動き始めた時間
朝からか細い日差しが、僕の部屋のカーテン越しに寒さと共に突き刺さる。
僕は目を擦りながら、ベッドから跳び起きた。
希ちゃんとのデート。そして夜の公園での出来事。
今でも全て、夢の中の出来事であって欲しいと思った。
でも机の上にある、観覧車の半券が事実を物語っている。
『目を覚ませ。』
脳は僕にそう働きかける。
希ちゃんは思い出を封印し、別れを告げられ、
もうあれから5ヶ月が経とうとしている。
デートの翌日には、飯島に色々と聞かれた。
デートはどうだっただとか、どんな感じだったとか興味津々で聞かれた。
ただ、奈津子と有紀だけは何も聞いてはこなかった。
僕もわざわざ聞かれてもないフラれた事を言うつもりもなかった。
そして今、受験という大きな難関が目の前に立ち塞がっている。
『おはよう、良太~!』
『あぁ、梅野か?おはよう!』
『良太、受験勉強ははかどってる?』
『まぁまぁだなぁ!』
『不安だなぁ、筑栄高受けるんでしょ?』
『まぁね、梅野は?』
『私も同じだよ。』
『また同じかよ。』
『悪い?でもそれは合格してからでしょ?』
『まぁね!』
『お~い、奈津子、良太。』
『あっ、有紀!』
『おはよう、奈津子。良太、勉強頑張っている?』
『ほら、やっぱり!』
『えっ、何がやっぱりなの?』
『みんな、良太の受験勉強が気になるんだよ。ねっ、有紀。』
『うっさいなぁ、大丈夫だって!』
『良太!奈津子の言う通りだよ。みんな出来れば同じ高校に行きたいじゃない。』
『えっ?』僕と奈津子は有紀を見る。
『えっ、何?2人とも?』
『有紀、あんたも筑栄を受けるの?』
『うん、そうだよ。』
『坂井、倍率上げてどうするんだよ。お前ならもっと上を狙えるじゃん。
安パイ取るのか~。』
『いいじゃん、私は奈津子、良太、飯島と同じ学校に行きたいだけだし。』
『えっ!』
『なによ!また2人して!』
『梅野、聞き捨てならない名前あったよな?』
『うん、確かに!』
『はぁ~?2人ともどうした?』
『おいっす!なんだ全員集まって。何かの打ち合わせか?』
『飯島、お前もしかして筑栄高校を受験するのか?』
『おぅ、そうだぜ。良太もだろ?梅野が行くなら俺も筑栄高だな。』
『梅野!今日から勉強教えてくれ!』
『良太、あんたねぇ。』
『負けてられねぇ。ただでさえ、倍率上がるのに!』
『おいおい、良太。梅野を困らせるなよ!
そう言えば、五十嵐とさやかちゃんも筑栄高だぜ。』
『嘘っ!マジで?』
『あぁ、坂井も聞いてただろ?』
『そういえば、言ってたね!』
『勘弁してくれよ。』
『良太、今日から有紀と私とで、放課後勉強会だね。』
『俺も交ぜてくれよ。』
『飯島も?まっいいか。スパルタで教えてあげるからね。』
『覚悟しておいてね。』
『ハイハイ!』
『返事は一度で!』
『ハイ!』
『やべっ、遅刻するぞ!』
始業10分前のチャイムが鳴り始めた。
この日から僕達は本格的に受験というものを、完全に意識し始めた。
授業が終わっては、図書館で毎日、毎日、問題集を解いていた。




