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車中にて

渋滞が始まった頃、僕は恐る恐る乗せてくれた2人に聞いた。


『あの、お名前を教えてくれませんか?』


『名前か?俺は宏一。山下宏一や。』


『うちは綾や。』


『宏一さんに綾さん、ありがとう。』


『良太、本当はいくつなんや?』


『えっ、えっと二十歳。』


『そんな二十歳おるかい。』


『すいません。十五です。』


『中学生か。』


『すいません。』


『もぅ、いいわ。どっから来たん?』


『福岡からです。』


『えらい遠くから来たなぁ。』


『朝一番に新幹線で岡山まで来たんだけど、

その先は行けなかったからどうしようかと思ってました。』


『あの地震や、しゃあないからなぁ!』


『そんで大切な人ってどんな子なん?』


『えっと・・・』僕が口ごもっていると、


『なんやこの渋滞は!』


隣で寝ていた綾さんが、眠たそうに目を擦っている。


『しゃないやん、ライフラインも復旧してないし。』


『まぁな、神戸までは行けんなぁ。』


『えぇ!』


『仕方ない。道路もまともに走る事出来んし。』


あれだけの地震だ。車で神戸の街の中まで入るのは不可能だろう。


車は全く進まなくなった。神戸の街まであと少し。


『宏一さん。』


『なんや?』


『僕、ここで降ります。』


『なんやて?神戸はまだ先や!』


『でも僕が神戸にいる事が出来る時間は少ないから。』


『そう言ってもなぁ…。』


『いいじゃん、良太は大切な人に逢いに行くんや。なっ、良太。』


『はい、綾さん。』


『良太は男や。大切な人、無事やとええな。』


『きっと無事です。』


『そやな!』


『宏一、車停めてや。』


『あぁ、良太大丈夫か?』


『はい、後は自分の足で逢いに行きますから!』


『気をつけてな!』


『宏一さんも綾さんも気をつけて!』


僕は車から降りると、二人が手を振っている。


頭を下げ、僕は手を振り返す。


あとは自分の足で少しでも早く希ちゃんの住んでる街へ。

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