春雷
メニューを選び、少し落ち着いた時に母親が僕に話しかけてきた。
『良太、良太の心臓の話なんだけど。』
『うん、なに?』
『心臓弁膜症って病気は知らないでしょ?』
『うん、今日初めて聞いた。詳しくはわかんなかったけどね。』
『私も今日初めて聞いたから詳しくは解らないんだけど、
今は多分自覚症状なんてわからないし、もし本当に心臓弁膜症なら、
自然に治る事はないの。』
『そうなんだ。でも心臓弁膜症の可能性があるってだけで、
そうとは限らないんでしょ?』
『そうなんだけどね。』
そんな話をしている時にテーブルに注文したカルボナーラが出て来た。
重い空気に包まれたまま、僕はカルボナーラを頬張る。
母親も黙ってチキンドリアを食べている。
家に着くまで、終始こんな感じだった。
遠くで雷が鳴っている音が僕の心まで響いていた。
不安を掻き消すかのように。
翌日、学校でいつものように授業を受け、
いつものように部活動の為に、サッカー部の部室に向かう。
部室に入ると、既に飯島がジャージに着替え終わっていた。
『よぉ、体調はもういいのか?』
『おいおい、昨日一日休んだだけで心配してくれるのか?』
『まぁな、一応キャプテンだからな。』
『体調は問題なしだ、ガンガンやれるぜ。』
『わかった、でも無理すんなよ。』
そう言うと飯島は部室から出て行った。
僕もジャージに着替え、グラウンドに向かった。
グラウンドに向かうと、既に部員はストレッチをして
身体をアップさせている。
僕もその輪に入り、いつものようにウォーミングアップをする。
ウォーミングアップ段階で梅野が来ていない事に気がついた。
『飯島、マネージャーは?』
『今日は休むらしいぜ。』
『そっか、風邪でもひいたのかな?』
『さぁな。じゃあ、早速練習始めるぞ。
良太、お前は後輩の練習を指導してくれないか?』
『はぁ?俺が?』
『そうだよ、後輩にも教えられないのか?』
『教える事は出来るけど、トップ組での練習はどうする?』
『当分いいや、病み上がりだしな。』
『だから体調は問題ないって言ってるだろ!』
『とにかく後輩を指導してくれ、頼む。』
『なんか身体鈍るなぁ。まぁ、いいや。』
僕は後輩とランニングしたり短い距離でのパス回しをした。
練習は実戦とはほど遠く基礎中の基礎を初心者と
一緒にやっているような感じだった。




