すれ違う男と女
『良太、それにしてもやっぱり初詣客は多いよね?』
『年に一度だからなぁ。』
『しかも、露店も沢山出てるしね。』
『参道の両方からいい香り漂ってくるしなぁ!』
『良太、何か食べない?』
『イカ焼きでも食べようかな?』
『私はタコ焼きかな?』
有紀と僕はそれぞれイカ焼きとタコ焼きを買うと、
人気の少ない場所を探した。
これだけの人込みの中で露店で買ったものを食べるのは
迷惑がかかりそうだし、落ち着いて食べれない。
僕らは参道入口に向かって人波をすり抜けていく。
人込みは減るどころか、どんどん増えている感じがした。
『もう有紀達、入口で待っているかな?』
『う~ん、もしかしたらいるかもね。』
『なぁ、梅野。せっかくだし、何か露店で買わない?』
『お腹減ったしね!』
『じゃあ、俺はタコ焼きだな。』
『私もそうしよう。』
飯島と奈津子はタコ焼き屋の前で立ち止まる。
『おじさん、タコ焼き2パック頂戴。』
『はい、タコ焼き2パックね、1000円だよ、マヨネーズつけるかい?』
『うん、お願い。』
飯島は二人分のタコ焼きを買って奈津子の所へ戻る。
『はい、おまたせ。』
『かなり時間かかったね。』
『多かったからね。』
『どこで食べる?』
『そうだなぁ?一度参道の入口に行った後に、
良太達がいなかったら、近くの公園でも探して食べようか?』
『そうだね、そうしよう。』
飯島と奈津子は参道入口に向かった。
人気の少ない場所を探したけれど、結局見つからず
僕と有紀は参道入口の待ち合わせ場所まで戻ってきた。
『まだ、飯島達は来ていないみたいだな。』
『そうだね、あっちの方が混雑しているかも?』
『ちょっと待ってみる?』
『でも、イカ焼きとタコ焼き冷えちゃうよ。』
『それもそうだなぁ。じゃあ、ここに来る時に公園があったから、
そこで食べた後、またここに来よう。』
『うん!』
有紀はそう言うと今度は腕を組んできた。
『おい、何するんだよ。』
『いいじゃん、だって寒いんだもん。』
僕達は参道入口から少し右に入った所にある公園に向かって歩いていく。
『もうすぐ入口だよ。』
『うん。でもやっぱり人が多いね。』
『本当だよ、前に進むにも進みにくいし。』
多くの家族連れや恋人達、友達数人で来ているグループが
参道に並んで営んでいる店の前で立ち止まっては
店頭にある商品を手に取ったり、買ったりしている。
幼稚園くらいの子供達にはデパートのおもちゃ売場が
沢山並んでいるのと同じ状況だろう。
駄々をこねて、泣いている子供、大きな綿菓子を手に持ち
更におもちゃまで欲しがってジッと立ち止まり、その子の
母親と思える女性が、強引にその場から離そうとして苦労している
光景を参道入口に向かうまでに何度も見てきた。
『子供達にとっては天国だね。』
奈津子は店頭でおもちゃを見ている子供達を見て言った。
『梅野の子供の時もそうだった?』
『私は違うよ~、ちゃんとその時からわきまえていたからね。』
『へぇ~、子供の時からしっかりしていたんだ。』
『そうだよ!良太は駄々っ子だったけどね。』
『良太が?』
『うん、あそこにいる子供みたいにね。』
そう言うと奈津子は駄々をこねて、母親に怒られている子供の方を見た。
『良太の事、子供の時からよく知ってるんだね。』
『小学生1年の頃に同じクラスだったからね。』
『へぇ~。そうなんだ。あっ、そろそろ入口だよ。』
『うん、あれ有紀と良太じゃない?』
『どこ?』
『あそこだよ。』
奈津子が指差した方を飯島は見る。
『いたいた、あいつらの方が早く入口に着いてたんだ。』
『そうだね、でも有紀達どこかに行ってるみたい。』
『ほんとだ。急ごう。』
そう言葉に出したものの人込みの多さで中々前に進めない。
『あっ・・・。』
『どうしたの?』
奈津子は二人を見る。
人込みの隙間から二人が腕を組んで歩いている姿を見てしまった。
奈津子は一瞬言葉を失って立ち止まる。
『おい、梅野!』
『あっ、う、うん。』
『またはぐれるぞ。』
『う、うん。』
飯島と奈津子は二人を追った。




