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大人になりたい

日帰りで福岡に帰ってきた僕は流石に精神的にも肉体的にも疲労していた。


精神的な疲労は何も出来なかった無力感が大きかった。


映画やドラマのように簡単にはヒーローにはなれないし、


ドラマチックな事など幻想にすぎない。それがリアルな世界。


翌日は学校だったが、元々、神戸にいる予定で休むつもりでいたから、


家で一日休む事にした。


『こんにちは~。』


『あら、奈津子ちゃん。昨日からありがとうね。』


『いえいえ。あの、良太から連絡ありました?』


『良太は昨日遅くに帰って来たのよ。』


『そうなんですか?』


『えぇ、あがっていく?』


『あっ、はい!』


部屋のドアをノックする音がした。


『なに?』


『良太。入っていい?』梅野が学校帰りに来てくれた。


『いいよ。』


ドアが開き、梅野が部屋に入って来た。


『どうだった?』


『街はひどかった。家なんかも崩れていたし…。』


『そっか。でも、こんなに早く帰って来たんだから、

希ちゃんに会えたんだよね?大丈夫だった?』


『会えなかった…。』


『えっ?』


『避難所に行って、色んな人に話を聞いて、住んでいた街まで行ったけど、

消防士の人に危険だからって言われて、そのまま福岡に帰されたよ。』


『地震直後だもんね。避難所にはいなかったの?』


『何ヵ所か周ってはみたけどいなかったよ。』


『そう…。大丈夫だよ、きっと違う避難所に居るよ。』


『そう願いたいよ…。』


そう言うと突然、梅野の顔色が変わった。


『良太!あんた、何の為に神戸に行ったの?

希ちゃんが無事な事、思って行ったんでしょ!』


『そうだけど…。』


『良太が弱気になってどうするのよ!』


『うん…。でも何も出来なかった。』


『神戸まで行けて、希ちゃんの住んでいる街を見れたじゃない!

何もしていない訳じゃない!』


『そうだけどさ…。』


『希ちゃんの事はまだ心配だけど、私は良太が

無事に帰って来てくれた事だけで安心したよ。』


『同じような事を言われたなぁ。』


『えっ、誰に?』


『地元の消防士さんにね。』


『そうなの?』


『あぁ、希ちゃんの住んでいる家の近くまで行った時にね。

希ちゃんを探していて、探している間に俺が怪我をしたら、

希ちゃんが心配するってね。梅野にも心配かけちゃうなぁ。』


『そうよ!でも今、ここにいるから安心した。』


『早く大人になりてぇな。』


『うん。』


『中学生じゃ、何も出来ない。』梅野は黙って頷いた。

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