鉢合わせ
『あれっ?おかしいな。ここに居ると思ったんだけどなぁ。』
『あの二人いないね。』
『もしかして、参道の入口に戻っているかも知れないし。』
『いいよ、それよりタコ焼き冷えちゃうよ。ここで食べよう。』
『うん、そうだな。』
飯島と奈津子は公園のベンチに二人並んで座る。
『もう少し冷たくなってるよね。』
『かなり寒くなってきたからなぁ、梅野は寒くないか?』
『うん、大丈夫。寒くないよ。』
飯島と奈津子は会話も少なくただ黙ってタコ焼きを食べている。
『なぁ、梅野。』
飯島は沈黙を破るように話し出した。
『何?どうしたの?』
『俺さ、やっぱり梅野の事が好きだよ。』
『えっ、飯島、突然どうしたの?』
『出来れば、このまま二人で何処に行きたいよ。』
『そんなの出来ないよ。参道で二人が待ってるんだから。』
飯島は奈津子の両肩を掴む。
奈津子は思わず持っていたタコ焼きを落としてしまった。
『梅野、俺と付き合ってくれ。』
『えっ、気持ちは嬉しいけど・・・』
『良太が好きなのか?』奈津子は俯いている。
『梅野、俺の眼を見ろよ。』
奈津子が俯いていた顔をあげると同時に、
飯島は奈津子を抱きしめた。
『あっ、飯島、奈津子・・・。』
土管から飛び出した僕に抱き着くようにくっついている
有紀が思わず言った。
僕は後ろを振り返る。
そこには飯島に抱きしめられた、梅野の姿があった。
有紀の声に気付いた梅野と僕の視線が交差する。
『梅野・・・、飯島。』
無意識のうちに二人の名前を声に出した。
『良太。有紀・・・。』
梅野も僕と有紀の名前を言う。
そして梅野は抱きしめられた飯島の腕をほどき、
公園の外に走って出ていった。
『良太、坂井、そこにいたのかよ。』
僕は飯島の言葉に返事が出来なかった。
『追わなくていいの?』有紀が僕の顔を見て言う。
その有紀の眼には何とも言えない気持ちがこもっていた。
俺は梅野を追っていいのか?
希ちゃんに未練たっぷりの煮え切れない、
どっちつかずの男だぞ。
僕は土管から出ると飯島を見つめている。
飯島は僕と目線を合わせず左下を見ているだけ。
僕は有紀に軽く手を挙げ、そして飯島の肩を軽く叩き公園から出ると、
梅野とは反対の方向へ歩いていった。




