突然の別れ
冬休みも終わって、いよいよ同じクラスのままで
いられるのも最後になるかもしれない3学期が始まった。
あっという間の冬休みだった。
あの二人で作った雪だるま、今は影も形もない。
ただ確かに数週間前には、そこにいたけど…
まだ寒さが厳しい1月。
僕は思いがけないプレゼントをもらった。
誕生日プレゼントで希ちゃんから、手編みの手袋をもらった。
『今日は誕生日だよね?誕生日プレゼントに希が手袋をあげる』
初めて異性から貰ったプレゼント。
希ちゃんから貰った最初のプレゼント。
僕が手袋をすると本当に嬉しそうな顔で顔の覗き込んでくる。
『大きかった?』
『ううん、いいよ』
『よかった!』
帰り道、二人して手袋をして手を繋ぐ。
よく見れば色違いであとは同じ。お揃いの手袋。
いつもよりも何倍も温かさを感じた帰り道になった。
2月になると男女共、急にそわそわするのは、
決して大人だけじゃなく、小学3年生も立派にそわそわする。
バレンタインデーという、最大のイベント。
僕も何となくだけど、意味はわかっていたつもりだった。
でも今思えば、男性が女性から何か貰える日と思っていた。
朝から緊張していた。
学校に行くと、『なんだ、何もいつもと変わらないじゃん』と
思うくらいに普通に時間は過ぎていった。
そして放課後になると、そわそわは急に出てきた。
周りでは『〇〇君、これチョコ!』と男子にチョコを渡す女子。
これを機に一気にバレンタインデーは幕を開けた。
モテる奴はクラスには少なくとも数名はいるもので、
僕がその仲間入りをする、人生最大のモテ期はまだまだあとの事…
僕の仲良しの男友達もチョコを貰っていた。
そんな僕にもチョコをくれる女の子はいた。
最初はやっぱり希ちゃんから貰えると
淡い期待をしていたのだが、予想とはまるで違っていた。
僕の予想は外れた。
最初に僕にチョコをくれたのは、意外にも梅野奈津子だった。
『はい、これあげる。』
渡された時もこの一言だった。
間違いなく義理なのだろう。
本当に意外だった。それは何かの儀式みたいだった。
希ちゃんは風邪をひいていたから、
バレンタインデーは学校を休んでいた。
僕の最初のバレンタインデーという儀式はこうして幕を閉じた。
バレンタインデーという儀式も無事に終わり、
またいつも通りの朝が来た。
朝が来ない日なんて無い。
でも、この日だけは朝が来て欲しくなかった。
3学期も終わりに差し掛かり、
次はいよいよ4年生になる。
そして4年生になるとまたクラス替えがあり、
また出会いと別れを実感する。
そして3年生最期の日。
そこに希ちゃんの姿はなかった。
そして初めて希ちゃんが転校していった事を知った。
希ちゃんは最期に遊んだ日にも、何も言わなかった。
何も言わずに遠くにいった。
『さよなら』も言わずにそして言えないまま・・・




