被災地からの手紙
地震後も連日、テレビでは震災の特集番組が組まれ、
日に日に、震災の凄まじさが報じられていた。
お年寄りは震災地、神戸を見ては、
戦後間もない日本のようだと言っている。
歴史の勉強では習ったが実際に体験していない分、
経験者の言葉に重みを感じる。
救助される人達がブラウン管に映し出される度に、
僕は希ちゃんの姿を探した。
『希ちゃん。希ちゃんはどこにいるんだ?ずっと探しているんだよ。
僕だけじゃないよ、梅野だって、有紀だって、飯島だって、
五十嵐だって、さやかちゃんだって。みんな希ちゃんを探しているよ。』
でもブラウン管に希ちゃんの姿を見つける事は出来なかった。
そして時間が経つに連れて、震災のニュースは減っていく。
クラスメートの話題も地震から一週間も経つと
震災の話よりも自分達の目の前に見える難関、
高校入試の話題で溢れている。
決して風化させてはいけないとはわかっていても、
人間とは勝手な生き物だから。
その周りの中にいる僕らだけが取り残されている感じすらする。
『まだ、連絡はないのか?』
『あぁ、まだ消防署からは連絡ないよ。』
飯島も勉強が手につかない仲間の一人で、毎日のように
希ちゃんの事を聞いてくる。
『良太、消防士さんを信じようね!』
『うん、ありがとう、坂井。』
坂井は震災の情報をいつも集めてきてくれる。
『大丈夫だよ、良太。希ちゃんはきっと大丈夫!』
僕と同じくらいに心配で眠れないはずの梅野。
明らかにわかる睡眠不足の痕。気丈なまでに明るく繕う。
『松原さんを信じよう。』僕はそう心に強く誓った。
家に帰ると僕の机の上に、一通の手紙と小包が置いてあった。
手紙は希ちゃんからの手紙だった。
僕は急いで封をきり、僕は水色の便箋に手に取り読む。
『良太君、お元気ですか?この手紙を出そうか迷ってました。
夏休みに良太君とさよならをちゃんとしたはずなのに、
やっぱり良太君の事が気になって手紙を出しました。
あの夏から随分時間が過ぎた気がします。
上手く言えないけど神戸に行ってから、ずっと淋しかった。
出来ればずっと近くに居たかったよ。そして奈津子ちゃんから
直接の良太君への思いを聞いた時に、良太君が取られてしまいそうで
涙が出てきました。でも奈津子ちゃんは小学三年生の頃からずっと、
良太君を見てきたんだね。奈津子ちゃんは私のかけがえのない友達。
奈津子ちゃんを大切にしてね。何だか訳のわからない手紙になっちゃったね!
そう言えばもうすぐ受験だね。遠く神戸から志望校合格祈ってるね!』
希ちゃん、無事だったんだと僕は肩を撫で下ろした。
そして僕は小包を開ける。松原さんからの小包だった。




