デートよりも勝利
『良太君、勝つんだよね?』
『うん、もちろん。』
『五十嵐君も勝つんだよね。』
『あっ、あぁ~。』
『だったら正々堂々の勝負なんだもん。勝ち負けはその時の運だから。
奈津子ちゃんもそれでいい?』
『えっ!私?』希ちゃんはなぜか奈津子に聞いた。
なぜ梅野に聞いたのかはわからなかった。
『うん、もちろん。』
『う、うん。いいよ。』
『いいよって、俺達の試合だぜ。』
『良太君、奈津子ちゃんを責めないで。』
『あっ、うん。わかった。』
『明日は何時から?どこで試合するの?』
『筑涼中で9時からだよ。』
『じゃあ、その頃見に行くね。私は今日はそろそろ帰るよ。』
『あっ、うん。』
『じゃあ、またね!』
希ちゃんは自分の料金をテーブルに置いて出て行った。
希ちゃんが帰った後、残された僕達は沈黙に包まれていた。
その沈黙を破ったのは、五十嵐だった。
『何か、とんでもない事になったなぁ。』
『勝ったら試合は続く、負けたらデートと受験勉強。』
『良太・・・。』奈津子は俯きながら絞り出すような声で言う。
『梅野は筑紫学園のマネージャーだろ?だったら勝つ事を信じてろよ。』
『良太、いいのか?』
『飯島、お前はキャプテンだろ?この為に三年間サッカー続けたんだろ?』
『まぁ、そうだけどさ。』
『希ちゃんには悪いけど、五十嵐、明日は勝たせてもらうよ。』
『良太!俺も絶対負けたくないからな!さやかとのデートは延期だなぁ!』
『とにかくお互いベスト尽くそうぜ!』
『そうだな!じゃあ俺らも帰るよ。良太、飯島、面白い試合しような!
さやか、帰ろう。』
『うん、じゃあ、奈津子ちゃん、有紀ちゃん。またね。』
『さやかちゃん、バイバイ。』五十嵐達は店から出て行った。
『奈津子、希ちゃんって凄いね。』有紀は圧倒されてしまったようだ。
『うん、ちょっとびっくりしちゃった。』
『良太、飯島、絶対に負けられないからね。』有紀がはっぱをかける。
『もちろん!』
『良太。』
『何だよ?』
『本当にいいの?』
『お前、何言ってんだ?』
『だって勝ったらデート出来なくなるし。』
『あのなぁ、デートがしたくて負けるくらいなら試合なんて出ないよ。』
『でも、希ちゃんからデートしようって言われたんだよ。』
『希ちゃんだろうが、誰だろうが関係ない。三年間一緒にやってきた
仲間との試合なんだ。』
『うん…。』
『奈津子、心配しなくても大丈夫だよ。飯島も良太も全力で闘うよ。
そうだよね?』
『あぁ、さっきから言ってるだろ。勝つってね!なっ、飯島。』
『あぁ、勝つしかないだろ。』
『じゃあ、俺達もそろそろ帰ろうぜ。』
『そうだな。』僕等は明日の勝利を誓って、それぞれ家路に着いた。




