本音と建前
バレンタイン当日。
この日が来るのが本当に嫌だった。
普通を装っていても、僕もそわそわしている一員に
見られている感じがする。
その上、あの日以来何故か普通に話せた、
梅野や有紀、飯島ともよそよそしく感じる。
大人がよく言う、『建前と本音』
これがまさに建前の世界。息苦しさすら感じる。
でも一応、下駄箱の中を覗いてみる。
今どき下駄箱にチョコを入れる女子なんていないと思いつつも・・・。
『アハハ、やっぱりないや。』
教室に向かうまで、何度もコソッと好きな男子に、
チョコを渡す女子の姿を目にした。
確か校則で授業に必要ない余計な物を持ってくると
没収と書いてあったけどこの日くらいは大目に見てよ、先生。
教室に入ると、普段と変わらない一日が始まった。
窓際の僕の席はまだ外の寒さが伝わる。
何も変わらない一日、チョコを貰えれば、
この寒空の景色も少しは温かく見えるのかな?
でも貰わなくても、僕の身体が温かくなってるのを感じる。
『やばっ、もしかして熱があるかも?』
僕の身体は二限目が終わる頃には、本格的に
身体に熱を帯びているのが自分でもよくわかった。
担任の柴崎に体調不良を訴え、保健室に向かった。
『あら、宮内君どうしたの?』
白衣の太田先生は、いつもの口調で話しかける。
『ちょっと、熱があるみたいなんですよ。』
『じゃあ、ちょっと熱を測ってみて。』
太田先生はそう言うと、電子体温計を僕に手渡す。
ピピッ、ピピッと体温計が鳴り、僕は体温計を出し体温を見る。
『マジかよ、39度あるじゃん。』
『はい、ちょっと貸してね。』
太田先生は僕から体温計を取り上げる。
『39度もあるじゃない!今日はもう帰りなさい。
担任の柴崎先生には伝えておくから。』
『はい、わかりました。』
『折角のバレンタインに熱出すなんて!』
『でも学校の校則には授業に必要ない物を持ってくると没収ですよ。』
『バレンタインの日くらいは先生達も大目に見るわよ。』
『本当ですか?』
『そうよ、多分ね。』
やはりここでも『本音と建前』
僕は保健室を出て、 教室に戻り、鞄を取るとそのまま家に帰った。




