真冬のグラウンド
僕はゲームセンターに行った後、街の賑やかさに耐えられなくなり、
すぐに自宅に戻った。
戻る途中、何で街に出たのかなって思ってしまった。
『あら、もう帰ってきたの?』母親からの最初の一言だった。
『街に行っても、イマイチねぇ~!サッカーの練習に行くよ。』
僕は自分の部屋に戻り、サッカー部のジャージに着替え一階に降りた。
『じゃあ、行ってくるよ。』
『気をつけていってらっしゃい。
あっ、そうそう奈津子ちゃんが来たわよ。』
『えっ、いつ?』
『良ちゃんが出掛けた後、すぐにね。会わなかった?』
僕は折角の最後のチャンスを逃してしまった。
もし家に居たならば・・・
『よぉ、梅野か?どうした?』
『クリスマスでしょ?みんな待ってるし、行こうよ。』
『しょうがないなぁ、やっぱり俺も行かなきゃダメなのか?
梅野が迎えに来るぐらいだから行くか!』
『うん、よかった!』
こうなっていたかも知れない。
でも、もうその可能性すらない。
過ぎた時間は決して戻る事はないのだ。
『じゃあ、行ってくるよ。』
『あまり遅くならないようにね。』
僕は玄関のドアを閉め、中学校のグラウンドに向かった。
グラウンドには人影はなく、まさに自分専用となっている。
僕は簡単なストレッチをし、グラウンドを数周走った。
いきなりボールを蹴る事はこの寒さでは怪我の原因にも成り兼ねない。
今日という日は特別な日ではなく、単なる24日と考えようと思った。
12月24日と思えばクリスマスイヴと感じるけれど、
12月以外の24日ならば普通の日だ。
僕はそう自分に言い聞かせる事でクリスマスイヴという日を
忘れようとしていた。
でも、そう思えば思うほど空しく感じる。
僕は身体があったまったと感じるとそれからは、
ただひたすらにフリーキックの練習をした。
練習をすればするほど、ボールはゴールの枠を逸れていった。
集中力が散漫になっているからだろう。
僕は大きく深呼吸をし、ゴールの右上隅に一点集中し右足で振り抜いた。
ボールは弧を描き、ゴールに突き刺さる。
『ナイスシュート!』僕の後ろから声がした。
振り返るとそこには、意外な人物が立っていた。




