら俺はレベル100になることを目標にするべきだろう。


《ファーヴニル・オンライン》じゃレベル100なんて意外とすぐ超えたけど、ここじゃ動くのは自分自身。不眠不休で夜通しクエストをやるなんてことは難しそうだ。


 よし、とりあえずの目標はギルドという冒険者の管理組合に登録すること。

 となると、ギルドのある街まで行くのが最優先。


 

 でもその前に、だ。


 エクストラスキルの確認。これがしたい。

 

 《不死化》と言われても本当に死ななくなるのか気になる上に魔力の消費も見ていきたい。

 俺は鏡の前に立ち、静かに息を吐く。

 スキル、主に攻撃や強化の魔法と呼ばれる類いのスキルは少しコツがいるらしい。まず、精神を落ち着けること。あとはイメージが重要と本には書いてあった。

 ゲームでは、所定の動作やスキルコマンドをタップすることで発動したが、やはり異世界だとそうはいかないらしい。

 イメージと言っても《不死化》のイメージなんてわからないなぁ。とりあえず何となくだが強固な感じを思い浮かべる。



「肉体よ、果てる運命に叛逆せよ―—《不死化》」



 高位の魔法において必要とされる詠唱を行う。エクストラスキルというだけあり高位な魔法に分類されるようだ。詠唱は頭に浮かんでくる文を唱えればいい。


何かエフェクトがあるのだろうか。虹色に光るとか。あ、それはマ○オか。

少しばかり高揚感を覚える。やっぱ新しいスキルを使う時はワクワクするな―—―—



「――って、いってえええええええええええええええ!?」


な、なんだよこれ!?

 突然の激痛。痛いなんてレベルじゃない、下手すりゃ意識がとんでしまう。まるで全身が焼けるようだ。

 

 不意に目の前の鏡を見る。

 そこには化け物が映っていた。


「うわああああああああああああっ!?」


 俺は鏡を叩き割りそうになった。


 激痛は3秒ほど経ってからひいた。冷静になった頭で考えてみるとこの部屋にいるのは俺一人だ。

 ということは……鏡に映っているのは紛れもない俺自身。

 

 一体、美少女アバターの体はどうした、と言いたくなるような変貌ぶりだった。

 髪型こそ一緒だが顔色はすっかり悪くなり、焦点の合わない虚ろな瞳、何故か右目は潰れてしまっていて見るにも耐えない。


 呆然自失。

 だが、30秒経つと今の現象が嘘だったかのように元の美少女に戻った。

 すると、電子音が鳴る。

スキル画面が自動的に開く。どうやら《不死化》の発動によって効果の説明文が増えたらしい。



エクストラスキル 《不死化アンデッド

 

 30秒間、屍化して不死性と身体強化を備える。

 発動時に代償として激しい痛みを使用者に負わせる。



「これって無敵化じゃなくてゾンビ化じゃねぇかっ!!!!」


 俺は鏡を叩き割った。


感想、ご指摘などよろしければどうぞ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ