勝てない気持ち、勝ってほしい気持ち
キックオフの笛と同時に歓声が沸き上がる。
いつも以上に気合いも入り、動きもいい。
ただ、僕等以上に筑涼中のメンバーの出足が早く、
プレッシャーはどんどんかけてくる。
比較的、中盤でのプレッシャーは余りなく、ボールは持たせてもらっている。
前半最初のチャンスがやってきた。
筑涼中は攻撃に重点を、置きすぎた結果、前線に人数をかけすぎていた。
そこに一本のパスが僕に送られてきた。
カウンターをかけていく。
飯島が真ん中で囮になっている為、両サイドも目線は中央にくぎづけ。
僕は左サイドにパスを出す。完全にノーマーク。
飯島が中央でボールに合わせると見せ掛け、右サイドへスルー。
右サイドから駆け込んできたMFの竹中が左足を振り抜いた。
ボールはポストをかすめラインを割った。
『ドンマイドンマイ!』
僕は軽く肩を叩いて、中盤に戻る。
『危なかったぜ、両サイドにサイド攻撃に気をつけるように伝えてくれ。』
『あぁ、わかった。』五十嵐はメンバーを呼び指示を送る。
『あぁ~!惜しかったね~』
『うんうん、もう少しってとこだったんだけどね。』
『ほんと、そうだよ~。』有紀は希ちゃんを見つめていた。
『どうしたの?私の顔に何か付いてる?』
『ううん、何も付いてないよ。』
『そう、ご飯粒でも付けてるかと思っちゃった!』
『違うよ、希ちゃん、ちょっと聞いていい?』
『うん、何?』
『この前のファミレスの件なんだけど、あれって本気?』
『ファミレスの件って、負けたら良太君とデートって事?』
『うん。』
『うん、本気だよ。』その顔はグラウンドを見ている。
『そっかぁ~。』
『どうしたの?』
『うん、正直に話すと奈津子の気持ちを考えちゃうの。』
『奈津子ちゃんの気持ちは知っているよ。』
『えっ!』
『知ってるからこそ・・・。』
『知ってるから・・・?』
『うん、実はね・・・。』
希ちゃんは有紀を見て話し出した。
『そうだったんだ・・・。』
『うん、そうだよ。』
有紀はこれ以上言葉は出なかった。頑ななまでの希ちゃんの気持ち。
奈津子が希ちゃんには勝てないと言った事を思い出していた。
『だから、勝ってほしい。』
希ちゃんはずっとグラウンドを見つめていた。




