失恋記念日
飯島と有紀は公園のベンチに座っている。
『飯島、あんた、どうするのよ?』
飯島は力の無い顔で黙っている。
『奈津子の事、諦めるの?』
『あれじゃ、どうしようもないだろ?』
『そうだねぇ、それに五角関係だからねぇ・・・。』
有紀も力の無い表情のまま、ふぅ~っと溜息をつく。
『五角関係?どういう事だ?』飯島は有紀を見て言う。
『私も知らなかったんだけど、良太は気になる人がいるんだって。』
『えっ、嘘?誰だよ。』
『私が知らない人、神戸にいる女の子だって。』
『マジかよ!梅野はその事知ってるのか?』
『奈津子も知ってるみたいよ。奈津子の友達なんだって。』
『そっかぁ・・・えっ、もしかして・・・』
飯島はガックリと肩を落とす。
『飯島、良太の気になる人知っているの?』
『うん、もしかしてだけど・・・。』
『良太も奈津子の気持ちは少しはわかっているみたいなんだけど、
その子の事が気になるから、奈津子の気持ちに応えられないかもね。
そして私の気持ちもね。』
『そっかぁ・・・。』
『普通なら飯島に怒っていたかも知れないのに、
良太は何もしなかったし・・・。』
飯島は急に笑顔で有紀を見る。
『どうしたの?』
『これで完全に梅野の事、諦めついたよ。』
『えっ、何で?』
『だって、そうだろ?良太の気になる人は梅野の友達だろ?
梅野はそんな良太の事を知ってて、気持ちは良太に向いているんだぜ。
敵わないよ。』
有紀は黙って、飯島の言う事を聞いている。
『坂井、ちょっと待ってろ。』
そう言うと、飯島は公園のすぐ横にある自動販売機で缶コーヒーを
2本買ってくると、1本を有紀に渡す。
『じゃあ、乾杯しようぜ。』
『乾杯?』
『そうそう、失恋記念に。』
『失恋記念にね!それって私も?』
『坂井は諦めないのかよ。』
『私は、私は諦めないよ。万が一って事もあるでしょ?
でも今は奈津子と良太の事、見守りたいな。』
『そうだな。こんな時、大人だったら、やけ酒だろうけどな。』
飯島は有紀を見て、笑って言う。
『とりあえず今は、私達の失恋記念に乾杯!』
飯島と有紀は缶コーヒーをカツンと合わせる。




