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誰もいないグラウンド

波状攻撃の前に僕らは防戦が続いていた。


後半も半ばに入ると、攻撃疲れが出始めたのか


筑涼中のペースが落ちてきて、カウンターのチャンスがやってきた。


理想的なロングパスが通り、飯島が脚を振り抜く。


ボールは真っ直ぐにゴール右下に飛んでいく。


そのままゴールに吸い込まれていくと思っていたが、


ボールはポストに当たり跳ね返る。


『くそっ!』


飯島は地面を叩いて、悔しがっている。


上手い事出来ているようで、チャンスの後にはすぐにピンチが訪れる。


今度は筑涼中がルーズボールを拾い、カウンターを仕掛ける。


ディフェンダーの数は揃っていた。


点は取られる事は無いと思っていた。


ペナルティーエリア外から思いきり五十嵐がシュートを放つ。


ゴールまで距離があり、キーパーは充分対応出来る。


が、ボールはディフェンダーに当たり、軌道が変わる。


ボールは無情にもゴールに転がる。


誰一人立ち尽くしたまま、静まり返るグラウンド。


ゴールを告げるホイッスルが鳴ると静まり返っていた


グラウンドは歓喜の声と落胆の溜め息が交わる。


『みんな、すまない。』


『ドンマイ、ドンマイ。』


『まだまだ逆転のチャンスはあるさ。』


残り10分、重い1点が僕らにのしかかってきた。


『悪いね、このまま逃げ切らせてもらうよ、良太。』


『五十嵐、フォワードのお前がここまで下がるのか?』


『言ってなかったか、俺もミッドフィルダーをするようになったんだぜ。』


『聞いてねぇよ。』


五十嵐は僕にマンツーマンで付いている。


『付け回されるのは女性のほうがいいけどな。』


『あはは、それは梅野さんか谷本さんか?どっちだ?』


『何だよ、それ。』


執拗にまでマンツーマンの五十嵐のマークに、


僕にパスが出てくる事は最後までなかった。


終了のホイッスルがグラウンドに響く。


中学三年間のサッカーが今、終わった。



終了のホイッスルが鳴っても希ちゃんは、


グラウンドを見つめたまま黙っている。


『希ちゃん・・・。』


『有紀ちゃん、負けちゃったね。』


『うん。』


『小学生の頃からそうだったからなぁ~。』


『えっ?どういう事?』


『私が試合見に行くとね、いつも負けちゃうんだ。』


『そんなの偶然だよ~。』


『ラストゲーム・・・だね。』


『うん。』


『両チームとも互角だったんだけど、やっぱり最後は運だね。』


『どっちが勝ってもおかしくなかったし・・・。』


『そうだね。』


『希ちゃん、良太に言うの?』


『・・・言うよ。決めてた事だから。』


『奈津子はこの事知ってるの?』


『ううん、知らないよ。』


『内緒だよ、有紀ちゃん。』


『うん・・・。』


『私は帰るね!奈津子ちゃんと良太君にはよろしく伝えてね。

それとお願いがあるんだけど。』


『えっ、帰るの?』


『うん、それにこれ。明日のデートの待ち合わせ場所と時間書いてるから、

良太君に渡してもらえるかな?』


『うん、でも良太に直接渡さなくていいの?』


『うん。今、会って気持ち揺らぐかもしれないし。』


『本当に希ちゃん、いいの?』


『うん、決めた事だから。ありがとう、有紀ちゃん。

飯島君、五十嵐君、さやかちゃんにも宜しく伝えてね。』


そう言うと最後に誰もいないグラウンドを見つめ希ちゃんは帰っていった。

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