第102話
蒼空の言葉に会場は一瞬の静まりを見せるがすぐさまブーイングが巻き起こる。
そして、真も不覚にも蒼空の方に視線を向けてしまう。優樹はそれを見逃すはずもなくすぐさまマウントからの脱出を試み成功されてしまう。なんとか優樹は立ち上がるもののダメージは深刻のようで足は多少ふらついていた。
真は脱出された優樹に視線を戻しとり逃すまいと再度攻勢を仕掛けようとする。
だが……
「もうやめて真!!」
再度蒼空が真に向かって声を掛けてきたのだ。
真は今度は視線はしっかりと優樹に固定をして意識を蒼空の方に割かないように、意図的に静観をすることにした。
しかし真は見てしまった。
蒼空に視線を向けた一瞬、蒼空が目から涙を流していた事を。
意識を向けないと思っていたのに、結局意識の半分以上をとられてしまうことになってしまっていた。
だがそれもすぐさま違う方に意識をとられてしまう。
「くっ、やめろ蒼空」
なんと優樹が蒼空に向かって喋りだしたのだ。
「……けど」
「ちゃんと事前に言ってあるだろう。はぁ、はぁ、邪魔をするな。わかったか?」
「…………はい」
蒼空は唇を悔しそうに震わせ俯いてしまう。
「悪かったな、水を差すような事をして」
「……いえ」
「じゃあ続きを始めようか」
そして優樹はおもむろに仰向けに寝転ぶ。
真は優樹の行動に疑問を抱いてしまい何もできないでその場に立ち尽くしてしまう。
だが、その答えはすぐに優樹からもたらせる。
「変な邪魔が入ったが元の状態から始めないとフェアじゃないからな。ほら来いよ」
成り行きを見守もって静かになっていた観客からは拍手が巻き起こる。もちろん優樹の行動を称えての事だ。
真は半信半疑ではあるがゆっくりと優樹に近づいていく。そして彼我距離まで近づいても何もなかったのを確認すると先ほどと同じマウントの態勢にになる。
「よっし。始めるぞ」
優樹は軽い感じで促してきたが真はそうではなかった。
蒼空のせいで大半のやる気がそがれてしまい始める気が全くなかった。
優樹は真の顔を見てそれを感じ取ったのであろう
「んだよ……しかたねえな」
真は優樹から軽くではあるが顔に拳をもらってしまう
「俺に勝ったらすべてを話してやる。だから本気で来い」
周りには聞こえず真にだけ聞こえる声音で優樹が話しかけてくる。そして、次の瞬間再度激しい闘いの合図となる。
今度は軽くではなくかなりの痛烈な痛みが真の右ほほに走る。どうやら先程とは違いかなり力の込めた拳を優樹は放ってきたようだった。
これには流石に真も意識を切り替えるのに十分と言える威力であった。
ついさっきまでの厳しい獲物を見定めるような目つきに戻る真。
(これ以上考えても何にもわかんねぇ。やるしかない)
気持ちが固まった真は優樹に拳を放っていくのであった。
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