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その手を握りしめた

デート当日。


僕は希ちゃんと初めて、二人きりのデートをする。


希ちゃんと二人きりでどこかに行くなんて小学生以来だった。


お互いあの頃とは、デートという感情はなく一緒に遊ぶ程度の感覚。


だけど今日は違う、希ちゃんから初めてデートという言葉を聞いた。


僕は自分が思っている以上に緊張していた。


いざ二人だと何を話せばいいのだろう。


前日の夜にはそんな事が頭の中を駆け巡っていた。


でもそんな考えは、希ちゃんの顔を見ると消えていた。


希ちゃんはいつもと何も変わらなかった。


『おーい、良太君。』


『希ちゃん、ごめん。少し遅れちゃった。』


『まだ約束の時間になってないから大丈夫だよ。』


『そうだね!』


『昨日はちょっと眠れなかったんだけど、朝はいつも以上に

早く目が覚めちゃった!』


『俺もそうかも?』


『良太君も?』


『うん、だって希ちゃんと二人きりで、

出かけるなんて思いもよらなかったからね。』


『そう?私は想像していたけどなぁ~。』


『えっ?』


『ううん、何でもないよ。行こう、良太君。今日は思いきり遊ぼう!』


『あっ、うん。どこに行く?』


『そうだなぁ、観覧車に乗りたいなぁ!』


『じゃあ映画でも見た後に、観覧車に乗る?』


『うん、そうだね!行こう!』


僕と希ちゃんは電車に乗って、街に向かった。


電車の中で二人並んで座り、色んな話をした。


小学生の頃、転校した時の事。


『あの時はほんと神戸に行く事が嫌で堪らなかったよ。

一晩中、泣いたんだから。』


『そうだったんだ~。僕はいきなり希ちゃんが転校して、びっくりしたよ。

もう逢えなくなると思ったら淋しくなったし。』


『私もそうよ、良太君や奈津子ちゃんと逢えなくなる事が

辛くて堪らなかったよ、でもまた逢えたから。』


『うん、本当にまさかだよ。』


『神様っているんだね。』


『神様?』


『うん、初めて神戸で初詣に行った時も最初のお願いは、

奈津子ちゃんと良太君に逢えますようにって、お願いしたんだから。』


『うんうん!』


『そうして、今隣にいる。』


女の子と二人きりで、こんな風に遊びに行くなんて初めてだった。


梅野が近くに居たけど梅野と二人きりで遊びに行った事はなかった。


いつも、有紀と飯島が一緒だった。


梅野、何してるのかな?一瞬、僕の頭の中をよぎった。


『良太君、どうしたの?』


『あっ、ごめんごめん。』


映画を見た後に、昼食のオムライスを本当に美味しそうな顔で


目をキラキラさせて食べている希ちゃん。


『恥ずかしいから、あまり食べているとこは見ないで!』


そう言うと顔を隠しながら希ちゃんはオムライスを食べている。


ご飯を食べ、ゲーセンに行き、UFOキャッチャーで二人して熱くなり、


車のレースのゲームで僕が勝つ度に、


『もぅ、少しは手を抜いてよぉ~!』希ちゃんは膨れっ面をした。


また、その顔は小学生の希ちゃんを思い出させる。


そしてまた笑い出す。


『良太君、デートなんだから手を繋ごう。』


希ちゃんは僕に手を差し出してきた。


『えっ!』


僕は一瞬驚いた。小学生の頃には違和感はなかったのに。


でも希ちゃんが差し出してきた、その手を僕は握りしめた。

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