いつもの場所で
商店街は年末の慌ただしさに包まれていた。
いつもなら通り過ぎる店もこの時期になると足を止めるお客さんが多い。
僕もその一人になっていた。
クリスマスから年末へ、みんなの変わり身の早さは冷静に考えると凄い。
僕はメモを見ながら買物を済ませると、人波に逆らうように家路に着く。
家に着くと掃除は半分程終わっていた。
『あら、早かったわね。』
『まぁね、嫌な事は早めに終わらせておきたいからね。』
『あぁ、そう。』
そう言うと母親は僕が買ってきたものを冷蔵庫や戸棚に入れていた。
『そういえば、良太に手紙届いてたわよ。』
『手紙?誰から?』
『わかんないわよ、良太の名前しか書かれていなかったわよ。』
『あぁ、そう。』
『机の上に置いてるから。ラブレターかもよ。』
僕はラブレターという言葉に少し嬉しく感じた。
でもその嬉しい気持ちが悟られないように急ぐ足を意識して遅らせた。
自分の部屋に入るまでは落ち着いている感じでいたが、
部屋のドアを閉めると、手紙の置いてある机に一目散に向かった。
机の上には薄いブルーの封筒が置いてあり、
確かに僕の名前は書いてあるけど差出人は書かれていない。
『もしかしたら、イタズラ?』僕はそう感じた。
まず差出人が書いていない事、そして切手が貼ってないから
郵便での配達でない事。
この2つからそう感じた。僕はゆっくりと封を開ける。
『久しぶり、良太君。いつもの場所で待ってます。谷本希。』
手紙を見た瞬間、僕の鼓動が早くなっているのを感じた。
『まさか希ちゃんが帰ってきてる?』
どんどん鼓動が早くなる。イタズラには感じない。
希ちゃんの事を確実に覚えているのは、余りいないはず。
『僕と梅野だけだ。』
僕は手紙を握りしめて部屋から出る。
『あら、また出掛けるの?』
母親の声を僕は無視して飛び出した。
家から飛び出したものの色んな思いが複雑に交差し
僕を混乱させようとする。
『いつもの場所。』そこがどこなのか、僕には確信があった。
『きっとあそこに違いない。思い出が詰まった場所』
そして僕は希ちゃんが手紙に書いてある、
『いつもの場所。』と思われる場所に向かった。




