第97話
優樹の言葉に真は若干疑心暗鬼気味になっていた。
(関節技が効かない……。そんなまさか……。けどさっきの様子なら……)
真の今までの経験上、関節技が効かないなんて人物はいなかった。だが先ほどの優樹の様子からは明らかに効いていない感じであった。
確信が持てない真を察したのであろう、優樹が真に言ってきた。
「いまいち信じていない顔だな。しかたねえ、見せてやるか。だがな、いいか。見せてやるんだから仕掛けてくるなよ」
優樹の言葉に会場からは笑いが起こる。流石に真もこの状況では仕掛ける気も失せてしまい素直に優樹の言葉に同意する。
優樹はおもむろに床に座りだす。そしてあろうことかその場で柔軟と言うかヨガと言うか、体を俯せになり足を腕でつかみ横から身体を横から見ればなかなかいい形の丸が出来上がった。そしてそのまま状態から床を転がりだす。
それを見た観客からは大きな拍手や歓声が沸き起こる。いつもと色合いの違ってきた状況に真は違う意味で困惑してしまう。
そんな中優樹はさっきとは違う態勢になる。
優樹はその後も優樹自身の身体のすごさを証明するごとく色々な態勢を披露していく。
五分程披露していたであろうか、優樹自身も満足したのだろう。その顔は満ち足りた顔に見える。
「わかったか?」
立ち上がり真に聞いてくるが、真としてはどう答えていいかわからず苦笑いを浮かべるだけであった。
「なんだよ。反応悪いな。じゃあこれならどうだ」
優樹はおもむろに掌を反対側にそっていく。普通であれば四〇度ぐらい。柔らかい人でも九〇度ぐらいであろうか。だが優樹は違った。勇樹は腕にまで引っ付いたのだ。一八〇度と言っても過言ではないだろう。
それを見て会場からは悲鳴が起こる。
会場の人間は気持ち悪くて悲鳴を上げたのであろうが真はそうではなかった。
優樹の様子をしっかりと観察していた。
(あそこまでいくのならば間違いないか……)
先ほどの優樹の言葉の真偽確認するためだ。そして今の様子から確信を持つ。
「どうやらわかってくれたようだな」
優樹の方も真の様子を見てたのであろう。
「それじゃあ、そろそろ続きを始めるとしようか」
その言葉を境に真と優樹は臨戦態勢にはいる。
お互いに距離を取り相手の出方を窺っているようだ。どちらも仕掛けようとしない。
その状況に今度は先程と打って変わって観客からはブーイングが起こる。しかし、お互いそんなことは気にしてないようだ。自分たちのペースで進んでいく。
何もないまま二分程が過ぎたのだろうか
ここで真の方が動き出す。
優樹を中心に円を描くように動き回る。勇樹はそれを見て真を常に正面に捉えようと真に併せて優樹も回る。
何周回っただろうか
優樹が真を一瞬捉えきれなくなり視界から真を外してしまう。
真はそれを見た瞬間すぐさま自分の拳が届く射程距離に一気に詰める。そして左フックから右のアッパーのコンビネーションを優樹に放つ。
優樹は左をなんとか躱したが右は完全に躱せなかった。不完全ながらではあるが顔面に拳が当たってしまう。
それにより優樹は態勢を崩してしまった。
真はそれだけでは終わらなかった。
アッパーを出してすぐさま右の蹴りも放っていた。狙いは優樹の左脇腹。
その蹴りを優樹はまともに食らってしまい床に倒れこむ。
そこから真の行動は早かった。
すぐさま優樹に飛びかかりあっさりとマウントのポジションをとることに成功する。
「これでおしまいだ」
真は優樹に向け通告ともとれる言葉を突きつけるが優樹の表情は違っていた。
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