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約束

僕は教えてもらった希ちゃんが住んでいたと、


考えられる住宅街へ近づいていた。


そこは今までの中で一番埃っぽく、焼け落ちた樹木の


臭いが鼻についた。


話を聞いた以上に街は傷ついていた。


僕はそんな光景を横目に無我夢中に走る。


その時、背中越しに怒鳴り声がした。


『何やってるんだ!』


僕が振り返るといきなり服を掴まれ、後ろに引きずられる。


『こんなとこで何をしてる!』


『えっ!』


『こんな危険な場所で、何をしてると聞いてるんだ!』


『人を探しているんです。』


『早く避難所へ戻れ!』


『お願いします、行かせて下さい。』


そう言うと、僕は思い切りその男性にビンタをされる。


『落ち着け!助ける仕事、探す仕事は俺達の仕事だ。』


『大切な人が待っているんです。お願いします…。』


もう僕は泣き声に近かった。


その人は無言で、僕を抱え連れていく。


希ちゃんの住んでいた街が遠くに霞んでいく。



『少しは落ち着いたか?』僕は黙り込んでいた。


連れて行かれた場所は消防署だった。


僕を連れてきたのは、地元のレスキュー隊員だった。


『落ち着いたか?名前はなんと言うんだ?』


『宮内です、宮内良太です。』


『どこに住んでいたんだ?ご両親は?』


『福岡から今日来たんです…。』


『福岡から?そうか良太君、君が大切な人が心配で、

福岡から来た気持ちはわかる。』


『はい…。』


『でもな、もし良太君がその人を探していて、

もし怪我をしたらどうする?その人はもっと悲しむぞ。』


僕は俯いていた。


『俺達は良太君と君の探している人の気持ちに応える為に働いているんだよ。

大切な人に心配させちゃいかんぞ。俺達に任せてくれ。』


そのレスキュー隊員は笑顔で僕の顔を見る。


『お願いします…。谷本希ちゃんって言います。住所は…。』


僕はメモ紙に希ちゃんの名前と住所、そして僕の自宅の連絡先を書いて渡す。


『わかってくれたようだね。確かに預かったよ、ちゃんと連絡するからね。』


そう言うとメモ紙をポケットに入れる。


『あの…。』


『何かな?』


『名前を教えてもらえませんか?』


そう言うと、僕に笑顔を見せる。


『松原だよ、松原昌樹だ。良太君を今から安全な場所に送るからね。

着いておいで。』


僕にもう他に選択肢は残っていなかった。



僕は松原さんに連れられて、岡山までのバスが出るバス停留所に行く。


『ここから岡山行きのバスがあるから、それに乗りなさい。

それに君はまだ未成年だろ?』


『はい…。』


『ご両親も心配してるだろ?心配かけちゃいかんぞ。』


『はい…。すみませんでした。』


『うん。気をつけてな。』


『はい…。あの…。』


『何だ?』


『あの…。松原さん。希ちゃんの事、お願いします。』


『わかった。男同士の約束だ。』


そう言うと、松原さんは手を出してきた。


僕は松原さんの出してきた手を握りしめた。


そして頭を下げてバスに乗り込んだ。

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