自分達へのご褒美
チョコレートの見せ合いも終わり、一息ついたところで
有紀が話を切り出す。
『ところで奈津子・・・』
『うん、何?』
『良太と飯島の事、どうするの?』
『うん・・・。』
それから奈津子は言葉が続かない。
『ねぇ、奈津子。あの後なんだけどね。』
『うん・・・。』
『良太は一人で帰ったんだよ。飯島にも私にも、じゃあなの一言だけで。』
『うん・・・。』
『あの後、飯島と二人で話したんだ。飯島は奈津子の事、諦めるって。』
奈津子は黙ってオレンジジュースを飲んでいる。
『敵わないって。良太にね。』
『敵わない?』
『うん、良太は気になる人いるんでしょ?神戸に住んでて、
その子は奈津子の友達なんでしょ?』
『希ちゃんの事、聞いたの?良太に?』
『良太が言ったよ。名前までは言わなかったけどね。』
『飯島は良太が気になるって思ってる女の子が奈津子は知ってて、
それでも良太の事を思うなら、敵わないって。』
『そっか・・・。』
『良太も何も言えないのは、そのせいだったのかなってね。』
『そう・・・。』
『奈津子はそれでも良太を待つの?』
『わからない。』
『わからないって?』
『どうすればいいかわからないの。良太の事も飯島の事。』
『良太の事、好きなんでしょ?』
『うん。ずっと前から。』
『えっ、ずっと前って?』
『小学三年生の頃から。』
『そんな前から?』
『うん。』
『なんで良太に気持ち伝えないの?』
『だって・・・。』
『希ちゃんっていう友達の存在?』
『うん。』
もう奈津子は今にも泣き出しそうな顔をしている。
『私も良太に気持ち伝えたかったよ。でもいつも3人だった。
私と良太と希ちゃん。最初はみんな気持ちは同じ距離だったんだけど、
いつの間にか良太と希ちゃんの距離は縮まっていたの。』
『それって、両思いって事?』
『そう。そうだと思う。』
もう奈津子は泣いている。
『でも、その希ちゃんって子は引越して遠くに行ったんでしょ?
奈津子は良太の近くにいるんだよ。いくらでもチャンスあったん
じゃない?』
『実際に離れた場所にいても、気持ちの距離は変わってなかったから。』
『どういう事?』
『私もそうだけど、良太にも手紙が届いてるの。今でもずっと。』
『希ちゃんから?』
『うん。希ちゃんが引越した時、私も良太も引っ越すなんて
聞いてなかったの。離れるのが淋しいからだって。
引越した時、私も淋しかったけど、良太はもっと淋しがってたよ。
でも・・・。』
『でも…、なに?』
『でも、引越した後に、希ちゃんから私と良太にそれぞれ手紙が届いたの。
私は良太が落ち込んでたから何度か私が励ましてたんだけど、
希ちゃんの一通の手紙で良太は元気になれたの。』
有紀ももう泣いている。
『その時、私も希ちゃんには敵わないなって思ったから。』
『奈津子。』
有紀も声にならない。
『中学生に早くなりたかった。卒業して中学生になれたら
変わると思ってた。でも私の良太に対する気持ちは変わらなかった。』
『やっぱり敵わないなぁ。』
『えっ?』
『奈津子、本当に良太が好きなんだね。そして奈津子も良太も馬鹿だね。』
『えっ、どういう事?』
『二人共、同じ方向は向いていると思うよ。なのにね。
もうこの話はおしまい。』
『うん。』
『チョコレート一緒に食べない?』
『有紀のチョコ?』
『そう、自分達へのご褒美に。』




