神戸へ
その夜、僕は神戸に行く準備をし、両親がいるリビングに向かう。
『ちょっといい?』
『おぅ、良太。まだ起きてたのか?』
『うん、まぁね。ちょっと話があるんだけど。』
『どうした?』
『あのさ、俺、明日から神戸に行く。』
『良太!あなた何を言ってるの?行ける訳ないじゃないの?』
『お年玉もあるし、行けるとこまで新幹線で行くし。
あとはヒッチハイクでもして行くよ。』
『馬鹿な事言ってないの!学校はどうするの?それに受験ももうすぐなのよ!』
『わかってるって!全部わかってる。でも俺は神戸に行きたいんだ。』
今まで黙っていた親父が口を開く。
『良太、どうして神戸に行きたいんだ?まだ危険だし、
中学生のお前が行っても何の手助けにもならんぞ。』
『神戸には大切な人がいるんだよ。どうしても、
もう一度逢わなきゃいけない人がいるんだよ。』
『えっ、どういう事なの?いつも手紙とか送ってくれていた子なの?』
『そうだよ、僕にとって初恋の女の子だよ。』
『でも今こういう時期に行っても何もならないでしょ!』
でも行きたいんだ。行かなきゃならないんだ。お願いします。』
僕は床に額を擦りつける位に頭を深くさげた。
今までこうした事はした事もなかった。
『良太、お前が行って、何になる?何が出来る?よく考えろ!』
『よく考えたよ。考えて考えた結果、僕は何が何でも神戸に行きたい。』
部屋を長い沈黙が包み込む。
親父はふぅ~っと深いため息をついた。そして開口一番に言った。
『行って来い。ただし約束を守れ。無理はするな。迷惑はかけるな。
危険な場所には近づくな。そしてライフラインが復旧していないかもしれないが
出来る限り、毎日連絡は家に入れろ。』
『あなた何言ってるの!』
『良太が男として決めた事だ。俺には止められない。
怪我とかするなよ。それに日曜までには帰ってこい!いいな?』
『ありがとう。』
『もう勝手にしなさい!私は知りませんから!』
母親はそう言うと、テーブルをバンと叩きつけて寝室に入って行った。
『良太、母さんに余り心配かけるなよ。
俺からも母さんには話しておくからな。』
『うん、ありがとう。』
『約束は必ず守れ。約束を守れない奴はどの世界でも信用されないからな。』
『わかった。』
『わかったなら、今夜はもう寝ろ。神戸に行った事を理由にして、
高校に落ちたら、二度と話は聞かないからな。』
『うん。』
その日の夜、両親の間でどんな話があったのかは分からないが、
朝起きるとテーブルの上におにぎりが3つ作ってあった。




