思いがけない言葉
『希ちゃん!』
『お久しぶり、良太君!』
『えっ、でも、何でここに居るの?』
『夏休みだもん、帰ってきたんだよ。』
『そっかぁ!今度はいつまでいるの?』
『まだわかんないけど、良太君のサッカーの試合は見れるかも?』
『試合は明日だよ。』
『じゃあ、6年ぶりに見に行こうかな?』
『うん、是非!』
舞台は整った。明日の試合に希ちゃんが来てくれる。
『じゃあ、着替えてくるよ。』飯島と僕は部室に走って行った。
『ねぇ、こんなにみんなが集まる機会なんてなかなか無いし、
帰りにファミレスでも行かない?有紀も希ちゃん時間大丈夫?』
奈津子が言う。
『全然OKよ!』
『うん、いいね!五十嵐君達もどう?』有紀も続く。
『試合前に対戦チームを誘ってもいいのか?』
『対戦チームだからこそ誘うんじゃない。
イーブンにしておかなきゃ!いいよね?さやかちゃん。』
『うん、だって今更、何でしょ?五十嵐君。』
『はいはい、了解しました。』
『じゃあ、決まりね!正門のとこで、二人を待っておこ!』
10分後、飯島と僕が正門に向かうと、みんなが待っていた。
『おっ~す!あれ、みんな待ってたの?』
『折角の機会だから、これからみんなでファミレスに行こうと思ってね!
飯島と良太も行くでしょ?』
『うん、いいけど。希ちゃん、いいの?』
『うん、全然いいよ!』
『じゃあ、ファミレスに行こうか。』
僕等は中学校から、少し離れた場所にあるファミレスに着いた。
店内は夏休みの夕方でお客でごった返していた。
『やっぱり多いなぁ!』
『7人も座れるかな?』
『あっちが空いているよ。』
僕らは奥のテーブルに向かった。
『とりあえず座れてよかったよ!』
『何を頼む?』
『取りあえず、何か飲もうか?』
『ドリンクバーを頼もうか?』
『そうだね~!』
『何か、これだけ集まるなんて不思議ね。』
『そうだね、しかも明日対戦する相手同士が一緒にファミレスにいるなんてね!』
『ほんとだよ、でも明日が楽しみだよ。』
『飯島と良太、二人との対決だしな。』
『俺達だけじゃないぞ、チーム対チームの対決だからな。』
『もちろん、ベストメンバーで臨むしな。』
『じゃあ、改めてキャプテン同士で握手しようぜ。』
飯島と五十嵐がみんなの前で握手をする。
『でも、飯島がキャプテンになるとは思いもしなかったなぁ!』
『五十嵐と初めて会ったのも、ファミレスだったしな。』
『そうなのか?』
『そうだよ、いじけてクリスマスイヴに一人ゲーセンに居る、
副キャプテンを探してな。』
『そうそう!大変だったんだから!』
『そんな事あったの?』
『うんうん!』
『もう、その事はいいじゃん!』
『あの時、俺とさやかが良太にゲーセンで会った後にファミレスで
昼ご飯食べてた時に、いきなり飯島が良太の事を知ってるのかってね!』
『そうなんだぁ!私もその場所に居る事出来たならなぁ~。』
『また違う展開だったかもね!』
『それは有り得るかも?』
『でもその面子が今、こうして揃っているなんて不思議!』
『うんうん!』
『そして明日には試合だもんね!』
『あぁ、そうだな。』
『でも、明日の試合が一番のヤマだな。』
『頂上決戦って奴か?』
『まぁね!俺らにとってはだけどね。』
『へぇ~、そうなんだ!今までの対戦成績は?』
『一勝一敗の五分だよ。』
『ほんと、いよいよだね!』
『うん!』
『じゃあ、五十嵐君、筑紫学園中に勝てる自信は?』
希ちゃんが五十嵐に声をかける。
『絶対に勝つ!そうだよな、マネージャー!』
『うん、お互いベストを尽くしてね!』
『じゃあ、飯島君と良太君、筑涼中に勝てる自信は?』
『勝つ為に練習してきたからね。なっ、良太。』
『もちろん!厳しい戦いになるとは思うけどね。最後には勝つ。』
『じゃ、奈津子ちゃんに有紀ちゃんは?』
『もちろん勝つ為にやってきたからね。』
『私、試合が益々楽しみになってきたよ。』
『うん、楽しみにしててね!』
『うん!それと、もし良太君達が負けたら。』
『負けたら?』
『負けたら、もう夏休みになるんだよね?』
『うん、引退試合だからね。負けたら次は受験勉強だよ。』
『そうだねぇ~!』
みんなの顔が一瞬暗くなった気がした。
『負けたら。』
『負けたら、私と試合の次の日デートして欲しい。』
『えっ!』
希ちゃんの顔をみんなが見つめる。
『えっ、希ちゃん、どういう事?』
『一日だけでいいから一緒に居たいの。』
僕は梅野の顔を横目で見た。
梅野も困惑している様子だった。
誰もが希ちゃんの言葉に動揺を隠せなかった。




