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真姫 3

真姫と緋美が声を揃えて菜実に迫る。

「赤い蛍⁈」

「ねぇ、それどっちのほう?私見たいなぁ赤い蛍!」

真姫は弾んだ声でそう言った。

「菜実、またそんなこと言って、きっと車のライトか何かよ。」

緋美が呆れ顔だ。緋美は神坂の不思議を信じていないようだ。

「違うよ!だってあっちの空き地のほうだもん」

不満顔を浮かべて菜実は言う。

「菜実ちゃんこの間は大きな歩くネズミを見たんでしょう?赤い蛍もいるよねぇ」

擁護するように真姫は言う。

「やだ菜実ったら、あの話真姫ちゃんにしちゃったの⁈やめてよ恥ずかしい…」

「そんなことないよ!すごくない?私信じるよ、菜実ちゃん!」


神坂には至る所に小さな祠やお地蔵さまがある。小さい頃は真姫はそれらが怖くて、神坂に来て外で遊ぶ時には、菜実や緋美にしがみついてその横を通っていた覚えがある。

今見ればお地蔵様は愛嬌がある顔だと思えるのだが。

そんな村だからこそ、真姫はこんな法螺(ほら)のような話でも信じようと思う。

実のところを言えば、真姫も1度だけそんな不思議を体験したことがあった。

4年程前の秋祭りの時期、真姫は神坂に訪れた際、庭で落ち葉が2枚、真横に並びながら不自然に少し浮きながら移動してゆくのを見たのだ。きっと小人が運んでいたのだろうと真姫は信じている。


「あれ、おかしいなぁ、あそこだったんだけど…」

菜実が寂しげに呟いた。

「ほら菜実、やっぱりあんたの見間違いだったのよ。あぁ、それか狸とかね?ほら、母さん達の所戻ろう。真姫ちゃんも。」

緋美が少し優しげに菜実に接する。

「うん…」

真姫もそう言って行き過ぎた道を戻りだした。暗くてよく分からなかったが、曲がるべき角を少し過ぎていたようだった。左右にはずっと蛍が瞬いている。名残惜しげに後ろを見れば、空き地に一瞬、揺らめく赤い光が横へスライドしたのが見えた気がした。その光によって、秋でもないのにススキのようなものもぼんやり浮かび上がった。しかしそれは、「あっ」と声を上げる前にはもう消えてしまった。真姫は何度もまばたきをしつつ見つめいてたが、その後はとうとうもう1度も見えることはなかった。

真姫の見た光は、菜実は蛍と言ったが、それよりは少し大きくてはっきりとしたものだったように思えた。火とも言えるような…、と真姫が考えていると菜実たちが真姫を呼んだ。

後でこっそり菜実に教えてあげよう、と真姫は2人に追いつくために走り出した。


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