一つの決心
学校に行っても教室でも、地震の話題ばかりだったけど、
学校にいる時は今、神戸がどういう状況なのかもわからない。
全く授業も頭に入らなかった。
ただ、希ちゃんが元気でいる事だけを願っていた。
放課後、4人は僕の家でニュースを見る為に集まる約束をしていた。
普段ならニュースを見る為に集まるなんて考えられなかった。
今回の地震はそれだけ僕らにとって特別だった。
急いで家に向かう為に正門に向かうと、
そこに五十嵐とさやかちゃんが僕らを待っていた。
『良太!』
『五十嵐、さやかちゃん。どうしたんだ?』
『谷本さんの事が気になってな。良太達なら知ってるかなって思って、
待っていたんだよ。』
『そっか、でも俺達もまだ何もわからないんだ。
今から俺の家でみんなでニュース見るつもりだけど、五十嵐達も来るか?』
『あぁ、行くよ。』僕らは走って家に帰る。
家に着き、リビングに集まり、テレビをつけると
そこには、今まで見た事のない地震の被害の映像が流れていた。
被災された神戸の人達。おびただしい被害者数、行方不明者数が出ていた。
梅野は僕の家から希ちゃんの家にずっと電話を入れているが全く繋がらない。
テレビでライフラインが止まってしまっている報道がされ、
地震で家屋が倒壊し、消火、救出作業もままならない状況を伝えている。
僕は電話をかけている、梅野の傍にいった。
『良太、繋がらないよ。』梅野は涙目で僕に言う。
『電柱も倒れているからな。梅野、信じよう。』
『うん、良太。』
結局、報道されるニュースを見るだけで僕らは何も出来ない。
みんなはお互いに希ちゃんが無事でいる事を祈りつつ家路に着いた。
その夜、僕は決心した。
希ちゃんの事を思うと眠れない。
僕は明日親父が帰って来たらこの気持ちを話すと決めていた。
翌朝、普段通りに僕は学校に行き、普段通りに授業を受けた。
そして僕は梅野、有紀、飯島を待って一緒に帰る約束をした。
『良太、神戸の街は本当にひどいみたいだよ。』
有紀が俯きながら言う。
『俺さ、神戸に行ってくる。』
『えぇ!』みんなが驚いた顔で僕を見る。
『お前、何考えてるんだ!第一どうやって行くんだよ。』
『ヒッチハイクでもしながらでも行くよ。』
『学校はどうするのよ!』
『休むさ。』
『それに受験も間近なんだぜ!』
『それもわかってる。でも希ちゃんの事を考えると・・・。』
『良太、気持ちはわかるけど。奈津子も何とか言ってよ。』
『良太。行っておいでよ。』
『奈津子!何言ってるの?』
『良太にとって、かけがえのない希ちゃんだもん。
行っておいでよ…。私は待ってるから…。』
『梅野…。』
『奈津子!本当にいいの?今一番、傍に居てほしいのは良太じゃないの?』
『良太には傍にいて欲しいよ。でも良太の希ちゃんへの思いわかるから。
私も良太と同じ立場なら行ってると思うし。』
梅野は泣きながら言う。
『その代わり、絶対に無事に帰ってこなきゃ許さない。』
そう言うと梅野は泣き崩れた。
『ありがとう、梅野。』
僕はその言葉しか思いつかなかった。




