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桃色ファンタジー。

銀色ダーリン。

作者: 桃色 ぴんく。

「美奈ー!また明日ねー!」

「うん!お疲れー!おやすみー!」

「おやすみー!」


 職場の飲み会の帰り道、美奈は仲間と別れ、一人夜道を歩いていた。


『この辺、暗くて嫌なんだよね・・・』


家に帰るには、この道を通らなければいけないけれど、唯一あった街灯が今は壊れて真っ暗なのだ。


『チカンとか出たらどうしよっかな・・・』


 美奈は少し早歩きを始めた。その時、前方に小さな光が見えた。


「あれ?街灯直ったのかな?」


と、思っていると、その光はだんだん強く、大きくなってくる。


「え?え?」


あまりの眩しさに目を開けていられず、美奈は目を閉じた。まばゆい光が美奈の体を包み込む。





「・・・う・・・」


 どれぐらい時間が経っただろうか、どうやら気を失っていたようだ。


「キガツイタカ ミナー」


聞きなれない機械音のような声に振り返ると、そこにはテレビでよく見る元祖宇宙人のような生物が立っていた。


うそー!!!宇宙人??


頭でっかちで、目が黒くてギョロッと大きく、全身が銀色。なにっ!?何が起きたの???

「ここ、どこっ!?」

見回すと、一部屋ほどの空間。小さい窓がいくつも並んでいる。窓の外はうっすらと明るくなっていた。


「ココハ ボクノ トコロ」


 美奈は、窓のところまで駆け寄った。空・・・飛んでる!!!ってことは、ここはいわゆる未確認飛行物体の中ってこと???


「ねえ!帰りたいんだけど!なんで私を連れてきたのよ!」


「ボクノ オヨメサンニ スル ミナー」


「さっきからミナーってなによ!私の名前は美奈!変に伸ばさないでよ!ていうか、なんで私が宇宙人のお嫁さんにならないといけないわけ?私、彼氏いるんだよ!」


「ボクガ ソウキメタ ミナー」


「やめてよ・・・宇宙人と人間が結婚とか聞いたことない。早く帰して!お願いだから!」


「カエサナイ ミナー ボクト ケッコンスル」


「だから!私には彼氏がいるし!家族だっているし!帰れなかったらどうしてくれるのよ!みんなが心配するし、明日も仕事なのよ!」


「ダイジョウブ スグ ワスレル」


「そんなわけないわ!彼氏や家族が私のこと忘れるわけない!」


「アワナクナッタラ ソノウチ ワスレル」


「・・・確かに、彼氏とは最近会ってないけど・・・でも・・・」


 そんなわけない・・・大体、なんで私なのよ・・・飛び降りるわけにもいかないし、どうしたらいいの・・・美奈は悲しくなった。大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちる。


「ナカナイデ ミナー ボクガ シアワセニ スルカラ」


「うぐっ・・・あんたに何が出来るのよっ!・・・ぐっ」


「ミナー ホシイモノ スベテ アタエル」


 そういうと、宇宙人は、美味しそうな食べ物や可愛い洋服、靴、カバン、アクセサリー、可愛い子猫まで用意した。


「え?なに?これ、魔法??」

 

 いきなり目の前にいろんな物が現れたので、びっくりして泣いていたのも忘れてしまった。宇宙人だから魔法とはまた違うのかなぁ・・・なんでも出来るのか・・・でも・・・


「そんなモノで釣られないわよ!なんてったって、あなたのそんな姿、嫌だもの!」


 宇宙人にきついこと言っちゃったかな。逆上して何かされたらヤバイかな・・・美奈がちょっと怖がった表情を見せたら、宇宙人は言った。


「ミナー ボク ヘンシン デキル」


「変身???イケメンになれるっていうの?」


「ナニカ ミセテ クレタラ マネ デキル」


 なるほど。何か写真とか見せたらいいのかな。彼氏の写メはスマホにあるけど・・・どうせなら、もっとイケメンがいいかな。

「あっ そうだ」 美奈はバッグを開け、大好きなアイドルグループの顔写真入りうちわを取り出した。コンサートで使う以外にも普段からひそかに持って歩いてるのだ。


「この顔になれる?」

 うちわを宇宙人に見せる。宇宙人は、しばらくうちわを見つめていた。そして、一瞬まばゆい光が美奈の視界を遮る。「まぶしっ」


「え・・・」

 変身を終えた、宇宙人の顔は大好きなアイドルの顔になっていた。が・・・


「銀色のままじゃないの」

見た目は変わったけど、色は銀色のままだった。


「コレハ サスガニ デキナイ」


「え~そうなんだ。変なの。でも、元の顔よりいいわ。ずっとそのままでいてよ」


「ズット ムリ チョット ダケ」


「え~~~変身に時間制限もあるの?なにそれー使えない!」


「ワカッタ ミナー ノタメニ ガンバル」


 宇宙人は、とても無理をしているようだった。そんな姿を見ていて美奈はなんとなく宇宙人がかわいそうに思えてきた。私のためにそこまでしなくてもいいのに。

 宇宙人の不思議な力のせいなのかはわからないが、美奈の心に少しずつ変化が起きてきていた。なんだか、このままずっとここにいてもいいかも知れない、と。


 変身が解けてはまた変身し、衰弱しかけてるようにも見える宇宙人。それでも、なお、美奈に気に入られようと頑張って変身を繰り返す。


「もういいよ。元の姿でいいから」


「ドウシテ」


「よく見たらその大きな目も可愛いよ。だから、もういいよ、そのままで」


「ミナー」


「もうっ ミナーでもなんとでも呼んで」


「ズット イッショ ミナー シアワセニ ナロウ」


 こうして、私は宇宙人と結婚した。人は見た目じゃないし、あ、人でもないんだけども。宇宙人だってなんだっていいわ。私を幸せにしてくれるなら。美奈は、銀色に光る体の宇宙人とそっと手を繋いだ。


「ずっと一緒にいてね。ダーリン」



                     ~銀色ダーリン。(完)~





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― 新着の感想 ―
[一言] 会わないと忘れられてしまう…。 そして彼氏の外見よりも アイドルへの変身を希望。 その内、健気に尽くす 宇宙人の情にほだされ…。 女心とは複雑で理解不能。笑 面白かたでつ!笑笑 …
[一言] 連れ去って欲しい。。。そんな願望が内に秘められた感じのように感じ、読ませていただきました。 最後の締めくくりが、とてもホッとしました。 この文のこの最後の言葉で、全体がとてもかわいらしい感じ…
[良い点] これは良いことを教えてもらいました。 掻っ攫って息子の嫁にしても許されるということですね。 ためしてみましょう。 [一言] ところで、宇宙人という存在をどんな姿と想像しているのでしょう…
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